麥 - 漢字私註

説文解字

麥
芒穀、秋穜厚薶、故謂之麥。麥、金也。金王而生、火王而死。从、有穗者。从。凡麥之屬皆从麥。
註に臣鉉等曰、夊、足也。周受瑞麥來麰、如行來。故从夊。といふ。
麥部

康煕字典

部・劃數
部首

『唐韻』『集韻』莫獲切『韻會』『正韻』莫白切、𠀤音脈。『說文』麥、芒穀、秋種厚薶麥金也。金王而生、火王而死。『禮・月令』孟夏麥秋至。『蔡邕曰』百穀各以初生爲春、熟爲秋。麥以初夏熟、故四月於麥爲秋。又『前漢・武帝紀』勸民種宿麥。《註》師古曰、歲冬種之、經歲乃熟、故云宿麥。

又一種蕎麥、一名烏麥。南北皆種之、亦名荍麥。

又『爾雅・釋草』蘥雀麥。《註》卽燕麥也。

又『爾雅・釋草』大菊蘧麥。《註》大菊、一名麥句薑、卽瞿麥。

又姓。『隋書』有麥鐵杖。

又『集韻』訖力切、音極。『詩・鄘風』爰采麥矣、沫之北矣。又『豳風』黍稷重穋、禾麻菽麥。

又叶莫故切、音暮。『晉太和末童謠』白門種小麥、叶上路。

○按麥从來不从夾、从夊不从夕。來象其實、夊象其根。俗作、非。又楊愼謂麥有昧音。引范文正公安撫江淮、進民閒所食烏昧草、謂卽今燕麥也。淮南謂麥爲昧、故史從音爲文、殊不知燕麥卽野稷也。升庵失考、乃引范文正所進烏昧草當之、蓋鳥昧草實蕨也。附辨於此。

部・劃數
麥部(零劃)

『正字通』俗字。

音訓

バク(漢) 〈『廣韻・入聲・麥・麥』莫獲切〉
むぎ

解字

白川

の會意。夊は足の形で、麥踏みの意であらう。

『説文解字』に五行説を以て説くが、夊は恐らく蒔いた種を踏藉する意であらう。

周の始祖后稷が嘉禾を得たとする傳承があり、『詩・周頌・思文』に貽我來牟(我に來牟をおくる)とある。

麥の熟するときを麥秋といふ。

藤堂

(足)と音符の會意兼形聲。來は、穗が左右に出た麥を描いた象形字。麥はそれに夂(足)を添へたもので、遠くから步いて齎された麥を表す。神が遠く西方から齎した收量豐かな穀物のこと。元來、來が「むぎ」、麥が「くる、もたらす」の意を表したが、いつしか逆になつた。

古くはmlといふ複子音を持ち、mが殘つたのがバク、lが殘つたのがライの音となつた。

落合

會意。麥の象形のに足の形を下向きにしたを加へ、來と區別した繁文。なほ夂を加へた意味については、遠くから步いて齎される意や、麥踏みの樣子などの説があるが、いづれが正しいかは不明。上古音の復元には諸説あり、來と同源語か別源語かは明らかではない。

甲骨文での用義は次のとほり。

  1. むぎ。《合補》2538庚子卜賓、翌辛丑、有吿麥。
  2. 地名またはその長。《東京大學東洋文化研究所藏甲骨文字・圖版篇》918癸巳王卜在麥貞、旬亡禍。王占曰、吉。

漢字多功能字庫

甲骨文、金文は、(倒)に從ひ聲。來は麥の形に象る。後に來の下に意符の止を加へて麥字を作り、到來の來の本字となす。しかし常々來を借りて往來、到來の來を表し、長い間返さなかつたため、最後には反對に麥字を用ゐて稻麥を表すやうになつた(參・葉玉森)。

甲骨文での用義は次のとほり。

金文では麥を表し、仲𠭯父盤に見える。また人名に用ゐる。

屬性

U+9EA5
JIS: 1-83-46
U+9EA6
JIS: 1-39-94
當用漢字・常用漢字

關聯字

説文解字・麥部など麥に從ふ字を、麥枝 @ 來部 - 漢字私註部別一覽に蒐める。