■ 柘 榴 の 間 ■
 
 
 
   

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†未知の誘惑†
オルゴオルの回廊を歩く
手を伸ばせば触れそうな
金色の牙がガラスを噛んでいる
薔薇の蕾がついたのも知らない
12月30日

†解放された生命†
緑の柘榴の内側の生命
透明な果実の連鎖
水の中に群れ咲く精髄
放たれてゆくものたち
12月30日

†狩人の追跡†
雪原の足跡を読み間違える
動物の名は分からない
あなたに捧げる物語りはまだ
実をつけることもできない枝の上
12月29日

†伝染†
嘲笑に満ちて帆を膨らませ
泡立てて、塗れ
旗を振り立てて叫んでみる
他者の病はすぐに移る
12月28日

†偽装†
交換に差し出された
古ぼけた衣類を
躊躇うことなく身につけ
幾枚目の舌が踊り始めるのか
12月26日

†甘味†
甘いものなら幾らでも
その指から滴っているのを
目は餓えている
膝は引き返す
12月25日

†林檎の夢†
林檎の夢が訪れて
駅の雑踏は燃えるようだ
このまま雪を踏み分けて
お出でと鳥が呼んでいる
12月25日

†摘果†
今日もコーヒーを摘む
指は離れられないと言う
道端の石の数々
拾い集めて日々を過ごす
12月25日

†波間の記憶†
祭壇には魚を捧げよう
光る目玉を食そう
波の合間には十字架がたった
見よ、と叫ぶものあり
12月21日

†恋文†
貴方は恋文を送ったと言う
その曲線は有意味の曲線なのか
その点は無意味の点を投げたのか
私はついぞ貴方の言葉を習わない
12月21日

†氷の花†
ベテルギウスとリゲルが
降り注いでくる
氷の花の味わい
息に潜むは炎のきらめき
12月19日

†口喧しい魚†
見境のない魚が
澱んだ水の中から唱える
口やかましい狂句
水鉄砲が吹きあがる
12月19日

†水汲み女の歌†
水を、盗んでおいで
あの泉から湧き出しているのを
水瓶は欲望する
腹のうちには光が浮かぶ
12月16日

†雲の宮殿†
縞模様の夕暮れの彼方
霞んだ翳が楼閣を築く
落ちる、一滴の上には
膨らんだ円塔が燃え立つ
12月16日

†不可解な問い†
真昼間を問う
この形態、この重量、この
生地の目の粗い
空の格子から降り注ぐ音の行方を
12月12日

†花路†
デンファレが開いて
落ちている
敷き詰められた紫
耳を塞いで逃げ出さなければ
12月9日

†樹香†
空に何が飛び立っていったのか
鳥の形をした煙が
松の樹液に清められた星が
呼び声を上げて
12月8日

†水の国†
途切れた線と炎
蝋燭の足跡を辿り
答えのない送信
雨が降る音が止むことはない
12月8日

†待ち人†
唇に水が触れている
欠けてゆく月を見上げ
奪われたものの名を書く
水のさなかに
12月6日

†薔薇を†
薔薇を買いに走り出した
冬がてぐすね引いて待ち構えている
閉じかけた夜を越えて
穏やかな灰の目を探す
12月6日

†夢の澱†
泥が血管で眠っている
自生する凌霄花が
四肢に絡みついている
奇妙な愛撫を繰り返す
12月4日

†闇雲な発熱†
夜が濁っていたので
朝は渦を巻いて泡をとどめていた
醗酵する誰かの不意のくちづけ
水晶体が熱を帯びている
12月4日

†星を読む†
星が降ってきているので
青い靴で遠出をする
ガラスの円盤を一廻り
星図を読みながら辿り着く
12月2日

†呵責†
数えることができない
1と2と3は違うもの
脊髄に突き刺さった針が
苛んでいる 止むことなく
12月1日

 
 

 
 
 
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