差 - 漢字私註

説文解字

差

貳也。差不相值也。从𠂹徐鍇曰、左於事、是不當值也。初牙切、又楚佳切。

左部
差

籒文𢀩从

説文解字注

差

貣也。左不相値也。貣各本作。左各本作差。今正。貣者、𢘋之假借字。《心部》曰、𢘋、失當也。失當卽所謂不相值也。『〔爾雅〕釋言』曰、爽、差也、爽、忒也。𢘋與忒葢本一字。『尙書〔洪範〕』二衍忒、『〔史記〕宋世家』作貣。『易』四時不忒、京房作貣。管子全書皆以貣爲忒。貣與貳形易相誤。『〔禮記〕月令』宿離不貸。『釋文』貸、他得切。徐音二。無有差貸。『釋文』貸、音二。又他得反。『〔禮記〕緇衣』其儀不忒。『釋文』忒、他得反。又作貳、音二。『漢費鳳碑』貸與則德韵。婁氏釋作貳。皆貣之誤爲貳者也。貳與貣忒音旣脂之迥別。義則貳訓副也。副貳之解、何得同於差𢘋乎。『左氏傳〔僖十五年〕』其⺊貳圉。《杜注》貳、代也。按外傳作以代圉。謂用世次當立之圉。『左傳』作貳圉。謂副貳之圉。『〔禮記〕坊記・注』引之。此則當各依文爲釋。『杜注左』云貳、代也。似爲牽合。此云貣也者、用漢人常用字。故不作𢘋也。云左不相値也者、左之而不相當則𢀩矣。今俗語所謂左也。故其字从左从𠂹。𠂹者、乖也。

从左𠂹。『韵會』作𠂹省聲。疑是𠂹省聲之誤。初牙切。十七部。在支韵則楚宜切。在佳、卦韵則楚佳、楚懈切。『說文・竹部〔篸字條〕』曰篸差。《木部〔槮字條〕》曰槮差。《糸部〔縒字條〕》曰參縒。『〔詩・小雅〕吉日・傳』曰、差、擇也。其引伸之義也。

差

籒文𢀩从二。从二者、岐出乖異之意。

康煕字典

部・劃數
工部七劃
古文
𢀩

『唐韻』『集韻』『韻會』初牙切『正韻』初加切、𠀤音杈。『說文』貳也、不相値也。《徐鍇曰》左于事、是不當値也。『廣韻』舛也。『韻會』差錯之義。『書・呂𠛬』察辭于差。『前漢・東方朔傳』失之毫釐、差以千里。

又『爾雅・釋詁』擇也。『釋文』差音乂。『詩・小雅』旣差我馬。

又『廣韻』楚宜切『集韻』『韻會』叉宜切『正韻』叉茲切、𠀤音縒。『廣韻』次也、不齊等也。『後漢・荀爽傳』天子娶十二、諸侯以下各有等差。

又『玉篇』參差、不齊也。『韻會』參差、亂絲貌。參相參爲參、兩相參爲差。『詩・周南』參差荇菜。『風俗通』舜作簫韶九成、鳳凰來儀、其形參差、象鳳翼。

又『韻會』參差、洞簫也。『楚辭・九歌』吹參差兮誰思。

又『韻會』差池、燕飛也。『詩・邶風』燕燕于飛、差池其羽。

又『唐韻』楚佳切。『集韻』『韻會』『正韻』初佳切、𠀤音釵。『韻會』差使也。『唐宣宗詔』凡役事委令輪差。

又擇也。『廣韻』𥳑也。『詩・𨻰風』穀旦于差。『釋文』差、鄭初佳反。王音嗟。徐七何反。

又『廣韻』差殊、亦不齊。『禮・王制』庶人在官者、其祿以是爲差。『釋文』差、初佳反。徐、初宜反。

又僭差。『周禮・春官・大宗伯』以軍禮同邦國。《註》同謂威其不協僭差者。『釋文』差、初佳反。

又『韻會』夫差、吳王名。

又差分、算法。『周禮・地官・九數註』有差分、今有重差。

又『集韻』『韻會』『正韻』𠀤倉何切、音磋。『集韻』淅也。『禮・喪大記』御者差沐于堂上。《註》差、淅也。淅飯米取其潘爲沐也。

又『韻補』差、過也。『屈原・離騷』湯禹儼而祗敬兮、周論道而莫差。

又『韻會』景差、楚人名。

又『廣韻』『集韻』『韻會』『正韻』𠀤楚懈切、釵去聲。『廣韻』病除也。『集韻』瘉也。『魏志・張遼傳』疾小差。

又『韻會』差、較也。『左傳・宣十二年・註』拔旗投衡使不帆、風差輕。『釋文』差、初賣反。

又『集韻』楚嫁切、杈去聲。差異也。『韓愈・瀧吏詩』颶風有時作、掀簸眞差事。

又與通。『韻會』磋或作差。

又『集韻』古與嗟通。註詳口部十畫。

部・劃數
工部十二劃

『集韻』古作𢀩。註詳七畫。

音訓義

サ(漢) シャ(呉)⦅一⦆
サ(漢) シャ(呉)⦅二⦆
⦅三⦆
シ(漢)(呉)⦅四⦆
サイ⦅五⦆
サイ(漢) セ(呉) サ(慣)⦅六⦆
サイ(漢) セ(呉) サ(慣)⦅七⦆
シャ(推)⦅八⦆
たがふ。たがひ。えらぶ。やや。⦅一⦆
官話
chā⦅一⦆
chà⦅二⦆
⦅四⦆
chāi⦅五⦆⦅六⦆
chài⦅七⦆
粤語
caa1⦅一⦆
ci1⦅四⦆
caai1⦅五⦆
caai3⦅七⦆

