■ 柘 榴 の 間 ■
 
 
 
   

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†放浪者†
呼び声が聞こえているのに
心臓が破れて血が滴っている
今が乗る時だと呼んでいるのに
息が止まってしまうだろう
5月31日

†回転†
ダンスでも踊れと言うのか、その手
パ・ド・ドゥ、くるりと回って
目隠しをしていた
ここは。どこにたどり着いてしまったのか
5月29日

†ふりかえる†
背中の痛みがつきぬけて
ひらかれた手紙から落ちた
金いろの栞
宛先不明でもどってきたの
5月29日

†方形の呪文†
意識不明の森で躓く
小石にくじいたくるぶしを抱えて
魔方陣を描く
取り残されていてもかまわない
5月24日

†螺子をとめる†
エッセンスの匂いの甘く残る夜
絡みついた星が爪に残るままで
もう一度思い出そうとしている
どこに螺子は留められたのかと
5月23日

†天空の窓†
太陽へ突き刺さる螺旋の塔
何度たゆたっても戻される海
沈みゆけば沈みゆくほど
解き放たれたものは一人上昇
5月23日

†発掘現場†
水玉を引っかいて剥がし
水銀を被って清浄
鈍痛が現れるのが目印
地層に見出される苦痛の根
5月22日

†酒甕†
時計のない森への道行き
黄昏からの呼びかけ
身に沁みる時刻の香気を吸い込み
上空から身を投げる
5月20日

†狭間†
隙間に落ち込んだままで
鍵穴を手探りで求め
触れるものなら一つ残らず
所有するつもりになった
5月12日

†矢印†
夕暮れを突き刺す一条
指し示された神意の行方
還流が呼んでいる
夏の夜へと呼んでいる
5月11日

†類い稀なる空に†
この清らかな泉の水に手を浸して
耳は渇いて待ち侘びている
流星の通過
夜空の内に沸き出でる光
5月11日

†靴†
首を吊っていた記憶
忘れようとはしない罠をしかけて
ついには扉を閉じきってしまおうとする
歩くたびに痛むからと言って
5月10日

†茫漠†
犬の長い嘆きの声を聞く憂鬱
夜の物売りの通りを行く時
切断されたことを知りながら
味わいのない肉片を転がしている無明
5月9日

†すいかずらの夜†
忍び寄るすいかずらの匂いは夜のもの
さまよいながら呟いているものは
耳を傾けた時に消える
夕暮れから夜半の危うさに気をつけて
5月8日

†強制者†
目覚めは叫びに似ている
割れた爪の先に繊維が絡みつく
引き剥がすことのできない呪法
ナイフでこじ開けられる浅蜊
5月4日

†菓子箱†
あまりに甘い蜜の味を盗む
夜に紛れて燃えている躑躅の
一瞬だけ閉ざされている扉
通りすがりにだけ知る香り
5月1日

†血を洗い清めて†
汚れた河が身を浸すには丁度良い
祈りの声はまだ訪れない
刻み目をつけた木片が尊いのか
割れた陶器はもう何の意味も持たないのか
5月1日

 
 

 
 
 
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