説文解字私註 甘部

甘部

説文解字
美也。从含一。一、道也。凡甘之屬皆从甘。
康煕字典
部首
《古文》𠙸𠙿
カム
あまい。うまい。あまんずる。あまんじて。
解字(白川)
左右の上部に横に鍵を通す錠の形を象り、拑、鉗の初文。中にものを嵌入する意がある。甘聲の字は概ねその聲義を承ける。甘美の意は、苷、酣の義を取つたものであらう。甘苦の字は苷がその本字。
解字(藤堂)
と點の會意。口の中に點で示した食物を含んで味はふことを示す。ながく口中で含味する、うまいものの意となつた。
解字(落合)
甲骨文や金文は、に小點を加へた指示字。口にものを含んだ樣子を表す。元は飲食を表し、轉じて美味の意、更に甘味の意味に轉用される。
現存の資料では苷字の初例は篆書だが、戰國期には甘字に美味の意が出現してをり、甘美の意が苷から轉じたと解釋するのは不可。
解字(漢字多功能字庫)
に從ひ、口中に物を含むことを表す。の初文。甘美な物は人が好んで含むものであり、故に甘味の意を派生した。口の中の横劃は指示符號で、戰國文字には輪つかにつくるものもある。
甲骨文では地名に用ゐる。
金文や戰國幣文に「甘丹」の語が多くあり、地名に用ゐられ、趙の都の邯鄲を指す。
戰國竹簡に「甘露」の語があり、甘美な露水を指す。また「甘戰」の語があり、讀んで「酣戰」となし、激戰が持續してゐることを指す。傳世文獻に亦た「酣戰」の語がある。『韓非子・十過』酣戰之時、司馬子反渴而求飲、豎穀陽操觴酒而進之。
古璽文の甘は姓氏に用ゐられる。
當用漢字・常用漢字

《説文解字本文》美也。从甘从舌。舌、知甘者。
《康煕古文》餂
《康煕》甜 『集韻』與甛同。
《音》テン
《訓》あまい。うまい。
康煕甘部
按: 現狀は甜の形を採ることが多いか。

𤯌

《説文解字本文》和也。从甘从麻。麻、調也。甘亦聲。讀若函。
《康煕》『唐韻』『集韻』𠀤古三切、音甘。『說文』和也。又『廣韻』『集韻』𠀤胡甘切、音酣。又『廣韻』口含切『集韻』枯含切、𠀤音堪。又『集韻』徒南切、音覃。又葛合切、音閣。義𠀤同。
康煕甘部

《説文解字本文》飽也。从甘从肰。
《説文解字重文》𤟶 猒或从㠯。
第九篇厂部厭字に同じ。
康煕犬部

《説文解字本文》甚𠥄 尤安樂也。从甘、从匹耦也。
《説文解字重文》𠯕 古文甚。
白川は竈に烹炊の器を掛ける形の象とする。
康煕甘部
常用漢字