無 - 漢字私註

説文解字

林部𣞤字條

𣞤
𣞤𣟒、あるいはに作る。
豐也。从、𡘲。或說規模字。从、𠦜、數之積也。林者、木之多也。𠦜與庶同意。『商書』曰、庶草繁無。
林部

亡部𣠮字條

𣠮
𣠮あるいは𣞣に作る。
亡也。从無聲。
十二亡部
无
奇字无、通於元者。王育說、天屈西北爲无。

康煕字典

部・劃數
火部八劃
古文
𣟒
𣚨
𠘩

『唐韻』武扶切『廣韻』武夫切『集韻』『韻會』『正韻』微夫切、𠀤音巫。『說文』亡也。『玉篇』不有也。『書・舜典』剛而無虐、𥳑而無傲。又『益稷』懋遷有無化居。

又『爾雅・釋詁』虛無之閒也。《註》虛無皆有閒隙。『老子・道德經』萬物生于有、有生于無。『周子・太極圖說』無極而太極。

又『禮・三年問』無易之道也。《註》無、猶不也。

又縣名。『前漢・地理志』越巂郡會無縣。

又姓。『正字通』漢無且明、無能。

又『廣韻』漢複姓無庸無鉤、俱出自楚。

又文無、藥名。『古今注』相別贈之以文無。文無、一名當歸。

又『說文奇字』作。『玉篇』虛无也。周易無字俱作无。

又『集韻』或作。『詩・衞風』何有何亡。

又通作。書、無逸。『史記・魯世家』作毋逸。

又通作毛。『後漢・馮衍傳』飢者毛食。《註》衍集、毛作無。今俗語猶然。或古亦通乎。『佩觿集』河朔謂無曰毛。『通雅』江楚廣東呼無曰毛。

又『集韻』或作武。○按【禮器】詔侑武方。【註】武當爲無、聲之誤也。【鄭註】明言其誤。集韻合無、武爲一。非。

『集韻』無或作。韻會、𣞣本古文蕃𣞣字。篆借爲有無字。李斯變隷變林爲四點。〇按【說文】𣠮、从亡無聲、在亡部。至蕃橆之橆、在林部。音義各別、不云相通。且有無與蕃橆義尤相反、不應借用。玉篇集韻韻會俱非。韻會蕃橆作蕃𣞣、尤非。又按讀書通云、通作勿莫末沒蔑微不曼瞀等字、或止義通、或止音近、實非一字也。讀書通誤。

又梵言、南無呼那謨。那如拏之上聲、謨音如摩、猶云歸依也。

部・劃數
木部十六劃

『玉篇』古文字。註見火部八畫。互見十二畫字。

部・劃數
木部十二劃

『玉篇』古文字。註詳火部八畫。

部・劃數
几部二劃

『字彙補』古文字。註見火部八畫。

部・劃數
木部十二劃

『唐韻』文甫切『集韻』『韻會』罔甫切『正韻』罔古切、𠀤音武。『說文』豐也。从𡘲从林。大、𠦜、數之積也。林者、木之多也。𠦜與庶同意。『書・洪範』庶草蕃橆。『唐韻』隷省作、今借爲有無字。『字彙』橆、古文蕃橆字。有無之無、則用字。秦以橆作无、李斯又改作無、後因之。

『正韻』繁橆、『今文尚書』作廡。橆、廡義同。

部・劃數
部首
古文
𠑶

『唐韻』武夫切、音巫。『說文』𣞣、亡也。奇字、无通𣞣。王育說、天屈西北爲无。『易・乾卦』无咎。『釋文』无音無。易內皆作此字。『藝苑雄黃』无亦作。古皆用亡无、秦時始以蕃橆之橆爲有無之無。詩、書、春秋、禮記、論語本用无字、變篆者變爲無、惟易、周禮盡用无。然論語亡而爲有、我獨亡、諸無字、蓋變隸時誤讀爲存亡之亡、故不改也。

