汙 - 漢字私註

説文解字

汙

薉也。一曰小池爲汙。一曰涂也。从聲。烏故切。

十一水部

説文解字注

汙

薉也。《艸部》曰、者、蕪也。地云蕪薉、水云汙薉。皆謂其不潔淸也。此冡上濁水不流池類言之。大徐本移浼篆於汙篆前。不知下文㶄灒浼類列。略同『方言〔三〕』。廁於此、則非其次矣。

从水亏聲。烏故切。按當哀都切。五部。義與洿略同。

一曰小池爲汙。池之小者。汙池、見『孟子・滕文公』。

一曰涂也。與杅義略同。《木部》曰、杅、所以涂也。

康煕字典

部・劃數
水部・三劃
古文

『唐韻』屋孤切『集韻』『韻會』汪胡切、𠀤音烏。與洿同。『說文』濁水不流也。一曰窊下。『詩・小雅』田卒汙萊。《傳》下則汙、高則萊。《正義》汙者、池停水之名。【禮記】曰汙其宮而瀦焉是也。『左傳・隱三年』潢汙行潦之水。《疏》畜水謂之潢水、不流謂之汙。

又行濁亦曰汙。『賈誼・新書道術篇』放理潔靜謂之行、反行爲汙。『書・胤征』舊染汙俗。

又降也、殺也。『禮・檀弓』道隆則從而隆、道汙則從而汙。《註》有隆有殺、進退如禮。

又勞事亦曰汙。『左傳・昭元年』處不辟汙。『正義』言事之勞身、若穢之汙物。

又汙邪、下地田也。『史記・滑稽傳』甌窶滿溝、汙邪滿車。

又『唐韻』『集韻』『韻會』『正韻』𠀤烏故切、惡去聲。『說文』薉也。又染也。一曰去垢汙曰汙。『詩・周南』薄汙我私。《傳》汙、煩也。《箋》煩撋之用功深也。『字略』煩撋猶捼莎也。亦音烏。

又『唐韻』『集韻』『韻會』𠀤雲俱切、音于。水名。在鄴西南。『後漢・郡國志』鄴有汙水、有汙城。《註》『史記』項羽擊秦軍汙水上。

又曲也。『左傳・成十四年』春秋之稱、盡而不汙。《杜註》言盡其事實、無所汙曲。

又『集韻』『韻會』『正韻』𠀤烏瓜切、音窊。鑿地也。『禮・禮運』汙尊而抔飮。《註》汙尊、鑿地爲尊。

又『韻補』叶烏戈切、音窩。『楊方・合歡詩』爾根深且固、我根淺且汙。移植良無期、歎息將如何。

又叶文甫切、音武。『杜甫・雷詩』氣暍腸胃融、汗滋衣裳汙。吾衰尤拙計、失望築場圃。

部・劃數
水部・三劃

。『玉篇』从亐者古文、从于者今文。歐陽氏曰、汚汙本一字、今經傳皆以今文書之、蓋俗从𥳑。

又『集韻』邕俱切、音紆。深也。分汙汚爲二字。

廣韻

卷・韻・小韻
上平聲・虞・于
反切
羽俱切

水名。

又屋孤、烏故二切。

卷・韻・小韻
反切
哀都切

洿同。又一故切。

卷・韻・小韻
去聲
反切
烏路切

染也。『說文』穢也。

烏路切。又音烏。四。

異體字

或體。

音訓義

ヲ(漢) ウ(呉)⦅一⦆
ウ(漢)(呉)⦅二⦆
ヲ ウ⦅三⦆
ワ(漢) ヱ(呉)⦅四⦆
ウ(推)⦅五⦆
けがれる。けがす。けがれ。よごす。⦅一⦆⦅三⦆
たまりみづ。くぼみ。⦅一⦆⦅四⦆
あらふ⦅一⦆⦅三⦆
まげる⦅一⦆⦅三⦆
官話
⦅一⦆
⦅二⦆
⦅三⦆
⦅四⦆
粤語
wu1⦅一⦆
wu3⦅三⦆
waa1⦅四⦆

⦅一⦆

反切
廣韻・上平聲・模・烏』哀都切
集韻・平聲二・模第十一・烏』汪胡切
『五音集韻・上平聲卷第二・模第九・影・一烏』哀都切
聲母
影(喉音・全清)
等呼
官話
粤語
wu1
日本語音
ヲ(漢) ウ(呉)
けがれる
けがす
よごす
たまりみづ
くぼみ
あらふ
まげる
くぼみ、窪地、水溜りの意。
洿に同じ。洿は『説文解字』に濁水不流者。とする。(『廣韻』、『集韻』)
けがれる、けがす、よごす意。汚染、汚濁、汚辱、汚吏、貪汚など。(藤堂、KO字源、汉典、粵音資料集叢)
くだる、そぐ、おとろへる、衰微する意。汚隆など。(KO字源、汉典、『康煕字典』)
あらふ。よごれを取り去る。(藤堂)
まげる。節操を曲げる。(藤堂)