⦅一⦆

反切
廣韻・下平聲』初牙切
集韻・平聲三麻第九』初加切
『五音集韻・中平聲卷第四・麻第十七・穿・二叉』初牙切
聲母
穿(正齒音・次清)
等呼
官話
chā
粤語
caa1
日本語音
サ(漢)
シャ(呉)
たがふ
たがひ
えらぶ
やや
違ひ。隔たり。差異。差別。
差し引き。差分。
違ふ。食ひ違ふ。隔たりがある。
えらぶ。
やや。些か。少しく。

⦅二⦆

反切
集韻・去聲下・禡第四十・瘥』楚嫁切
『五音集韻・去聲卷第十一・禡第十七・穿・二瘥』楚稼切
聲母
穿(正齒音・次清)
等呼
官話
chà
日本語音
サ(漢)
シャ(呉)
あやまつ
異也。(『集韻』)
過つ。間違ふ。(藤堂)
間違ひ。間違つてゐる。
缺ける。不足する。
低い。劣る。好くない。
補註
參照した資料では、現代の粤語には本音に該當する音はなく、缺ける意にもcaa1(⦅一⦆と同)に讀む。

⦅三⦆

反切
『集韻・平聲三・戈第八・蹉』倉何切
『五音集韻・中平聲卷第四・歌第十五・清・一蹉』七何切
聲母
清(齒頭音・次清)
等呼
日本語音
あやまつ
米をとぐ。
過つ。

⦅四⦆

反切
廣韻・上平聲』楚宜切
集韻・平聲一・支第五・差』叉宜切
『五音集韻・上平聲卷第一・脂第五・穿・二差』楚宜切
聲母
穿(正齒音・次清)
等呼
官話
粤語
ci1
日本語音
シ(漢)(呉)
次第、順序、等級、區別。差序cī xù差等cī děngなど。
順番に竝べる。等級を分ける。
不揃ひ。ちぐはぐ。參差シムシ差池シチなど。

⦅五⦆

反切
廣韻・上平聲・佳・釵』楚佳切
集韻・平聲二・佳第十三・釵』初佳切
『五音集韻・上平聲卷第二・皆第十一・穿・二釵』楚佳切
聲母
穿(正齒音・次清)
等呼
官話
chāi
粤語
caai1
日本語音
サイ
つかはす
えらぶ
遣はす。人を遣る。差遣する。
えらぶ。
補註
『廣韻』は本音について差殊。又不齊。⦅六⦆について𥳑也。とするが、『五音集韻』は本音に纏めて簡也。差殊也。又不齊。とする。

⦅六⦆

廣韻・上平聲・皆・差』楚皆切
集韻・平聲二・皆第十四・差』初皆切
聲母
穿(正齒音・次清)
等呼
官話
chāi
日本語音
サイ(漢)
セ(呉)
サ(慣)
つかはす
えらぶ
遣はす。人を遣る。差遣する。
えらぶ。
たがふ。『集韻』貳也。
補註
『五音集韻』は本音を採らず、⦅五⦆に纏めてゐる。

⦅七⦆

反切
廣韻・去聲・卦・差』楚懈切
集韻・去聲上・卦第十五・瘥』楚懈切
『五音集韻・去聲卷第十・怪第十三・穿・二差』楚懈切
聲母
穿(正齒音・次清)
等呼
官話
chài
粤語
caai3
日本語音
サイ(漢)
セ(呉)
サ(慣)
いえる
病氣が瘉える。瘥に同じ。

⦅八⦆

反切
集韻・平聲三麻第九𧪰』咨邪切
『五音集韻・中平聲卷第四・麻第十七・精・四嗟』子邪切
聲母
清(齒頭音・次清)
等呼
日本語音
シャ(推)
『集韻』に嗟を古く差に作るとする。

解字

金文の字形を見るに、に從ふ形に見える。聲。

白川

形聲。聲符は。金文の字形はと左、また禾とに從ふ二形に作り、禾(黍稷)を神にすすめて祭る意。左は亦聲と見てよい。羊牲を薦めることを羞といひ、差ものちに從ふ字形を用ゐるが、もとは黍稷を差める字であつた。

金文には佐の義に用ゐる。

神に差めるものであるから「えらぶ」意となり、また黍稷の類は長短のあるものであるから、參差の意となる。

『説文解字』にたがふなり。たがひて相ひはざるなり。とするが、差貳の意は最も後起の義。

藤堂

穗の形と音符の會意兼形聲。左はそばから左手で支へる意を含み、交叉の叉(ささへる)と同系。穗を交叉して支へると、上端は×型となり、揃はない。そのジグザグした姿を示す。

漢字多功能字庫

金文は、最初、と手に從ひ、手で麥をみ、麥粒の皮を取り去る形に象り、搓の初文(夏淥)。後に手の形の下にあるいはを加へての形となる。左は聲符。

金文での用義は次のとほり。

屬性

U+5DEE
JIS: 1-26-25
當用漢字・常用漢字
𢀩
U+22029

關聯字

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