甲 - 漢字私註

説文解字

甲
東方之孟、陽气萌動、从木戴孚甲之象。一曰人頭宐爲甲、甲象人頭。凡甲之屬皆从甲。
十四甲部
𠇚
古文甲、始於十、見於千、成於木之象。

康煕字典

部・劃數
田部(零劃)
古文
𠇚
𡴌

『唐韻』『集韻』『韻會』古狎切『正韻』古洽切、𠀤音夾。草木初生之莩子也。『易・解卦』雷雨作而百果草木皆甲坼。《疏》百果草木皆莩甲開坼、莫不解散也。『後漢・章帝紀』方春生養、萬物孚甲。《註》葉裏白皮也。

又十干之首。『爾雅・釋天』歲在甲曰閼逢、月在甲曰畢。『易・蠱卦』先甲三日、後甲三日。《疏》甲者、造作新令之日。『書・益稷』娶于塗山、辛壬癸甲。『禮・郊特牲』社日用甲、用日之始也。

又凡物首出羣類曰甲。『戰國策』臣萬乗之魏、而甲秦楚。『釋文』甲、一作申、言居二國之上也。『張衡・西京賦』北闕甲第。《註》第、館也。甲、言第一也。『蘇軾・表忠觀𥓓』吳越地方千里、象犀珠玉之富甲於天下。

又始也。『書・多方』因甲于內亂。《註》甲、始也。

又科甲。『正字通』漢有甲乙丙科、平帝時歲課甲科四十人爲郞、乙科二十人爲太子舍人、丙科四十人補文學掌故。順帝陽嘉元年、增甲乙科員。

又『爾雅・釋言』甲、狎也。《註》謂習狎。『詩・衞風』雖則佩韘、能不我甲。『毛傳』甲、狎也。『朱註』甲、長也。言才能不足以長於我也。

又兵甲。『易・說卦』離爲甲冑。《疏》爲甲冑、取其剛在外也。『左傳・襄三年』組甲三百。《註》組甲、漆甲成組文。『禮・王制』命大司徒敎士以車甲。『周禮・冬官考工記』函人爲甲、犀甲七屬、兕甲六屬、合甲五屬。

又『揚子・方言』汗襦、自關而東謂之甲𥜗。『正字通』衣亦曰甲、元世祖制一衣、前有裳無衽、後長倍於前、亦無領袖、綴以雨襻、名比甲、以便弓馬。

又爪甲。『管子・四時篇』隂生金與甲。《註》隂氣凝結堅實、故生金爲爪甲也。

又甲帳、殿也。

又甲庫。『正字通』唐制、甲庫、藏奏鈔之地也。程大昌曰、唐中書門下吏部、各有甲曆、凡三庫以若干人爲一甲、在選部則名團甲。貞元四年、吏部奏三庫敕甲、又經失墜、乃至制敕旨甲皆被攺毀。據此則甲非甲乙之甲。龎元英文昌雜錄謂甲庫如令甲令丙、誤也。宋時有敕甲旨甲之稱、猶今言底言案也。遼史有架閣庫管句、元有左右部架閣庫、卽唐之甲庫也。

又『淮南子・覽冥訓』質壯輕足者爲甲卒。《註》甲鋩也。

又令甲、法令首章也。亦曰甲令。『戰國策』臣敬循衣服以待令甲。『史記・惠景閒侯年表』長沙王者至令甲、稱其忠焉。《註》瓚曰、漢以芮忠故特王之。以非制、故特著令。漢時決事、集爲令甲三百餘篇。如淳曰、令有先後、故有令甲、令乙、令丙。師古曰、若今第一、第二篇。『後漢・皇后紀』向使因設外戚之禁、編著甲令。

又官名。『周禮・夏官』司甲。《疏》司甲、兵戈盾官之長者。

又保甲。『正字通』編籍民戸、彼此詰察、防容隱姦宄也。又宋元豐、以諸路義勇攺爲保甲。紹興閒詔淮漢閒、取主戸之雙丁、十戸爲甲、五甲爲團、團有長。乾道閒、漕臣馮忠嘉言敎閱保甲、皆義勇民兵也。