⦅二⦆

反切
廣韻・上平聲・虞・于』羽俱切
集韻・平聲二・虞第十・亐』雲俱切
『五音集韻・上平聲卷第二・虞第八・喻三于』羽俱切
聲母
喩(喉音・次濁)
等呼
官話
yū (藤堂、汉典に據る。古今文字集成には見えず。)
日本語音
ウ(漢)(呉)
曲がる。曲がりくねる。紆に同じ。(藤堂)
弯曲不正的。通紆。(汉典)
曲也。(『康煕字典』)
水名。『集韻』に在鄴西南。項羽擊秦軍汙水上。といふ。

⦅三⦆

反切
廣韻・去聲』烏路切
集韻・去聲上・莫第十一・汙』烏故切
『五音集韻・去聲卷第十・暮第九・影・一汙』烏洛切
聲母
影(喉音・全清)
等呼
官話
粤語
wu3
日本語音
ヲ ウ
けがれる
けがす
よごす
あらふ
まげる
薉也。(『説文解字』)
染也。(『廣韻』)
染也。一曰去垢汙曰汙。(『康煕字典』)
汚れを取り去る。(KO字源、汉典、粵音資料集叢)
意を曲げる。(KO字源)
曲就(粵音資料集叢引『粵語同音字典』)

⦅四⦆

反切
集韻・平聲三麻第九』烏𤓰切
『五音集韻・中平聲卷第四・麻第十七・影・二窊』烏𤓰切
聲母
影(喉音・全清)
等呼
二等
官話
粤語
waa1
日本語音
ワ(漢)
ヱ(呉)
地を掘り穴を空ける意。(藤堂、KO字源、粵音資料集叢、『集韻』)
窪地。水溜り。(藤堂)
汉典は、「污尊」(地を掘つて樽としたもの)、「污膺」(胸部が凹んでゐること)を例示するが、意義を述べず。

⦅五⦆

反切
『集韻・平聲二・虞第十・紆』邕俱切
『五音集韻・上平聲卷第二・虞第八・影・三紆』憶俱切
聲母
影(喉音・全清)
等呼
日本語音
ウ(推)
深也。(『集韻』)

補註

音義の使ひ分けが資料により異なる部分があるので、以下に大まかに纏める。

用義は次のやうに纏められる。

A
けがれる、けがす、よごす意。汚染、汚濁、汚辱、汚吏、貪汚など。
B1
窪地、水溜りの意。汚池、汚邪など。
B2
地を掘り穴を空ける意。
C1
意をまげる意。
C2
曲がる、曲がりくねる意。紆との通用義ともいふ。
D
汚れを取り去る意。
E
くだる、おとろへる、そぐ意。汚隆など。

各資料の音と用義の對應は以下の如し。

藤堂 KO字源 汉典 粵音資料集叢 康煕字典 廣韻 集韻 補足
⦅一⦆ A、B1、C1、D A、B1、E A、B1、D、E A、B1、C1 B1、E B1 B1 洿と同音
⦅二⦆ C2 (不見) C2 (不見) 水名、C2 水名 水名
⦅三⦆ (不見) C1、D D C2、D A、D A A
⦅四⦆ B1、B2 B2 「污尊」「污膺」 B2 B2 (不見) B2 と同音
⦅五⦆ (不見) (不見) (不見) (不見) (不見) (不見) 深也

解字

白川

形聲。聲。于は曲刀の象。ゆるくまがる、くぼむなどの意がある。汙はくぼんだ水溜りで、泥に汚れるところ。

『説文解字』にけがるなり。一に曰く、小池を汙と爲す。一に曰く、るなり。と三義を列する。薉は雜草の茂る意で、汚泥の汚が字の本義。

藤堂

と音符の會意兼形聲。于は、伸びる息が一印につかへて曲がつたさま。曲がりくぼむ意を含む。汙は、∪型にくぼんだ水溜り。その濁つた水のことから、汚れる意となつた。

漢字多功能字庫

に従ひ聲。異體は污に作り、また汚に作る。本義は、留まり溜まつてゆく流れざる濁水、小さい池。『説文解字』に一曰、小池爲汙。とある。

溜まり水は流動せず容易に濁り汚れるので、汙は引伸して汚れ、汚れてゐる物を表す。『説文解字』汙、薉也。

弄髒(汚毒)、汚染を表す。

汚辱、沾污(まみれる、染色、感染、汚染)を表す。

また污蔑(中傷する)、詆毀(誹謗する)を表す。

奸邪、不正を行ふことを表す。

貪汚、廉潔でないことを指す。

屬性

U+6C59
JIS: 1-86-49
JIS X 0212: 38-62
U+6C5A
JIS: 1-17-88
當用漢字・常用漢字
U+6C61