黽 - 漢字私註

説文解字

𪓑

鼃𪓑也。从、象形。𪓑頭與它頭同。臣鉉等曰「色、其腹也。」凡𪓑之屬皆从𪓑。莫杏切。

十三黽部
𪓝

籒文𪓑。

説文解字注

𪓑

鼃黽也。周禮〔秋官〕蟈氏』「掌去鼃黽」。鄭司農云、蟈、蝦蟇也。『〔禮記〕月令』曰「螻蟈鳴」。鼃黽、蝦蟇屬。書或爲掌去蝦蟇。玄謂蟈、今御所食蛙也。齊魯之閒謂鼃爲蟈。黽、耿黽也。蟈與耿黽尢怒鳴、爲𦕾人耳、故去之。按蛙卽字。依大鄭說則鼃黽二字爲一物。依後鄭說則鼃卽蟈、爲一物。黽乃耿黽、爲一物。依許黽下曰「鼃黽也」。似同大鄭說。然有當辯者。許果合二字爲一物。則黽篆下當云「鼃黽、蝦蟆也」、鼃下云「鼃黽也」。乃合全書之例。而蝦蟆篆居《虫部》。此則單舉鼃篆、釋曰「蝦蟆」、黽篆下則曰「鼃黽也」。是許意鼃黽爲一物。鼃爲一物。凡兩字爲名一字與他物同者、不可與他物牽混。知鼃黽非鼃也。許之鼃黽卽鄭之耿黽。鼃古音圭、與耿雙聲、故得爲一字。絫𧦝曰、鼃黽、耿黽。單𧦝曰黽。『爾雅〔釋魚〕』「鼃𪓰、蟾蠩、在水者黽」。是則詹諸之類、而以在水中爲別也。許鄭之單言鼃。卽『本艸』所謂鼃一名長股。陶云俗名土鴨。南人名蛤子善鳴者。寇宗奭曰、其色靑、腹細、後腳長、善躍、大其聲曰蛙、小其聲曰蛤。此鼃與鼃黽之別。皆在水中而善鳴。故『周禮』設官去之。黽之叚借爲黽勉。

从它、象形。謂从它象其頭。下象其大腹也。莫杏切。古音在十部。讀如芒。

𪓑頭與它頭同。言頭而餘爲腹可知矣。黽本無尾。故風俗通辯蝦蟇掉尾肅肅乃夏馬之字誤。

𪓑之屬皆从𪓑。

𪓝

籒文黽。古文衹象其頭腹。籒文又象其長足善跳。

康煕字典

部・劃數
部首

『唐韻』莫杏切、音猛。『說文』鼃黽也。『爾雅・釋魚』鼁𪓰蟾諸、在水者黽。《疏》鼁𪓰、一名蟾諸、似蝦蟆、居陸地、其居水者名黽。一名耿黽。一名土鴨。狀似靑蛙、而腹大。陶註【本草】云、大而靑脊者、俗名土鴨。其鳴甚壯、卽此黽也。『埤雅』黽善怒、故音猛。

又竹名。求黽。『管子・地員篇』在丘在山、皆宜竹箭求黽猶檀。《註》求黽、亦竹類也。

又姓。漢黽初宮。見『印藪』。

又『廣韻』武盡切『集韻』『正韻』弭盡切、𠀤音泯。勉也。『詩緝』嚴氏曰、力所不堪、心所不欲、而勉强爲之曰黽。『孫季昭示見編』黽、蛙屬。蛙黽之行、勉强自力、故曰黽勉。如猶之爲獸、其行趦趄、故曰猶豫。

又『玉篇』眉耿切『廣韻』武幸切『集韻』『韻會』母耿切、𠀤音鼆。義同。

又『集韻』『類篇』𠀤眉耕切、音盲。地名。『史記・春申君傳』秦踰黽隘之塞而攻楚。『正義曰』黽隘之塞在申州。

又『廣韻』『集韻』彌兗切『正韻』美辯切、𠀤音緬。『廣韻』黽池、縣名。『前漢・地理志』弘農郡有黽池縣。又『高帝紀』復黽池。『廣韻』黽池、亦音泯。

又『韻補』叶名舌切、音蔑。『後漢・桓帝時謠曰』舉秀才、不知書。舉孝廉、父別居。寒素淸白濁如泥、高第良將怯如黽。『譚苑醍醐云』泥音涅。或音匿。黽音蔑。或音密。【晉書】作怯如雞、蓋不得其音而改之。按【論語】涅而不緇、【楚辭】及【史記・屈原傳】作泥而不滓。【索隱】曰、泥音涅、據此知泥有涅音、則桓帝時謠黽讀爲蔑矣。

『說文』从它、象形、黽頭與它頭同。《徐鉉曰》象其腹也。『六書正譌』鼃本義借爲黽勉字。別作僶勔。𠀤非。

部・劃數
黽部(零劃)

