■ 柘 榴 の 間 ■
 
 
 
   

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†空の幾何学者†
空の中の直線には
迷いはない
最短距離を知るもの
窺い知れぬ幾何学の妙
10月30日

†否定形†
通りで私の名を呼んでいるが
それが名前であると知るまでは
集合名詞を否定せよ
適確な呪いは標的を求めている
10月29日

†無音†
真昼の中に漂う退廃
静寂は秘されたものを覆う
白昼夢に支配された爪先
耳が程よく聞こえない
10月26日

†夕べを降る†
夜の街路に灯る
根源を燃やしている
道標に導かれる
呼び声に誘われる
10月25日

†蜘蛛の糸†
天空に光る明かりが呼び寄せるのだ
名も知らないものが群がっている
盲目な野心が貫かれてぶら下がる
燃え尽きて散らばる灰の名残
10月24日

†歓びの家†
閉ざされた空間で歓喜を貪る
豊饒の食物
踊り狂っている蝿は
過ぎ去った終末に気づかない
10月21日

†月の名†
暦の名前を聞かれて答える
知らぬ筈もない
三度巡り来るものを
そして辿りつけないものを
10月21日

†回想の船†
ゴブラン織はすりきれていた
甘い紅の生地の輝き
憂鬱をくるんでいた夜の帳
ほつれた金糸が空中に漂っている
10月20日

†耳鳴り†
何故呼ぶ声がしているのに
それは空耳の徴だった
ノイズの最中に見出した声と
虫の羽音に知るアルファベット
10月20日

†小鬼の踊り†
午後になると近寄ってくるもの
手探りですり寄ってくるもの
それは鏡の裏から覗いていた
それは意味など与えることもできなかった
10月16日

†薔薇の枝†
バラの棘を折ることも出来ないのだ
巻きついた長い茎は強ばる
雨のない空気に赤らんでいる
無数の繊毛が突き刺すもの
10月14日

†浸水した意識†
眠りに浸された指は
一つの下降点を目指し
衝撃が時を止めるまで
探索を止めないだろう
10月13日

†波の誘惑†
カップに満たして欲しい
乾いた唇は熱に浮かされて
引いては寄せる海藻の絡んだ言葉
砂浜に埋められた杯を洗う
10月13日

†夜の海†
私は夜の海を泳いだ
そうして掴んでいた
波の角を
崩れ去る吐息を
10月13日

†夜行く光†
あまりに巨大過ぎて気づかない
それが飛行機の影であったことに
何者かが近づいている轟音
避けられない航路の真下
10月12日

†再現†
そうだ、デジャヴュ
これは記憶に残されていたシナリオ
これは同じ手順の実験
理論通りの寸劇の配役
10月8日

†糸†
ある日、雲の隙間より差す光に
信ずべきものが露わになる
これはただ一筋の道である
誤りはないのだったと
10月7日

†夜の海†
海の音を聞きに行こうと思い立つ
けれどそれはいつも夜のことだから
代わりに箱を開いて音楽を取り出す
波は記憶に残る筆跡
10月7日

†摘果†
路上にある怒りの果実を摘みながら
投げ捨ててゆく
潰れた果実がふいに
微笑に遮られるまで
10月6日

†モザイク†
千切り捨てた糸を拾い集めた
色彩を混ぜて紡ぐ
失われたものを忘れよ
見よ、あの大伽藍のモザイク
10月4日

†漁†
数えるだけではない
何の証しを求めているのか
広げられた網にはねる鱗
空気に溶ける魚が何になるのか
10月3日

†予告編†
待ち望みすぎたので
既に色褪せている
上映される前の予告は
歓びよりも恐怖が
10月3日

†愚者のカード†
絵画の廻廊を巡回し
停滞した扉の前を過ぎり
さし込めば開く呪文を待つ
希望の名の印刷された手札
10月3日

 
 

 
 
 
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