方 - 漢字私註

説文解字

方

併船也。象兩舟省、緫頭形。凡方之屬皆从方。府良切。

方部
汸

方或从

別條に揭出する。

説文解字注

方

倂船也。『周南』不可方思。『邶風』方之舟之。『釋言』及《毛傳》皆曰、方、泭也。今『爾雅』改方爲舫。非其義矣。倂船者、並兩船爲一。『釋水』曰、大夫方舟。謂倂兩船也。泭者、編木以爲渡。與倂船異事。何以毛公釋方、不曰倂船而曰泭也。曰倂船、編木其用略同。故俱得名方。方舟爲大夫之禮。『詩』所言不必大夫。則釋以泭可矣。若許說字。則見下从舟省而上有竝頭之象。故知倂船爲本義。編木爲引伸之義。又引伸之爲比方。子貢方人是也。『秦風』西夫之防。毛曰、防、比也。謂防卽方之假借也。又引伸之爲方圓、爲方正、爲方向。又假借爲。《丄部》曰、旁、溥也。凡今文『尙書』作旁者、古文『尙書』作方。爲大也。『生民』實方實苞。毛曰、方、極畝也。極畝、大之意也。又假借爲。『召南』維鳩方之。毛曰、方之、方有之也。方有之猶甫有之也。

象兩舟省總頭形。兩當作㒳。下象兩舟倂爲一。上象兩船頭總於一處也。府良切。十部。『通俗文』連舟曰舫。與許說字不同。葢方正字俗用舫。

凡方之屬皆从方。

汸

方或从水。

康煕字典

部・劃數
部首
古文
𤙗

『唐韻』府良切『集韻』『韻會』分房切、𠀤音芳。『說文』倂船也。象兩舟省總頭形。或从水作。『詩・周南』江之永矣、不可方思。《傳》方、泭也。『釋文』小筏曰泭。『爾雅・釋水』大夫方舟。《註》倂兩船。『史記・酈食其傳』方船而下。《註》謂𠀤船也。

又『易・坤卦』六二直方大。《註》地體安靜、是其方也。『周禮・冬官考工記』圜者中規、方者中矩。『淮南子・天文訓』天道曰圓、地道曰方。方者主幽、圓者主明。

又『易・觀卦』君子以省方觀民設敎。《疏》省視萬方。『詩・大雅』監觀四方。『周禮・天官・冢宰』辨方正位。《註》別四方。『釋文』視日景、以別東西南北四方、使有分別也。『禮・內則』敎之數與方名。《註》方名、如東西也。

又『易・未濟』君子以愼辨物居方。《疏》各居其方、皆得安其所。『詩・大雅』萬邦之方、下民之王。《箋》方、猶嚮也。《疏》諸言方者、皆謂居在他所、人嚮望之、故云、方、猶嚮也。

