辿りついてみると、もう終わっていた、と言うのだった。
今日はその日ではなかった。葬儀は全て終わっていた。会葬者達が、すれ違いざま何か言いたげにしていた。私は耳を塞いで急いでいたので、何の音も聞こえず、何も見えず、何が流れているのかは分からなかったが、息が詰まるような匂いだった。
蒸し暑かった。そのせいで埋葬は早かったのだ。そうに違いない。しかし、それはいつのことだったのか。
足元に、平らな白い四角い箱があった。名前も刻まれていないが、それが墓石だとは分かっていた。私は、その石の回りを怒りにかられて歩いた。ぐるぐると回るうちに、この墓は暴かねばならないと思った。
私は、墓守を探したが見えなかった。それはおかしなことだった。私はますます怒りに駆られて、墓の回りをぐるぐると歩き回った。ぶうんと甲虫の囁きが聞こえていた。それは取り憑かれるような単調な音だった。墓守はいなかった。会葬者達はもう立ち去っていた筈なのに、その呟きが空気に残っているようだった。それとも甲虫の羽音だったろうか。告げ口する虫の声。電話が鳴っている。一体誰を呼んでいるのだ。
墓地の隅に葬儀社から来たものが居るのを見つけた。問いただそうとすると、ようやく葬儀証明書が手渡された。夏でなければこれは行われなかった葬儀だと言われた。仕方のない埋葬だと言われた。証明書は完璧なように見えた。水晶玉から響いてくる曇った電子音よりは瑕疵がない。罪悪感は偽りだと知っていた。水晶玉を覗こうと思ったことなどないからだった。
墓守がやってきて、ぐるりと墓の回りを回るので、もう、何も残るものはなかった。もう何もない。それは終わってしまっていた。知らぬうちに終わっていたことだった。
個人的な数え方をすれば、墓石の数は、二つになってしまっていた。二つだけだ。数に意味があるわけではないが、けれども私は数を数えてみた。それとも、もっと多いのかも知れない。知らないだけで、いつも、知らぬうちに行われてしまっている儀式の数。
それを繰り返し数え上げても仕方がないことだったが、記憶は数を数えることを要求するのだ。繰り返せ。もし、早く終わってしまわないなら、数え続けるのだ。
大きな甲虫が肩に止まっているのを見る。それを払い落とした。
甲虫は落ちても羽音も立てなかった。