肥 - 漢字私註

説文解字

肥
多肉也。从
註に臣鉉等曰、肉不可過多、故从卪。といふ。
肉部

説文解字注

肥
多肉也。从肉卪。鉉等曰、肉不可過多、故從卪。符非切。十五部。按各本此篆在部末。葢因奪落而補綴之也。今考定文理。必當廁此。與下文少肉反對。

康煕字典

部・劃數
肉部・四劃

『唐韻』『集韻』『韻會』『正韻』𠀤符非切、音腓。『說文』多肉也。从肉从卪、會意。《徐曰》肉不可過多、故从卪寓戒。『禮・禮運』安之以樂、而不達于順、猶食而弗肥也。

又『博雅』肥、盛也。

又『廣韻』肥腯。『蔡邕・獨斷』凡祭宗廟禮、牲之別名、豚曰腯肥。『詩・小雅』旣有肥牡、以速諸舅。『左傳・桓六年』博碩肥腯。

又田有肥瘠。『書・禹貢厥田惟中中傳』田之高下肥瘠。九州之中爲第五。

又馬亦稱肥。『前漢・食貨志』冠蓋相望、乗堅策肥。

又饒裕也。『易・遯卦』上九肥遯。《疏》肥、饒裕也。

又幡名。『吳語』建肥胡。《註》肥胡、幡名。

又鳥名。『山海經』英山有鳥焉、其名曰肥遺。

又蛇名。『山海經』太華之山有蛇焉、名曰肥𧔥。《註》肥、𧔥、皆毒蟲也。

又水之初出同流者名肥。『爾雅・釋水』歸異出同流、肥。《疏》謂小水支分歸入大海則異、其泉源初出、則同流者名肥。

又水名。『詩・衞風』我思肥泉。《疏》肥泉、是衞水也。

又地名。『前漢・地理志』合肥。《註》屬九江郡。應劭曰、夏水出父城東南、至此與淮合、故曰合肥。

又縣名。『史記・高祖功臣年表』肥如侯蔡寅。《註》肥如、縣名、屬遼西。

又國名。『左傳・昭十二年』秋八月壬午滅肥。《註》肥、白狄也。

又姓。『史記・趙世家』先問先王貴臣肥義。

又人名。季康子名肥。見『左傳・哀三年』。

又『集韻』補美切、音秕。薄也。『列子・黃帝篇』口所偏肥、晉國黜之。《註》薄也。

又水名。肥者、通作。『詩・衞風』我思肥泉。『釋文』肥、或作淝。

音訓

ヒ(漢) 〈『廣韻・上平聲・微・肥』符非切〉[féi]{fei4}
こえる。こやす。ゆたか。

解字

白川

の會意。卪は人の跪坐する形。そのとき下體の肥肉が著しくあらはれることをいふ。

『説文解字』に多肉なりとし、會意とする。また肉は過多なるべからず。故に卪に從ふ。とし、卪をの意とする。

卪は坐してもものあたりの肉のゆたかなさまを示す形で、沐浴のため盤中に坐する形は、また廟中に祈る姿をといふ。夃、はみなその象形。卪、などもその象形。

藤堂

と音符の形聲。は配や妃の旁で、人が何かにくつついたさま。ここでは單に音を表す。

【補註】藤堂は、配をと卩の會意、人が酒壺の側について離れぬさまとし、妃をと配の略體の會意兼形聲とする。

その語尾がnに轉じたのが本(太い根本)、笨(太い竹)、墳(ふつくらと盛り上がつた土盛り)などの言葉で、肥と同系。

落合

甲骨文は、坐つた人()の腹部に指示記號の丸印を加へた指示字。肥滿體の人が坐つたときに腹部に現れる贅肉を示した形と言はれる。

甲骨文では第一期(武丁代)の人名に用ゐる。肥子と稱される。《合集》3284壬子卜貞、叀肥子令福…豕。

この字は金文には見られないが、古文では贅肉の部分をに變へた會意の字形になつてをり、更に後には卩が巴の形に變はつた。

漢字多功能字庫

に從ふ。本義はゆたか、脂肪が多いこと。瘦と相對する。『論語・雍也』赤之適齊也、乘肥馬、衣輕裘。

また厚實(分厚い、豐富)、茁壯(勢ひよく逞しい、すくすく育つてゐる)の意。北魏・賈思勰『齊民要術・種葵』人足踐踏之乃佳。踐者菜肥。

また油脂を指す。『水經注・河水三』の引く晉・張華『博物志』酒泉延壽縣南山出泉水、大如筥、注地為溝。水有肥如肉汁、取著器中、始黃後黑、如凝膏。

また厚重、豐富を指す。『戰國策・秦策四』省攻伐之心、而肥仁義之誡。姚宏注肥、猶厚也。

また土地が肥沃であること、土地を肥沃にすることを表す。

また肥料、つまり植物を發育させる養分を供給する物質を表す。清・陳淏子『花鏡・澆灌得宜法』夏至梅雨時澆肥、根必腐爛、八月尤忌澆肥。

屬性

U+80A5
JIS: 1-40-78
當用漢字・常用漢字