又道也。『易・恆卦』君子以立不易方。《註》方、猶道也。『禮・樂記』樂行而民鄕方。《註》方、猶道也。

又『易・復卦』后不省方。《註》方、猶事。《疏》不省視其方事也。

又術也、法也。『易・繫辭』方以類聚。《疏》方謂法術性行。『左傳・昭二十九年』官修其方。《註》方、法術。

又放也。『書・堯典』方命圯族。『釋文』方、放也。

又有之也。『詩・召南』維鵲有巢、維鳩方之。《傳》方、有之也。

又今也。『詩・秦風』方何爲期。《箋》方今以何時爲還期。『莊子・天地篇』方且本身而異形。《註》凡言方且者、言方將有所爲也。

又穀始生未實也。『詩・小雅』旣方旣皁。《箋》方、房也。謂孚甲始生而未合時也。

又倂也。『儀禮・鄕射禮』不方足。《註》方、猶倂也。

又旁出也。『儀禮・大射禮』左右曰方。《註》方、旁出也。

又板也。『儀禮・聘禮』不及百名、書於方。《註》方、板也。『禮・中庸』布在方策。《註》方、板也。策、𥳑也。

又常也。『禮・檀弓』左右就養無方。《註》方、猶常也。

又文也。『禮・樂記』變成方謂之音。《註》方、猶文章也。

又義之宜也。『左傳・隱三年』臣聞愛子、敎之以義方。又『閔二年』授方任能。《註》方百事之宜也。

又比方也。『論語』子貢方人。『何晏註』比方人也。

又『博雅』方、大也、正也。

又祭名。『詩・小雅』以社以方。《傳》迎四方氣於郊也。

又地名。『詩・小雅』侵鎬及方。《註》鎬、方、皆北方地名。

又姓。『詩・小雅』方叔涖止。《傳》方叔、卿士也。

又官名。『周禮・夏官・司馬』職方氏、土方氏、懷方氏、合方氏、訓方氏、形方氏。『前漢・朱雲傳註』尚方、少府之屬官也、作供御器物。

又醫方。『史記・扁鵲傳』乃悉取其禁方書、盡與扁鵲。『前漢・郊祀志』少君者、故深澤侯人主方。《註》侯家人主方藥也。

又『廣韻』『集韻』𠀤符方切、音房。方與、縣名。『前漢・高帝紀』沛公攻胡陵方與。《註》音房預、屬山陽郡。

又『集韻』蒲光切、音旁。彷或作方。『前漢・揚雄傳』方皇於西淸。《註》方皇、猶彷徨也。

又文紡切。蝄或作方。『周禮・夏官・方相氏』敺方良。《註》方良、罔兩也。木石之怪夔罔兩。『張衡・東京賦』腦方良。《註》方良、草澤之神也。○按『說文』作蝄蜽。

又『集韻』甫兩切、音倣。效也。

又『韻補』叶膚容切『道藏・左夫人歌』騰躍雲景轅、浮觀霞上空。霄軿縱橫舞、紫蓋記靈方。

部・劃數
牛部六劃

『字彙補』古字。註詳部首。

音訓

ハウ(漢、呉) 〈『廣韻・下平聲・陽・方』府良切〉[fāng]{fong1}
かた。みち。ならぶ。ならべる。くらべる(比方)。あたる。まさに。

解字

白川

象形。架屍の象。橫に渡した木に、人を架した形。これを境界の呪禁とするので、外方、邊疆の意となる。

『説文解字』に倂せたる船なり。兩舟の、省きて頭をむすびたる形に象る。と舟の意とし、重文としてを錄する。

卜辭に外邦を土方、馬方のやうにいひ、遠方、方位、外邦の意となる。

放逐の儀禮は方(架屍)をつ形。、徵(懲)、徼など、みな人を毆つ呪儀を示す字。

藤堂

象形。左右に柄の張り出した耜を描いたもので、⇄のやうに左右に直線狀に伸びる意を含み、東↔西、南↔北のやうな方向の意となる。また、方向や筋道のことから、方法の意を生じた。

落合

象形。字源について、刀を懸けた形や耜の象形などの説もあるが、甲骨文の字形はや万に近く、人の側面形と考へられる。また表現としては人の正面形に首枷をつけた央に近いので、方は首枷をつけた人の側面形と推定される。

甲骨文では地方や敵對勢力の意味で用ゐられるが、その理由は不明。あるいは遠方からの捕虜が原義か。

甲骨文での用義は次のとほり。

  1. 支配領域。地方の支配地。方角を附して東方や西方などとも呼ばれる。《屯南》2377西方受年。
  2. 方角を掌る神格。方角を附して東方や西方などとも呼ばれる。總稱は四方。《合集》30173甲子卜、其求雨于東方。
  3. 殷王に敵對する勢力の汎稱。個別に地名を附けて𢀛方、基方、盂方のやうに呼稱する用法もある。
    • 《合集》6689丁巳卜、今者、方其大出。四月。
    • 《天理大學附屬天理參考館 甲骨文字》168貞、勿呼見𢀛方。
  4. 祭祀名。この意味では、後代には繁文の祊が使用された。《合集》1264求、祊于大乙。
方伯
敵對勢力の首長。《合集》28086壬戌卜、王其尋二方伯。

漢字多功能字庫

甲骨文、金文の構形は大體同じで、に從ふ。古漢字は□で方圓の方(四角形、方形)を表すが、□は古文字において容易にの輪郭や圓の初文と混じるため、ごく早期から方を假借して方圓の方を表す。方と(芒)の造字の原理は一致してをり、いづれも一で刀の鋒芒(切つ先)を指し示し、且つ二字の古音は相近く、二字が同源である證に足る。後に古人は鋒芒の芒の表意初文を借用して方圓の方を表すやうになり、方字を分化した。

方字の構形の本義について他の説もある。葉玉森は架上に懸ける形に象るとする。朱芳圃は、方は枋の初文で、一で指し示す場所は刀の持つ所(?)。按ずるに一の指し示すのは刀身で、柄ではない。諸説は方の構形に合はない。徐中舒に至つては、方は耒の形に象るとする。何琳儀は、刀で物を分けることを表すとする。

甲骨文での用義は次のとほり。

金文での用義は次のとほり。

秦簡では古代に書寫に用ゐた木板を表す。

按ずるに『説文解字』の述べるところは、方字の本義に非ず。

屬性

U+65B9
JIS: 1-42-93
當用漢字・常用漢字
𤙗
U+24657

關聯字

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