蔡 - 漢字私註

説文解字

蔡

艸也。从聲。蒼大切。

艸部

説文解字注

蔡

艸丯也。讀若介。丯字本無、今補。《四篇》曰、丯、艸蔡也。此曰、蔡、艸丯也。是爲轉注。艸生之散亂也。丯蔡曡韵。猶𦱊𦺝。此無丯字。則蔡當爲艸名。不廁此處矣。

从艸祭聲。蒼大切。十五部。

康煕字典

部・劃數
艸部・十一劃
古文
𣞖

『唐韻』倉大切『集韻』『類篇』七蓋切、𠀤音䌨。音1『說文』草也。『玉篇』草芥也。草際也。

又『論語』臧文仲居蔡。《何晏註》蔡、國君之守龜、出蔡地、因以爲名焉。

又山名。『書・禹貢』蔡蒙旅平。《疏》蔡、山名。

又『禹貢』二百里蔡。《傳》蔡、法也。法三百里而差𥳑。

又國名。『書・蔡仲之命疏』成王命蔡叔之子踐諸侯之位、作蔡仲之命。

又姓。『史記』蔡澤、古作祭、『左傳』祭仲、『國語』祭公謀父、『後漢書』祭遵、俱作蔡。

又『集韻』七曷切、音攃。音3『前漢・李廣利傳』昧蔡爲宛王。

又桑割切、音薩。音2放也。『左傳・昭元年』周公殺管叔而蔡蔡叔。『韻會』本作𥻦、言放之若散米。今作蔡。

又『韻補』叶子例切、音祭。『王褒・九懷』水躍兮余旌、繼以兮微蔡。雲旗兮電騖、倏忽兮容裔。

部・劃數
木部・十五劃

『玉篇』古文字。註見艸部十一畫。

廣韻

卷・韻・小韻
去聲
反切
倉大切音1

龜也。

亦國名。

又姓。出濟陽。周蔡叔之後也。

倉大切。三。

卷・韻・小韻
去聲
反切
倉大切

古文。

集韻

卷・韻・小韻
去聲上夳第十四
反切
七蓋切音1

『說文』艸也。

一曰國名。

亦姓。

古作𣞖。

文七。

卷・韻・小韻
入聲上・曷第十二・𨃛
反切
桑葛切音2

『說文』䊝𥻦散之也。一曰放也。

或作蔡撒攃。通作殺。

卷・韻・小韻
入聲上・曷第十二・攃
反切
七曷切音3

昧蔡、宛酋名。

音訓義

サイ(漢)(呉)⦅一⦆
サツ⦅二⦆
サツ(推)⦅三⦆
官話
cài⦅一⦆
⦅二⦆
粤語
coi3⦅一⦆

⦅一⦆

反切
廣韻・去聲』倉大切廣韻1
集韻・去聲上夳第十四』七蓋切集韻1, 康煕1
『五音集韻・去聲卷第十・泰第十二・清・一蔡』倉大切
聲母
清母(齒頭音・次清)
官話
cài
粤語
coi3
日本語音
サイ(漢)(呉)
草。
占ひに用ゐる大きな龜。
周代の國名

⦅二⦆

反切
集韻・入聲上・曷第十二・𨃛』桑葛切集韻2
『五音集韻・入聲卷第十四・曷第七・心・一躠』桑割切
聲母
心母(齒頭音・全清)
官話
日本語音
サツ
はなつ。𥻦と通用。
ころす。殺と通用。

⦅三⦆

反切
集韻・入聲上・曷第十二・攃』七曷切集韻3, 康煕3
『五音集韻・入聲卷第十四・曷第七・清・一攃』七曷切
聲母
清母(齒頭音・次清)
日本語音
サツ(推)
昧蔡大宛の君主の名。

解字

白川

形聲。聲符は

『説文解字』に艸(おほき)なりとあり、いはゆる艸蔡、草の茂り亂れるさまをいふ。

左傳・昭元年』に周公殺管叔而蔡蔡叔(周公、管叔を殺し、蔡叔をころす)とあり、《注》に蔡は放つなりとあつて放竄の意とする。

蔡は金文に祟の形で記し、殺、㝮はその繁文と見てよい。

艸蔡の蔡は恐らく祭聲の字。殺、㝮の初形である祟と、字形が混じて一となつたものであらう。艸蔡と放竄の字義の間に関聯があるとは思はれない。

藤堂

と音符の形聲。

落合

落合は、漢語多功能字庫が蔡の甲骨文として擧げる字形を、祟として擧げる。

漢語多功能字庫

甲骨文、金文は、に從ふ。李裕民は、物を以て人の下肢を切断する形に象り、契、割に義が近いといふ。後起鳥篆文字は依然として大字あるいは切斷の痕跡の形を保留する。蔡は國名、姬姓。金文では蔡を契と通じ、契刻(ともに刻む意)を表す。中山王方壺明蔡之於壺而時觀焉は、「明刻之於壺而時觀焉」といふこと。

古く蔡と殺は、形と音が相近く、通用した。以下はいづれも蔡と殺が相通じ、減省(減らし省くこと)、放散と解く例である。

屬性

U+8521
JIS: 1-72-81
𣞖
U+23796