禾 - 漢字私註

説文解字

禾
嘉穀也。二月始生、八月而孰、得時之中、故謂之禾。禾、木也。木王而生、金王而死。从、从𠂹省。𠂹象其穗。凡禾之屬皆从禾。
禾部

康煕字典

部・劃數
部首

『唐韻』『正韻』戸戈切『集韻』『韻會』胡戈切、𠀤音和。『說文』嘉穀也。二月始生、八月而孰、得時之中、故謂之禾。禾、木也。木王而生、从木从𠂹省、𠂹象其穗。『春秋・莊二十八年』大無麥禾。《疏》麥熟於夏、禾成在秋。

又凡穀皆曰禾。『詩・豳風』十月納禾稼、黍稷重穋、禾麻菽麥。《疏》苗生旣秀謂之禾。禾是大名、非徒黍稷重穋四種、其餘稻秫苽粱皆名禾、惟麻與菽麥無禾稱、故再言禾以總之。

又『山海經』玉山、王母所居。昆侖之墟、其上有木禾、長五尋、大五圍、二月生、八月熟。《註》木禾穀類可食。『鮑照詩』遠食玉山禾。

又禾、和也。『尚書序』唐叔得禾、異畝同穎、王命歸周公於東、作歸禾、周公得命禾、旅天子命作嘉禾。『孔傳』異畝同穎、天下和同之象。《疏》後世同穎之禾、遂名嘉禾、由此。

又姓。

音訓

クヮ(漢) 〈『廣韻・下平聲・戈・和』戸戈切〉
いね

解字

白川

稻の象形。

藤堂

象形。穗の垂れた粟の形を描いたもの。丸く垂れる穗の形、あるいは丸い粒に注目した言葉。

落合

象形。穀物が實つた形であり、穗が垂れてゐる狀態を表してゐる。

甲骨文の要素としては、穀物やその收穫に關する字の要素に用ゐることが多い。

穀物の一般像であり、具體的に種別を表す場合は黍、麥などを用ゐる。甲骨文での用義は次のとほり。

  1. 穀物。收穫後の實についても用ゐる。《合集補編》11776辛酉卜貞、王賓蒸禾、亡尤。
  2. 穀物の實り。收穫。《合集補編》9014辛卯卜荷貞、[自魚]今歳受禾。

漢字多功能字庫

甲骨文は禾穀(小米; 粟)の株を象り、初義は禾穀。派生して一切の穀物を指す。

字形

甲骨文は羅振玉の説のやうに象形で「上は穗や葉を象り、下は莖や根を象る。」といふ。後に少なからざる學者がこの説を認める。徐中舒、高鴻縉、陳夢家、李孝定、陳煒湛など。

甲骨文の禾、黍、來の三字の區分について、裘錫圭が要點を摑んだ分析をしてゐる。彼は穀子(禾)の穗は集まつて下に垂れる形を呈し、黍の穗は散らばつてゐる形、麥(按: 甲骨文の來)の穗は眞つ直ぐ上を向く形であると指摘する。甲骨文は主に穗の形によつて三者を辨別してゐる。

金文、小篆の禾字は大方甲骨文の形を承ける。

用義

卜辭では禾とが通用されてゐる(郭沫若、于省吾、陳夢家、姚孝遂、裘錫圭)。姚、裘の兩名は二字の關係や用法について參考にすべき見方を示してゐる。禾、年は卜辭で通用するときがあると雖も、同じ字ではなく、禾は年の省略形ではない(嚴一萍は禾を年の省略形としてゐる)。年の初義は(穀類が熟して)收穫する意で、「とし」の意を派生する。年は禾に從ひ、古くから重要な農作物である穀子を表す。裘は特に、卜問「受年」のほか、多く出て來る卜問「受黍年」を指摘する。但し、卜問「受禾年」は見えない。裘は、これは禾の栽培量が他の穀類を遙かに勝るため、受年か否か卜問するのは、實は受禾年か否かを卜問してをり、故にその卜問のために更なる專文は必要ない、とする。また、姚孝遂は禾は一般の義(一切の穀物を指す)に用ゐ、受禾はあるいは受年といへるとする。そして專らある種類の穀物を指すときには、「受某年」(例へば「受黍年」)のやうにいひ、「受某禾」とはいはない、といふ。

金文での用例は以下のとほり。最初の三項は《金文形義通解》による。

  1. 穀物を指す。曶鼎昔饉歲、匡眾氒(厥)臣廿夫寇曶禾十秭。
  2. 人名に用ゐる。禾簋(春秋晚期)禾肈乍(作)皇母懿龔孟姬𩞔彝。
  3. 假りてとなす。邾公□鐘陸□(融,讀為終)之孫邾公□乍(作)氒(厥)禾(龢)鐘。金文では多く「龢鐘」につくり、文獻では多く「和鐘」につくる。
  4. 年の省略形として用ゐる。北子觶北子乍(作)寶尊彝、其䘇邁(萬)禾(年)、孫子子永寶。禾を年の省略形とする説は楊樹達に見える。他の用例は東䀠尊にあるが、この器物の禾字の形は綺麗でない。北子觶の禾字ははつきり見える。

古書での禾に廣狹二義ある。狹義は穀子(小米; 粟)を指し、廣義は一切の穀類作物を指す。

狹義の用例
『書・微子之命』唐叔得禾、異畝同類、獻諸天子。孫星衍疏禾、即今之小米也。
『呂氏春秋・審時』得時之禾、長秱長穗、大本而莖殺、疏穖而穗大、其粟圓而薄糠、其米多沃而食之彊。
廣義の用例
『儀禮・聘禮』門外米禾皆二十車、薪芻倍禾。清代・程瑤田『九穀考・梁』『聘禮』米禾皆兼黍稷稻梁言之、以他穀連槀者、不別立名。

屬性

U+79BE
JIS: 1-18-51
人名用漢字

関聯字

禾に從ふ字

説文解字・禾部のほか、次の字など。

禾聲の字