『正字通』俗字。又作𪓙、亦非。

部・劃數
黽部・四劃

『字彙補』籀文字。

部・劃數
网部・八劃

『篇海類編』俗字。

異體字

或體。

或體。

或體。籀文の隸定形の一。

或體。『廣韻』に俗字とする。

音訓義

マウ(漢) ミャウ(呉) バウ(慣)⦅一⦆
ビン(漢) ミン(呉)⦅二⦆
ベン(漢) メン(呉)⦅三⦆
マウ(推)⦅四⦆
かへる⦅一⦆
あをがへる⦅一⦆
つとめる⦅二⦆
官話
měng⦅一⦆
mĭn⦅二⦆
miăn⦅三⦆
粤語
maang5⦅一⦆
man5⦅四⦆
min5⦅三⦆

⦅一⦆

反切
廣韻・上聲』武幸切
集韻・上聲下耿第三十九』母耿切
『五音集韻・上聲卷第九・梗第三・明二猛』莫杏切
聲母
明(重脣音・次濁)
等呼
官話
měng
粤語
maang5
日本語音
マウ(漢)
ミャウ(呉)
バウ(慣)
かへる
あをがへる

⦅二⦆

反切
廣韻・上聲・軫・泯』武盡切
集韻・上聲上・準第十七・泯』彌盡切
『五音集韻・上聲卷第八・軫第一・明四泯』武盡切
聲母
明(重脣音・次濁)
等呼
官話
mĭn
粤語
man5
日本語音
ビン(漢)
ミン(呉)
つとめる
『集韻』『爾雅』勉也。
地名。『廣韻』黽池縣、在河南府。

⦅三⦆

反切
廣韻・上聲・獮・緬』彌兖切
集韻・上聲下・𤣗第二十八・緬』彌兗切
『五音集韻・上聲卷第八・獮第十一・明四緬』彌兖切
聲母
明(重脣音・次濁)
等呼
官話
miăn
粤語
min5
日本語音
ベン(漢)
メン(呉)
地名。『廣韻』黽池、縣名、在河南府。

⦅四⦆

反切
集韻・平聲四・庚第十二・盲』眉耕切
『五音集韻・下平聲卷第五・庚第三・明二甍』莫耕切
聲母
明(重脣音・次濁)
等呼
日本語音
マウ(推)
『集韻』地名在秦。

解字

白川

象形。かへるの形。

『説文解字』に鼃(蛙)黽なり。它(蛇)に從ふ。象形。黽頭と它頭と同じ。とし、籀文一を錄す。

爾雅・釋魚』に蟾諸、在水者黽。(蟾諸の水に在る者は黽なり)といふ。

また忞と通用する。

藤堂

象形。頭の大きい蛙の姿を描いたもの。

落合

甲骨文は、蛙の象形と言はれ、上下に突き出た四本の線が足に當たる。

【補註】落合が黽の甲骨文として擧げる字形の多くを、漢字多功能字庫は蛛の甲骨文として擧げる。

甲骨文での用義は次のとほり。

  1. 吉凶を表す語。恐らく凶の意。《花東》288・末尾驗辭乙未卜子、其往于⿰阝心、獲、不黽。用、獲三鹿。
  2. 祭祀名。《合集》451貞、其用竹黽羌、叀酒彡。用。
不⿱午丵黽
兆辭の一種。恐らく卜兆出現時に音がしなかつたこと。略して不⿱午丵とも言ふ。

また形の類似する甲骨文があるが、用法が異なつてをり、別字かも知れない。甲骨文では祭祀對象を表す。《合集》33304癸酉卜、求禾于黽。

後代には水棲動物に關する字の要素として使用された。

漢語多功能字庫

甲骨文は獨體の象形字で、蛙類の動物に象る。との區別は尾の無いところにあり、鼄(蜘蛛)との區別は前肢をの形に作り、且つ身中に橫劃の無い(一説に橫劃は蛛絲を代表する)ところにある。早期金文は甲骨文の形を承け、西周晩期〜戰國以後、訛してと二に從ふ形に作る。

【補註】落合は、漢字多功能字庫が蛛(鼄)とする甲骨文を、黽とする。

用例については、卜辭はみな殘(不完全)で、用義不明(姚孝遂)。金文では族徽に用ゐ、あるいは地名に用ゐ(見: 師同鼎)、あるいは箭名に用ゐる(見: 鄂君啟車節)。

『爾雅・釋魚』鼁𪓰、蟾諸。在水者黽。郭璞注「「耿黽也、似靑蛙、大腹。」『周禮・秋官・蟈氏』蟈氏掌去鼃黽。鄭玄注齊魯之間謂鼃為蟈。黽、耿黽也。

『説文解字』鼃𪓑也。(後略)

屬性

U+9EFD
JIS: 1-83-70
𪓕
U+2A4D5
U+9EFE
𦋍
U+262CD
𪓑
U+2A4D1
𪓙
U+2A4D9
𪓝
U+2A4DD
U+3AE3

關聯字

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