説文解字私註 白部 (第四)

此亦自字也。省自者、詞言之气、从鼻出、與口相助也。凡白之屬皆从白。
俱詞也。从比从白。
鈍詞也。从白、鮺省聲。『論語』曰、參也魯。
別事詞也。从白𣥐聲。𣥐、古文旅字。
詞也。从白𢏚聲。𢏚與疇同。『虞書』帝曰、𤾊咨。
𥏼 (智)
𥏼 識詞也。从白从亏从知。
𥏾 古文𥏼。
十十也。从一、白。數、十百爲一貫。相章也。
𦣻 古文百从自。

白部 舊版

を參照のこと。

説文解字
俱詞也。从比从
康煕字典
白部四劃
『唐韻』古諧切『集韻』『韻會』『正韻』居諧切、𠀤音街。『說文』俱詞也。『小爾雅』同也。『易・解卦』雷雨作、而百果草木皆甲坼。鄭康成讀皆如懈、非。
『字彙補』居之切、音箕。『前漢・孟喜傳』箕子者、萬物方荄茲也。『師古註』荄、音皆。古皆荄與箕音同。
叶舉里切、音几。『詩・周頌』以治百禮、降福孔皆。《傳》皆、遍也。與偕通。『荀勗東西廂歌』降福孔偕。
『說文』白字兩見、一在自部、自部之白、疾二切、卽自字。皆字載自部中、則應从白。『集韻』或作皆、非。
カイ
みな。ともに。
解字(白川)
比との會意。金文の字形は从と曰に從ふ。比、从はともに人の連なり竝ぶ形。曰は祝禱、盟誓を收める器。多數の靈が降下することを皆といふ。その祝禱を神が受け容れることをかなふといふ。祝禱に對して一人の靈が下ることを「いたる」といひ、詣の初文。
解字(藤堂)
比と(自)の會意。比は人が肩を竝べたさま。自は鼻。替やの下部も白(自)で、人間の動作を表す。みな竝んで揃ふことを示す。
解字(漢字多功能字庫)
甲骨文は、と、一つまたは二つの虎と几に從ふ。几は聲符。構形初義は不明。一説に、虎と歺に從ひ、歺は殘骨の形、二虎が爭つて骨が殘るの意といふ。
金文には二種類の字形がある。一つは从とに從ひ、二人が竝ぶことから、竝、皆の意といふ。後に从が比に變はり、皆の聲符となる。甘は口の中に點を加へて成つた。金文では人名に用ゐる。もう一つは虎と几と甘に從ひ、甲骨文に形が近い。金文では俱(ともに)、都(すべて)を表し、統括の詞である。
當用漢字・常用漢字

説文解字
鈍詞也。从、鮺省聲。『論語』曰、參也魯。
康煕字典
魚部四劃
《古文》𣥐
『廣韻』『正韻』郞古切『集韻』『韻會』籠五切、𠀤音虜。『說文』鈍詞也。『論語』參也魯。『何晏註』魯、鈍也。曾子性遲鈍。
國名。『詩・魯頌譜』魯者、少昊摯之墟也。『前漢・地理志』周興、以少昊之虛曲阜封周公子伯禽爲魯侯、以爲周公主。『釋名』魯、魯鈍也。國多山水、民性樸魯也。
姓。『廣韻』伯禽之後、以國爲姓、出扶風。又複姓有魯步氏。
『集韻』旅、古作魯。註詳方部六畫。
おろか
解字(白川)
魚との會意。曰は祝禱を收める器。魚を薦め、祝禱する儀禮を示す字。金文には魯休、魯命、純魯、魯壽など、嘉善の意に用ゐる字。祖祭に魚を用ゐることは辟雍の儀禮に見え、魯とは祖祭に關する儀禮をいふ字であらう。
魯鈍の意は、朴魯の義から轉じたものとみられ、もとは純魯をいふ字であつたと考へられる。
解字(藤堂)
魚(鈍い動物の代表)と(ものをいふ)の會意。言行が魚のやうに大まかで間拔けであることをいふ。
解字(落合)
甲骨文は魚と祭器を表すの會意。甲骨文では祭祀名に用ゐる。
鈍いの意は假借または派生義。
解字(漢字多功能字庫)
甲骨文、金文は、と魚に從ひ、魚は亦た聲符。恐らく魚が美味である意。本義は美味であること。一説に美好の意で、口は器皿の形を象るととることもでき、器皿に魚を盛る意といふ。また、口はただの分化の符號で、魚に口を加へて分化した字が魯であるともいふ。
後期金文で口中に點を加へ、に變形した。魚尾と口がくつついて變形し、小篆は魚と白に從ふ。
甲骨文では地名に用ゐる。また美好の意を表す。
金文では美好の意を表す。史叀鼎に屯(純)魯、魯令(命)とあり、純は厚い、大きなるの意。一つ目の魯字は、美好から轉じて福祐の意、嘏(幸ひ)と同源の言葉である。二つ目の魯は美好、嘉美の意を表し、句全體では厚福、嘉命の意。また地名、國名に用ゐる。
戰國竹簡では美好の意を表す。また國名に用ゐる。
人名用漢字