又國名。『春秋・宣十六年』晉人滅赤狄甲氏及留吁。《註》甲氏留吁、赤狄別種。『傳・昭十六年』徐子及郯人莒人會齊侯盟于蒲隧、賂以甲父之鼎。《註》甲父、古國名。高平昌邑縣東南有甲父亭。

又姓。『莊子・庚桑楚』昭景也、甲氏也。『釋文』一說昭景甲三者、皆楚同宗也。昭景甲、三姓雖異、論本則同也。

又赤甲、山名。《杜甫詩》卜居赤甲遷居新。《註》白鹽、赤甲、皆峽口大山。赤甲山高、不生草木、上皆赤色、望之如人袒胛、在夔州。

又蟲介曰甲。

又鳥名。『博雅』定甲鴠也。

又『韻補』叶訖立切、音急。『揚雄・長楊賦』今樂遠出以露威靈、數動搖以疲車甲。叶上德。

又叶吉協切、音頰。『楚辭・九歌』操吳戈兮被犀甲、車錯轂兮短兵接。

部・劃數
人部五劃

『說文』古文字。註詳田部一畫。

部・劃數
屮部五劃

『字彙補』古文字。註見田部一畫。

音訓

カフ(漢) 〈『廣韻・入聲・狎・甲』古狎切〉
カン(慣)
きのえ。よろひ(甲冑)。かぶと。なにがし(某甲)。

解字

白川

象形。卜文、金文に十字形に作るものがあり、もと龜甲のけてゐる形に象るものであらう。

説文解字に五行説を以て解するが、小篆の字形によつて説くもので、字の初形に合はない。また一説に甲は人頭に象る、また古文の字形について十に始まり、千にあらはれ、木に成るの象とする。

しかし、卜文、金文の字形よりいへば、龜版の中央を走る千里路と、これに交叉する橫の縫線を取るもので、まれに田字形に作るものがあるのは、龜版の全形を加へたものであらう。すなはちその甲羅の形。それより、甲冑、甲衣の意となる。

十干においてその首にあり、五行では甲乙は木、甲はすなはち「木の兄」といふ。は獸骨の象。十干は對待五組で構成され、甲乙は龜甲、獸骨を組んだものと見られる。

藤堂

もと鱗を描いた象形字。

金文から後は、種を取り卷いた堅い殼を描いた象形字。被せる意を含む。

落合

指示。縱線と橫線を交叉させた形。仰韶文化の陶文に既に同形が見える。甲骨文では殆どが十干の用法。

甲骨文での用義は次のとほり。

  1. 十干の一番目。
  2. 地名またはその長。《英藏》2283…王其呼甲尹伐、衞于…。

字形は金文で周りを圍つた形が作られ、これが後代に普及した。

漢字多功能字庫

甲骨文はに從ふ。十と外枠は連接しない。于省吾は人が頭に兜を戴く形に象るとする。商代の[耒耒]簋の氏族徽號に證據が得られる。その字形は、武士が右手に戈を執り、左手に盾を執り、頭に兜を戴く形に象る。一説に、甲字は四つの甲片で、軍人が身に著け身を護る甲を代表してゐるといふ(潘慧如、康寶文)。

金文では鎧を表す。杜虎符興士被甲

金文から戰國晩期に至る間に縱劃が引き伸ばされ、甲の形に作る。

甲骨文、金文では十干名に用ゐる。甲骨文では囗と十に從ふ形を讀みて「上甲」となし、これは殷の先公の名。金文では廟號に用ゐる。殷では先人の死後、祭日の日の十干を以て廟號となす。乍父甲鼎乍(作)父甲尊彝

屬性

U+7532
JIS: 1-25-35
當用漢字・常用漢字
𠇚
U+201DA
𡴌
U+21D0C

関聯字

甲に從ふ字

甲聲の字