旁 - 漢字私註

説文解字

旁
溥也。从𠄞。闕。聲。步光切。
丄部
𣃟
古文㫄。
𣃙
亦古文㫄。
雱
籒文。
別條に揭出。

説文解字注

旁
溥也。司馬相如封禪文曰、㫄魄四塞。張揖曰、㫄、衍也。『廣雅』曰、㫄、大也。按㫄讀如𣶢。與溥雙聲。後人訓側。其義偏矣。从𠄞。闕。闕謂从⿹┌㇞之說未聞也。李陽冰曰、⿹┌㇞象㫄達之形也。按自序云、其於所不知。葢闕如也。凡言闕者。或謂形、或謂音、或謂義。分別讀之。方聲。凡徐氏鉉鍇二本不同、各从其長者。如此處鍇作、方聲闕。闕字在方聲下。於未聞从⿹┌㇞之說不瞭。故不从之是也。後不悉注。步光切。十部。
𣃟
古文㫄。以許說推之。亦小篆从𠄞、古文从一也。
𣃙
亦古文㫄。李斯改一爲𠄞。則爲小篆。
雱
籒文。詩〔邶風・北風〕』雨雪其雱。故訓傳曰、雱、盛皃。卽此字也。籒文从。衆多如雨意也。毛云、盛、與許云溥正合。今人不知㫄雱同字。音讀各殊。古形古音古義皆廢矣。

康煕字典

部・劃數
方部・六劃
古文
𣃟
𣃙

『廣韻』步光切『集韻』『韻會』蒲光切、𠀤音螃。隷作旁。『博雅』旁、大也。廣也。『釋名』在邊曰旁。『玉篇』猶側也。非一方也。『易・乾卦』旁通情也。『書・太甲』旁求俊彥。『爾雅・釋宮』二達謂之岐旁。《註》岐旁、岐道旁出。

又『集韻』晡橫切、音𦅈。騯、馬盛貌。或省作旁。『詩・鄭風〔清人〕』駟介旁旁。《疏》北山傳云、旁旁然不得已、則此言旁旁亦爲不得已之義。《朱傳》旁旁、馳驅不息之貌。音崩。叶補岡反。

又『韻會』『正韻』𠀤蒲浪切、音傍。『前漢・霍光傳』使者旁午。《註》如淳曰、旁午、分布也。師古曰、一縱一模爲旁午。猶言交橫也。

又『莊子・齊物論』旁日月。《註》依也。

又『集韻』鋪郞切、音滂。旁礴、混同也。

又『集韻』蒲庚切、音彭。旁勃、白蒿也。兔食之、壽八百歲。

部・劃數
方部・三劃

『玉篇』古文字。註詳六畫。

部・劃數
方部・四劃

『廣韻』步光切『集韻』『韻會』蒲光切、𠀤音螃。『說文』溥也。从𠄞闕、方聲。○按𠄞卽上字、『說文』在上部、今倂入。經典相承作。詳旁字註。

部・劃數
方部・五劃

『玉篇』古文字。註詳六畫。

部・劃數
宀部・四劃

『玉篇』古文字。註詳方部六畫。

音訓

(1-1) ハウ(漢) バウ(呉) 〈『廣韻・下平聲・唐・傍』步光切〉[páng]{pong4}
(1-2) ハウ(漢、呉) 〈平聲唐韻; 同上?〉
(2) ハウ(漢、呉) 〈『韻會』『正韻』蒲浪切、音傍、去聲宕韻〉[bàng]{bong6}
(1-1) かたはら。つくり(偏旁)。たすける。
(1-2) ひろがる。あまねし(旁求)。
(2) よる。そふ。

藤堂は音義(1-1)(1-2)を分け、(1-2)の官話發音をpāngとするが、管見の限り他の資料に見えず。

旁午は音(2)に讀み、縱橫に行き交ふこと、人の往來の激しいこと、また物事の込み入つて煩雜なことをいふ。

解字

白川

形聲。聲符は

『説文解字』にひろきなりとする。重文三を錄するが、本來の字形と思はれるものがない。

字は恐らく凡と方とに從ひ、凡は風の從ふところで汎の意。方に四方、「あまねし」の意がある。故に旁及、旁達の意となり、旁出、旁側の意となり、偏頗の意となる。

はその限定義を示す字。

藤堂

(二つ)と印(左右に分かれる)と音符の會意兼形聲。方は、左右に柄の張り出た耜を描いた象形字で、兩脇に出る意を含む。旁は、中心から左右上下に分かれて張り出ることを示す。

落合

會意。首枷をつけた人であるに更に首枷の形を增し加へたもの。方亦聲。捕虜の狀態を表した字と思はれるが、甲骨文には原義での用例がなく、成り立ちは確實ではない。上下を逆にした字形や首枷の形を凡やなどに誤つた字形もある。

甲骨文での用義は次のとほり。

  1. 地名またはその長。殷に敵對して旁方と呼ばれることもある。《屯南》918庚辰卜王貞、朕德旁。六月。
  2. 祭祀名。《屯南》148庚寅卜、旁嶽、雨。

金文には凡に從ふ形が繼承されてをり、篆文以降にのやうな形になつた。

また後代には方に通じて用ゐられ、轉じて「あまねし」や「かたはら」の意味となつた。

漢字多功能字庫

甲骨文はに從ふ。一説に方と凡の省に從ふ(參『字源』)。造字本義不明。西周金文は方と凡に從ふ。方の上部にあるいは一橫劃を飾筆に加へる。また凡と方の一橫劃を共用する字形がある。戰國文字の凡はあるいはに誤る。『説文解字』の小篆の字形は更に變形が進んだもので、隸書の字形が後世の字形のもととなつた。

甲骨文での用義は次のとほり。

金文での用義は次のとほり。

簡帛材料での用義は次のとほり。

傳世文獻ではまた廣泛(廣範圍)、普遍を表す。

また、外の、別の、を表す。

また將近(數量が近いこと、近附くこと)を表す。

また偏頗、不正を表す。

屬性

U+65C1
JIS: 1-58-53
𣃙
U+230D9
U+3AC4
𣃟
U+230DF
U+3751

關聯字

旁に從ふ字を、漢字私註部別一覽・方部・旁枝に蒐める。