又『廣韻』莫胡切、音模。南无、出『釋典』。

異體字

『説文解字』林部に錄す。

『説文解字』亡部に錄す。

𣠮をまた𣞣に作る。

音訓

ム(呉) ブ(漢) 〈『廣韻・上平聲・虞・無』武夫切〉
ない。ず。あらず。なかれ。むなしい(虛無)。

解字

無は人の舞ふ姿の象形で、舞の初文。のち假借して有無の無を表し、を加へた舞字を別に作つて原義を表す。

无の字源は不詳。

白川

もと象形。人の舞ふ形で、舞の初文。卜文に無を舞雩(雨乞ひの祭)の字に用ゐ、ときにに從ふ形につくる。

有無の無の意に用ゐるのは假借。のち專らその假借義に用ゐる。

説文解字に豐かなりと訓じ、字をに從ふ字とするが、説文解字が林とするその部分は、舞袖の飾りとして加へたもので、金文に見えるその字形を、誤り傳へたもの。また「豐かなり」の訓も、『爾雅・釋詁蕪、豐也。(蕪は豐かなり)と見える蕪字の訓。

説文解字は字を林に從ふものとして林部に屬し、そこから繁蕪の意を求めるが、林は袖の飾り、字は人が兩袖を擴げて舞ふ形。のち兩足を開く形であるを加へて、舞となる。

いま舞には舞を用ゐ、無は有無の無に專用して區別する。

象形。の異體字。亡は屍骨の象。

説文解字は亡部に無に從ふ𣠮字を擧げ、その重文として无を擧げるが、无はもと屈屍の象で、亡と同字。金文の《越王鐘》に萬葉まで亡疆ならんことをの亡を无の形に作る。『易・无妄』など、『易』に多くこの字を用ゐる。『莊子』にも用事例が多く、この字は楚越など南方で行はれたものであらう。

藤堂

甲骨文は、人が兩手に飾りを持つて舞ふさまで、後の舞の原字。無は、と音符舞の略體の形聲。古典では无字で無を表すことが多い。

(人)の會意で、人の頭の上に一印をつけ、頭を見えなくすることを示す。無字の古文異體字。

元字の變形といふ説があるが、それは採らない。

、兂は別字。

落合

舞の甲骨文は、人が手に飾りを附けて舞つてゐる姿で、無の形に當たる。後代には專ら假借して有無の意のみに用ゐられるやうになり、原義については篆文で人の足を強調した形が作られた。

漢字多功能字庫

甲骨文は人が手に牛尾の類の飾りを持ち輕やかに舞ふさまを象る。文獻には古人は手に牛尾を執つて舞ひ踊つたと記載されてゐる。『呂氏春秋・仲夏紀・古樂』昔葛天氏之樂、三人摻牛尾投足以歌八闋。後に無を有無の無に借りるやうになつたので、金文は牛尾の飾りを變形しとした。金文で某はまた否定詞に用ゐるので、某は無の聲符であり、意符でもある。

甲骨文では有無の義に假借する例が見えない。金文の時代に有無の無に假借することが始まり、ゆゑに無の下に兩足の形()を加へて舞を表した(季旭昇)。説文解字の小篆では無の下にを加へて無を表すが、この種の字形はいまのところ漢碑にのみ見える。

甲骨文では祭名に用ゐる。舞ひ踊つて雨を求める祭である。

金文では、あらざることを表す。

また甲骨文、金文では、多く亡を假借して無となす。

戰國竹簡での用義は次のとほり。

屬性

U+7121
JIS: 1-44-21
當用漢字・常用漢字
𣟒
U+237D2
𣚨
U+236A8
𠘩
U+20629
U+6A46
JIS: 2-15-51
U+65E0
JIS: 1-58-59
𣞤
U+237A4
𣠮
U+2382E
𣞣
U+237A3

関聯字

無聲の字