南 - 漢字私註

説文解字

南
艸木至南方、有枝任也。从𣎵𢆉聲。
𣎵部
𡴖
古文。

康煕字典

部・劃數
十部七劃
古文
𡴖
𡴟

『唐韻』『集韻』『韻會』『正韻』𠀤那含切、音男。『說文』草木至南方、有枝任也。《徐曰》南方主化育、故曰主枝任也。『前漢・律歷志』太陽者、南方。南、任也。陽氣任養物、於時爲夏。『白虎通』八月之律、謂之南呂何。南者、任也。言陽氣尚有任生薺麥也。

又樂名。『詩・小雅』以雅以南。『韻會』南亦雅樂名、猶九夏也、南夏皆文明之方、故名南。周南召南、亦樂名。

又姓。『韻會』魯大夫南遺。『宋書・律志』班左並馳、董南齊轡。

又雙南、金也。『范仲淹金在鎔賦』英華旣發、雙南之價彌高。鼓鑄未停、百鍊之功可待。

又『翻譯名義』合掌作禮曰和南。『淳化帖衞夫人書』衞和南。

又『韻補』叶尼心切、音寧。『詩・邶風』遠送于南。沈重讀。『陸雲・喜霽賦』朱明啓𠋫、凱風自南、復火正之舊司、黜后土于重隂。

部・劃數
屮部七劃

『說文』古文字。註見十部七畫。

部・劃數
屮部九劃

『集韻』古作𡴟。註詳十部七畫。

音訓

ナム(呉) 〈『廣韻・下平聲・覃・南』那含切〉
みなみ

解字

白川

釣鐘形式の樂器の象形。古く苗族が用ゐてゐた樂器で、懸繫してその鼓面を上から鼓つ。器には底がなく、頸部の四方に鐶耳があり、そこに紐を通して上に繫けると、南の字形となる。

殷の武丁期に貞卜のことを掌つた貞人に𬆩といふ人名があり、その字は南を鼓つ形に作る。

説文解字に艸木、南方に至りて、枝任あるなり。とし、任をしなやかの意に用ゐるが、苗族が用ゐた銅鼓は古くは南任と呼ばれ、今も彼等はその器をNan-yenと呼ぶ。『詩・小雅・鼓鍾』に以雅以南(雅を以てし、南を以てす)とあつて、單に南とも呼ばれた。『韓詩薛君章句』に南夷の樂を南と曰ふと見える。また『禮記・明堂位』に任、南蠻之樂也。(任は南蠻の樂なり)とするが、南任がその正名。この特徵的な樂器によつて、南方を南といひ、苗族を南人と呼んだ。

卜辭に「三南、三羌」のやうに西方の羌人と合はせて、祭祀の犧牲に供せられることがあつた。犬首の神盤古を祖神とする南人は、羊頭の異種族羌族とともに犧牲とされたが、牧羊族の羌人のやうに捕獲は容易でなく、卜辭に見える異族犧牲は、殆ど羌人であつた。

南方は一種の聖域と考へられ、『詩・周南・樛木南有樛木、葛藟纍之。(南に樛木有り、葛藟之にまとふ。)のやうに、南は、一種の神聖感を導く發想として用ゐられる。

藤堂

甲骨文は、納屋風の小屋を描いた象形字。

篆文は、(草の芽)と八(圍ひ)と音符𢆉の會意兼形聲。𢆉はの逆形が二線に差し込んださまで、入れ込む意を含む。艸木を圍ひで圍つて、暖かい小屋の中に入れ込み、促成栽培をするさまを示し、圍まれて暖かい意。轉じて、暖氣を取り込む南側を意味する。

落合

打樂器の象形。但し、單獨では假借した方角の用法しか見えない。

甲骨文での用義は次のとほり。

  1. みなみ。南の方向。《合集補編》5073貞、其有㛸自南。
  2. 南の。南側の。《合集》32036王于南門逆羌。
  3. 南にゆく。《合集》945勿令妥南。
  4. 殷の支配地のうち都から南にあるものの總稱。南土や南方とも稱される。《合集》24429癸卯卜大貞、南土受年。
  5. 南方を掌る神格。南方とも稱される。《殷墟花園莊東地甲骨》270己巳、宜羒一于南。
  6. 南方邊疆に居住してゐた人々。殷王朝によつて捕虜や奴隸にされてをり、甲骨文では主に祭祀犧牲として記されてゐる。《天理大學附屬天理參考館 甲骨文字》29來癸亥、燎二南。
南庚
先王名。殷代中期の王。《合集補編》2491貞、侑于南庚。
南陽
地名。《屯南》4529于南陽西[⿱⿰口口㐅]。

漢字多功能字庫

甲骨文、金文は、樂器の一種の鐘鎛を象る。口が下にあり、中空。本義は樂器(郭沫若、唐蘭)。假借して方位詞となし、南方を表す。古書に本義の樂器を表す南がある。『詩經・小雅・鼓鐘』鼓鍾欽欽、鼓瑟鼓琴、笙磬同音。以雅以南、以籥不僭。雅、南を相對して文となし、いづれも樂器を表す。雅は漆筒に良く似た形狀の打樂器で、古代の樂士の演奏した樂器の一つ。『周禮・春官宗伯・笙師』笙師掌教龡竽、笙、塤、籥、簫、篪、篴、管,舂牘、應、雅、以教祴樂。鄭司農雅、狀如漆筩而弇口。笙師は竽、笙、塤などの樂器の吹奏、牘、應、雅などの樂器の敲擊を教授することを掌る、の意。『禮記・文王世子』胥鼓南の胥は官名、胥が樂器の南を敲くの意。

甲骨文での用義は次のとほり。

金文では南方を表す。

漢帛書では男の通假字となす。

屬性

U+5357
JIS: 1-38-78
當用漢字・常用漢字
𡴖
U+21D16
𡴟
U+21D1F

関聯字

南聲の字