朝 - 漢字私註

説文解字

朝
旦也。从聲。陟遙切。
倝部

説文解字注

朝
旦也。者、朝也。以形聲會意分別。『〔詩〕庸風〔蝃蝀〕』崇朝其雨。《傳》云、崇、終也。從至食時爲終朝。此謂至食時乃終其朝。其實朝之義主謂日出地時也。『周禮〔春官〕』春見曰朝。《注》曰、朝猶朝也。欲其來之早。『毛詩』叚爲朝。『〔詩〕周南〔汝墳〕』惄如輖飢。《傳》云、輖、朝也。此謂叚借也。从倝舟聲。陟遙切。二部。按舟聲在三部。而與二部合音冣近。『毛詩』以周聲之調爲朝。則朝非不可讀如舟也。

康煕字典

部・劃數
月部・八劃
古文

『唐韻』『廣韻』『集韻』『類篇』『韻會』𠀤陟遙切、音昭。音1『說文』旦也。从倝舟聲。『爾雅・釋詁』朝、早也。『詩・鄘風』崇朝其雨。《傳》崇、終也。從旦至食時爲終朝。

又朝鮮、國名。

又姓。『姓氏急就篇』朝氏、蔡大夫朝吳聲子之後。唐日本人朝衡。漢鼂錯、亦作朝。

又『廣韻』直遙切『集韻』『韻會』『正韻』馳遙切、𠀤音潮。音2『爾雅・釋言』陪朝也。《註》臣見君曰朝。『書・舜典』羣后四朝。『周禮・春官・大宗伯』春見曰朝。《註》朝、猶早也。欲其來之早。『禮・曲禮』天子當宁而立、諸公東面、諸侯西面、曰朝。《疏》凡天子三朝。其一在路門內、謂之燕朝。其二是路門外之朝、謂之治朝。其三是臯門之內、庫門之外、謂之外朝。又『王制』天子無事、與諸侯相見曰朝。

又同類往見亦曰朝。『史記・司馬相如傳』臨邛令謬爲恭敬、日往朝相如。

又郡守聽事亦曰朝。『後漢・劉寵傳』山谷鄙生、未嘗識郡朝。

又『集韻』追輸切、音株。朝那、縣名。

又『韻補』叶陳如切。『急就章』向夷吾竺諫朝。『易林』赤帝懸車、廢職不朝。叔帶之災、居於氾廬。

又叶蚩於切。『王逸・九思』望舊邦兮路逶隨、憂心悄兮心勤渠。魂煢煢兮不遑寐、目眇眇兮寤終朝。

又叶張流切。『韓愈・祭𥡆員外文』罔有疑忌、惟其嬉遊。草木之春、鳥鳴之朝。

又叶株遇切。『前漢・敘傳』賈生矯矯、弱冠登朝。遭文叡聖、屢抗其疏。

又叶直照切。『陸雲・夏府君誄』旣𥡆其績、英風彌邵。天子有命、曾是在朝。頻繁帷幄、祇承皇耀。

又叶直祐切。『韋孟・在鄒詩』微微小子、旣耇且陋。豈不牽位、穢我王朝。

部・劃數
月部・十劃

『字彙』本字。○按『說文』从舟。變舟作月、非本字也。

部・劃數
舟部・十劃

『說文』本字。

音訓

⦅一⦆

反切
廣韻・下平聲』陟遥切康煕1
官話
zhāo
粤語
ziu1
日本語音
テウ(漢、呉)
あさ
あした
朝鮮は國名。

⦅二⦆

反切
廣韻・下平聲』直遥切康煕2
官話
cháo
粤語
ciu4
日本語音
テウ(漢)
天子が政務を執る所。朝廷。

解字

白川

の會意。艸は上下に分書、その艸間に日が現れ、右になほ月影の殘るさまで、早朝の意。

『説文解字』に《倝部》に收め、旦なり。倝(旗)に從ひ、舟聲。とするのは、篆文の字形によつて説くもので、字の初形ではない。

金文には右にに從ふ字形が多く、潮の干滿、すなはち潮汐による字形があり、その水の形が、のちと誤られたものであらう。

左も倝の形ではなく、は旗竿に旗印や吹き流しを添へた形で、朝とは關係がない。

殷には朝日の禮があり、そのとき重要な政務を決したので、朝政といひ、そのところを朝廷といふ。朝は朝夕の意のほかに、政務に關する語として用ゐる。

暮の初文であるも、上下の艸間に日の沈む形。

藤堂

金文は草との會意字で、草の間から太陽が昇り、潮が滿ちてくる時を示す。篆文は幹(旗が揚がるやうに日が昇る)(補註: の誤りか)と音符の形聲字で、東方から太陽の拔け出る朝。

落合

甲骨文は、(草)の間からが昇り、空にはまだが見えてゐる樣子を表す會意字。と良く似た成り立ちで、字義も共通してゐるので、殷代には同一字の異體であつたかもしれない。

甲骨文での用義は次のとほり。

  1. 明け方頃の時間帶。《合集》23148癸丑卜行貞、后祖乙歲、朝酒。茲用。
  2. 地名。《合集》33130貞、旬亡禍。在朝。

西周代には、月を川の形に替へた形となつてをり、字形としては𣶃に當たる。𣶃は潮の初文とする説が有力視されてをり、嚴密には假借した「あさ」の用法となる。

東周代には川の形をに替へた字形が出現した。舟は上古音で朝、潮にやや近く、章紐幽部、またはそれに近い發音と推定されてをり、聲符への置換と思はれる。(補註: 朝の上古音は端紐宵部、定紐宵部、端紐幽部、定紐幽部、來紐宵部、潮は定紐宵部、來紐宵部と推定。)この形が秦代に繼承されてをり、篆文では意符に日の出を表すを用ゐてゐる。

隸書で舟を月に替へた形が作られ、結果的に初出の字形が再現された。

漢字多功能字庫

甲骨文は二あるいは四つのに從ひ、あるいはと月に從ふ。日が草叢の中から昇り、月がまだ空に殘るさまに象り、早晨(朝)を表す。『説文解字』𦩻、旦也。(後略)

甲骨文では早晨を表し、また地名に用ゐる。『廣韻・宵韻』朝、早也。又旦至食時為終朝。『詩・蝃蝀』孔穎達疏朝者、早旦之名。

金文は、𠦝(二屮と日に從ひ、草の中から日の昇るさまを表す。)と、中に三點のある水流の形に從ふ。この水流は潮の初文で、潮の勢ひ良い形に象り、潮を表す。後に潮の初文が訛して月となつた。金文ではただ西周早期の周公東征鼎の廟字中の朝が月に從ふ例が見える。楚簡、小篆は訛しての形となる。西周晩期に𠦝は訛しての形となる。金文の𣶃、朝は、いづれも潮の古字。

金文では早上(朝)を表し、と相對する。

古く君王は早朝に政務を執つたので、「朝早」から引伸して「朝見」の意となる。『字彙』朝、晨朝也。人君視政、臣下覲君、均貴於早、聲轉為朝也。

金文での用義は次のとほり。

このほか、朝と鼂は同音で相通ず。睡虎地秦簡では鼂を借りて朝となす。『汗簡』は朝の古文を鼂に作る。『姓氏急就篇』漢鼂錯、亦作朝。

屬性

U+671D
JIS: 1-36-11
當用漢字・常用漢字
𣎍
U+2338D
𦩻
U+26A7B