■ 柘 榴 の 間 ■
 
 
 
   

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†明鏡止水†
最後の言葉も遠くからだった
波紋だけが残る湖だった
手にしたものを全て投げて
かき乱そうか 砕いてやろうか
6月30日

†両極性波紋†
二つの時刻を同時に生きるもの
誰かの呼び声は過去へ落ちた
落ちた呼び声が未来から甦り
目を覚まさせる 今すぐにと
6月30日

†理†
女が新聞を読み上げている
声高に読み聞かせながら
窓をがたりと大きく開け放つ
世界の有様を説き聞かせている
6月29日

†水中の籠†
眠りの前の15秒は繁茂する時刻だ
細い緑の繊維に覆われた思考が
気泡を吹き上げている
水中に耽溺する一瞬の記録
6月29日

†実りの時†
裏切られた戯言
待ち侘びるまでもない
予言は満たされる
仙人掌果が実るように
6月28日

†髑髏†
耳の中から殺ぎ落とさねばならぬ
溶かした黄金を詰め込まれて
脳は燃え上がった
朽ちた宝飾は棄てねばならぬ
6月28日

†明日の報せ†
壊されたものの名前を知っているのか
失われたものを思い出すことはない
長い間待っていたものが朽ちていたのを
明日聞くことになるだろう
6月26日

†破砕†
今、閉じ込められた叫びを
叩き砕いている堀りだしている
埋められた死んだ欲望
粉砕された記憶の中に混じる
6月25日

†貝の抵抗†
閉ざされて
藻を咥えこんだムール貝のように
幾多の泥に絡みつかれて
固く握り締めた指
6月23日

†鏡幻想†
鏡に写った女たちを眺める
呼ぶものと呼ばれるものの
混じり合一するまで
鏡に当たった言葉が跳ねている
6月22日

†騒音†
如何な白昼でも蝿は纏いつく
日差しに清められた空気よりも
気温は甦りの秘術
絶えることない淀みから
6月22日

†平穏の形†
真青な昼間のただ中に
叫び声の通る一瞬の裂け目
砕ける時刻
繋ぎ合わせた平穏
6月20日

†無関心な飛行†
大空のただ中に放り出され
そのまま飛行と落下を繰り返す
東の雲は懐かしむもの
南の鳥は我知らぬもの
6月20日

†預言†
問いかけはいつも遅すぎる
悪夢こそ循環の目印
目覚めるものは夢魔を呼び
沈殿する澱を眠る
6月19日

†星語り†
それは彼方の眼差しだった
閉ざされた部屋の暗がりの星
横たわった流星は瞬きもせず
永劫につける名を探る
6月18日

†沈んだ舟†
真理の階調を辿る
眩暈して横たわり
花香に埋もれるまま
川を流される夢想
6月16日

†探査機†
直ぐ側で聞こえる声が突き刺す
硝子の鼓膜は鋭敏な羅針
泥濘を探査するものは遂には
息を止められ打ち砕かれるのに
6月15日

†待ちぼうけ†
待ちぼうけくらって門の前で
ただ待ってただ座って
魚を釣るのは止したが良い
糸が切れた言葉は沈む
6月14日

†棘の実る木†
愉快に拒絶されながら
切り捨てながらうそぶいて
スカートの解れた裾
くるくると回るプリーツ
6月12日

†白花落花†
蝿も私も香りに惹かれて
小花に群がり襲いかかる
蜜を求めるまま
風に落ちた花弁は白く
6月11日

†街角の馬†
優しい顔した馬が
街角でうなだれて
車の音は流れ
荷を下すのを待っている
6月11日

†見送る†
破れてしまったデッキチェア
枯れてしまったサボテン
思い出を鉢植えにしても
咲く花はもうない
6月11日

†路傍†
入り混じる音に耳を傾ける
空にだけ開いた扉から
神の名を詠んで過ぎ去る葬列
垂直移動する気体を魂と呼ぶ
6月11日

†音楽の入れ物†
空中から降り注ぐ音は
真昼の鳥の絶え間ない囀りと
夜の婚礼の果てしない踊り
貫いていく梢の先端
6月10日

†鞭打たれた幸福†
孤独を恐れるものは
御者を憎み嘲る
驢馬たち
道路を下って行く荷車
6月9日

†優しい返事†
笑い声で慰めようとする
作り物のネックレスを
引き千切って硝子の珠
もう拾うことなどないよ
6月9日

†天啓†
道路に出ると鳥の死骸が
あなたを名指しで呼んでいる
これが天啓ならば
あの時刻表は何だろう
6月9日

†夜明けの果実†
夜明け前に味わうものは
みづみづしい果実
祈りを呼ぶ天空の声
秘めやかな甘い孤独
6月4日

†夜の地図†
夜の庭に水のしみいる音
潅木が喉を鳴らす
虫たちは無言で這う
剥がれた漆喰の上の迷宮
6月4日

†彫像†
水道が止められていた
陽射しの強さに切断されていた
半端に立ち尽くした柱頭が
光線の中に彫刻されている
6月1日

†断絶†
夏の喜びを歌う
狂ったような蝿の番う声
小路には一人立ちつくし
階(きざはし)へと誘われる
6月1日

 
 

 
 
 
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