■ 柘 榴 の 間 ■
 
 
 
   

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†感冒性午睡†
水浸しの脳髄
鎧戸から漏れる日光にも
突き刺されてしまう
誰かがこびりついた記憶を剥がしている
9月29日

†損なわれざるもの†
眠りの深いものたちは
敷布を夜に浸している
残された時間の長さは
白い布の重さに等しい
9月28日

†首飾り†
朝の光の中に溺れて
名前を数え上げて
慣れきった仕草で零したものが
喉に絡みついている
9月28日

†望楼†
開かれたカードの数字は
倒された砂時計の落下を写し
砂の上を這うものの跡は
届けられる手紙の水茎
9月26日

†雨宿り†
眠りから覚めると
痛みは降りかかっていた
庭を浸している青みがかった光
蛇の這う石影
9月25日

†炎の帯域†
飛び交うイオンの運動の最中
押しやられて行く物質
痙攣する筋肉は取り落とす
蝋燭の炎を油の中に
9月25日

†誘蛾灯†
窓枠から飛び込んでくる
見なれない精髄を
踏みにじる
飛び散った花火を消すように
9月24日

†すれ違う†
片言の会話でやり過ごす
覚えることの出来ない顔の羅列
見知らぬ者が断言した
これは定められた剣であると
9月24日

†予兆されたもの†
断崖に立って風を浴びている
耳を塞ぐ人ならぬものの声が
冷たい指で指し示していた
忘却されるものなど何もないと
9月23日

†崇拝者†
溶解した自我が浸す
爪先のダイアモンドは輝き
離反を許さない
同心円状のオーロラ
9月22日

†浄化†
割れた香の先から煙は昇る
夜更けの灯りは音も立てず
不意に呼吸が停まる
透明な羽根が散らばっている
9月21日

†秋の雷雨†
耳を打つ雷鳴と雨は
秋を告げている
終わりない暴風が
遠くの枯葉を叩き落すように
9月19日

†呪われた水†
苦い味の水を飲み干す
呪いを共に飲み干す
選び取られた杯は捨てる
砕けた欠片を飲み干す
9月16日

†祝祭日の傍ら†
今宵の婚礼も騒がしい
清められた祝日に始まり
幾度も聞かされたラジオの音楽
訪れない明日に終わる
9月14日

†無明†
天秤が揺れ動いているうちに
見失ってしまう路程
手探りで潜行する水夫の行方
歪曲された水中の音
9月12日

†迷宮彷徨†
それは薔薇のほほえみなのだから
ある夜の香気に満ちた風だった
光輪の中で贈られた僅かな記憶
網膜から吹きさらわれていくがまま
9月12日

†誘う火†
燃えているのは灯台の導ではない
枯れ果てた草原に上がるもの
饐えた沼の底から昇る気泡
それは呼び声ではない
9月10日

†警告†
上流にある不安な匂いは
川を染め変えてしまった
耳を裂く鳴き声が幕を開く
押し流されてしまえばいいのだ
9月10日

†唯一の解法†
占い師に尋ねるがいい
瞬間的な夢想に陥る
手を触れてもよい扉があるかのように
昨日を誘惑する術さえあれば
9月8日

†同乗者†
加熱した内臓をもって語る
腐敗寸前の情熱
共有されない振動
静寂が分断する空間を流れる
9月7日

†縫い取られた文様†
泣き声で呼ぶと秋は
燭台の灯りのもとに来る
秘めやかなあの囁きが
群青の天空の厳格な託宣に変わった時
9月7日

†行列†
耳を傾けられることなどないからこそ
ディシプリンの欲望
残酷さと代わりのない整列
恐怖を忘れたものは自らに帰る
9月7日

†水盤†
夜こそ最も深い鉢
オレンジを満たす一杯のグラス
渇いた人は貪り
満たされた人は惜しげもなく捨てる
9月5日

†落雷†
不意に欲望が打ちつける
その時が来たのだから
流れる河の弁明がうねる
音は激情に溢れる
9月5日

 
 

 
 
 
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