説文解字
別事詞也。从𣥐聲。𣥐、古文旅字。
康煕字典
老部四劃
『廣韻』章也切『集韻』『韻會』『正韻』止野切、𠀤音赭。『說文』別事詞也。从白𣥐聲。𣥐、古文旅字。『韻會』今作者。『玉篇』語助也。『增韻』又卽物之辭、如彼者、如此者。『易・乾卦』元者、善之長也。
『增韻』又此也。凡稱此箇爲者箇是也。今俗多用這字、這乃魚戰切、迎也。
『韻補』叶掌與切。『史記・秦始皇紀』人迹所至、無不臣者。《註》索隱曰、者、協音渚。『楚辭・九歌』搴芳洲兮杜若、將以遺乎遠者。時不可以驟得、聊逍遙兮容與。『韻會』者、古文渚字、故从旅聲。後人以者添水作渚、以別者也之者、故者但爲語助。
叶阻可切。『繆襲・挽歌』形容稍銷歇、齒髮行當墮。自古皆有然、誰能離此者。
叶之戈切。『韓愈・盧氏墓銘』命不侔身、兹其奈何。刻名墓石、以告觀者。
『韻會』說文从白、當作者、今作者。○按說文在白部、今从正字通倂入。者或从白𣏔聲。𣏔、古文困字。
もの。これ。この。
解字(白川)
叉枝の形との會意。上部は叉枝を重ね、それに土を示す小點を加へた形。曰は祝禱を收めた器。者は堵の初文。住居地の周圍に巡らせた土居に、呪祝としての書を埋め、外からの邪靈を遮蔽する意。字の全體を象形とみてもよい。書は者に(筆)を加へた形。城邑に巡らすものを堵といひ、城壁の方丈の單位を堵といふ。
説文解字に事を別つの詞なりとするが、それはものを特定して指す意で、假借義。
金文の字形は祭器の口または曰に從ふ形で、その系統の字。
解字(藤堂)
柴が焜爐の上で燃えてゐるさまを描いた象形字で、煮の原字。古くから近稱指示詞に當てて用ゐられ、これと同系の言葉を表す。ひいては直前の語句を「〜するそれ」ともう一度指示して浮き出させる助詞となつた。また轉じて「〜するそのもの」の意となる。唐、宋代には、「者箇これ」をまた「遮箇」「適箇」とも書き、近世には適の草書を誤つて「這箇」と書くやうになつた。
解字(落合)
甲骨文は枝の伸びた木と器物を表すの會意。異體字には枝の伸びた木だけのものもある。
甲骨文では主に時制を表す助辭として用ゐられるが、恐らく假借の用法。「今者」で現在を、「昔者」で過去を、「來者」で未來を表す。
枝が伸びた木の部分は後に變形し、耂になつた。また、器物の形は白に置き換へられ、者の字形となる。下部を曰にした字體も、既に古文や籀文に見られる。
解字(漢字多功能字庫)
金文は、木と幾つかの點とに從ふ。構形初義不明。木の形が變化しての形となり、口が變形して、皿、となり、あるいは繁筆を加へてとなる。
金文では特指代詞に用ゐ、動詞、形容詞あるいは動詞性の短い語の後に用ゐて、名詞性の短い語を構成する。また用ゐて諸となす。
當用漢字・常用漢字
《漢字表字體》者(U+8005; JIS:1-28-52)
《人名用許容字體》者(U+FA5B; JIS:1-90-36)

ものを特定して指す助辭として用ゐる。「〜は」とか「〜するものは」とか。

本朝の文書等に於いては、文末の者を「てへり」と訓ず。「と云へり」の轉。

説文解字
㿧𤾊 詞也。从𢏚聲。𢏚與疇同。『虞書〔堯典〕』帝曰、𤾊咨。
康煕字典
白部十四劃
『集韻』𨻰留切、音儔。詞也。與同。本作𤾊。
康煕字典・𤾊
白部九劃
『唐韻』直由切『集韻』𨻰留切。𠀤與疇同。『說文』詞也。引『書・堯典』、帝曰𤾊咨。
『集韻』時流切、音讎。義同。
『集韻』或作㿧。『字彙補』亦作𤾦
チウ

出回つてゐるテキストでは、上揭『書・堯典』引用中の𤾊を疇につくる。

説文解字
𥏼 識詞也。从从知。
𥏾 古文𥏼。
康煕字典
日部八劃
《古文》𥏼
『廣韻』『集韻』『韻會』『正韻』𠀤知義切、音置。同𣉻。或作智。『說文』識詞也。从白从亏从知。○按經典相承作智。『釋名』智、知也。無所不知也。『孟子』是非之心、智之端也。『荀子・正名篇』知而有所合謂之智。○按經典或通用知。
姓。『廣韻』晉有智伯。
さとい。しる。はかりごと。
解字(白川)
會意。字の初形は矢とに從ふ。矢と干(盾)は誓約のときに用ゐる聖器。口はその誓約を收めた器。は中にその誓約があることを示す形。その誓約を明らかにし、これに從ふことを智といふ。知に對して名詞的な語である。
解字(藤堂)
(いふ)と印と知の會意、知は亦た音符。知とは矢との會意字で、矢のやうにずばりと當てて言ふこと。亏印は息がつかへて出るさま。智は、知と同系、ずばりと言ひ當てて、さといこと。
解字(漢字多功能字庫)
甲骨文は大とに從ふ。その異體は口に換へてに從ひ、大人が簡冊に記された智識を子供に傳授する意を表し、知識あつてこそ智慧ある、故に智慧の意味を表す。西周金文は多く上部が大と口とに、下部がに從ふ。甲骨文や後期金文の中には大に換へて矢に從ふものがある。矢は大の變化したもの、于は子の變化したものである。矢や知は聲符である。
金文では多く知の通假字となす。
小篆は𥏼につくり、隸書で省略して智につくる。
人名用漢字

を參照のこと。