丁 - 漢字私註

説文解字

丁
夏時萬物皆丁實。象形。丁承丙、象人心。凡丁之屬皆从丁。當經切。
十四丁部

説文解字注

丁
夏時萬物皆丁實。丁實《小徐本》作丁壯成實。『〔史記〕律書』曰、丁者、言萬物之丁壯也。『〔漢書〕律曆志』曰、大盛於丁。鄭注『月令』曰、時萬物皆強大。象形。當經切。十一部。丁承丙。象人心。冡大一經。凡丁之屬皆从丁。

康煕字典

部・劃數
一部(一劃)
古文
𠆤

『唐韻』『集韻』『韻會』『正韻』𠀤當經切、音玎。十幹名。『說文』夏時萬物皆丁實。丁承丙、象人心。『六書正譌』丁、蠆尾也、象形。凡造物必以金木爲丁附著之、因聲借爲丙丁字。『爾雅・釋天』太歲在丁曰彊圉、月在丁曰圉。『禮・月令』仲春之月上丁、命樂正習舞釋菜。又『唐書・禮樂志』仲春、仲秋、釋奠於文宣王、皆以上丁。

又五丁、力士。『蜀記』秦惠王欲伐蜀、造石牛、置金其後。蜀人使五丁力士拖石成道、秦遂伐蜀。『杜甫詩』論功超五丁。

又六丁、神名。『道書』陽官六甲、隂官六丁。謂六甲中丁神也。

又『爾雅・釋詁』丁、當也。《註》相當値。『詩・大雅』寧丁我躬。

又民丁。『唐書・食貨志』租庸調之法、以人丁爲本。又授田十畝、歲輸粟二斛、謂之租丁。

又『莊子・養生主』庖丁解牛。『杜甫詩』畦丁負籠至。『宋史・高宗紀』團敎峒丁槍杖手。『又』罷廉州貢珠、縱蛋丁自便。『何異傳』募山丁、捕首亂者。『唐璘傳』團結漁業茶鹽舟夫蘆丁、悉備燎舟之具。『元史・博爾忽傳』畬丁溪子。『橘錄』金橘高不及尺許、結實繁多。園丁種之、以鬻於市。

又零丁、或作伶仃、失志貌。『晉書・李密傳』零丁孤苦、至於成立。

又彼此相屬曰丁寧。『後漢・郞覬傳』丁寧再三、留神於此。俗作叮嚀。

又丁寧、鉦也。『左傳・宣四年』楚伯棼射王、汰輈及鼔跗、著於丁寧。

又丁東、聲也。凡玉珮鐵馬聲皆曰丁當。當東二音古通。

又丁水。『水經注』泗水又東南流、丁溪水注之。

又『爾雅・釋魚』魚枕謂之丁。《註》枕在魚頭骨中、形似篆書丁字。

又丁子、科斗也。初生如丁有尾。『莊子・天下篇』丁子有尾。

又肉丁、瘡名。『物類相感賦』身上生肉丁、芝蔴花擦之。

又烏丁、茶名。見『本草』。

又吉丁、蟲名。『本草註』甲蟲也。背正綠、有翅、在甲下、出嶺南賓澄諸州、人取帶之、令人喜好相愛。

又《貫休・詩》蕨苞玉粉生香壟、菌蔟紅丁出靜槎。《陸游・詩》滿貯醇醪漬黃甲、密封小甕餉紅丁。皆詩人象形借用也。

又姓。本姜姓、齊太公子伋爲丁公、因以命氏。

又『逸書諡法』述義不克曰丁。

又『廣韻』『集韻』『韻會』𠀤中莖切、音朾。『詩・小雅』伐木丁丁。《註》伐木聲相應也。

又『韻會小補』叶都陽切、音當。『韓愈・贈張籍詩』相見不復期、零落甘所丁。嬌兒未絕乳、念之不能忘。

『正字通』唐書張弘靖傳、汝輩挽兩石弓、不如識一丁字。按續世說一丁作一个、因篆文个與丁相似。傳寫譌作丁。

部・劃數
人部(一劃)

『集韻』古作𠆤。註詳一部一畫。

音訓・用義

(1) テイ(漢) チャウ(呉) 〈『廣韻・下平聲・靑・丁』當經切〉[dīng]{ding1}
(2) タウ(漢) チャウ(呉) 〈『廣韻・下平聲・耕・朾』中莖切〉[zhēng]{zaang1/zang1}
(1) ひのと。あたる。をとこ(壯丁)。つよい。さかん。

丁丁タウタウとは、木を伐る音、杙を打つ音、碁を打つ音。音(2)に讀む。

解字

甲骨文や金文はいはゆる丁字形ではなく、方形につくる。

白川

釘の頭の象形。その頭を平面形の□で示すことがあり、卜文、金文はその字形であつた。

『説文解字』にいふ「丁實」は丁壯の意であらう。

また『説文解字』に丁は丙を承く。人心に象る。とするが、心の象形はであり、丁はその形ではない。

爾雅・釋魚』に魚枕謂之丁(魚枕、之を丁と謂ふ)とする。魚腸を、魚尾を丙とするのと一類の説である。

十干の第四に用ゐる。

藤堂

象形。

甲骨文、金文は特定の點、またはその一點に打ち込む釘の頭を描いたもの。

篆文はT型に書き、平面上の一點に直角に釘を當てたさま。

釘の原字。

落合

象形。四角形のものを表す一般形。

甲骨文での用法は次のとほり。

  1. 都市。王都の意味かも知れない。《殷墟花園莊東地甲骨》211勿告行于丁。
  2. 十干の四番目。
  3. 祭祀名。禘や祊の假借とする説もある。《合集補編》10998癸卯卜貞、祖甲丁、叀𬙮。
  4. 先王の略稱。武丁を指す場合が多いが、中丁や祖丁を指すこともある。《甲骨拼合集》171癸亥卜彭貞、其侑于丁妣己。
  5. 人名。第一期(武丁代)。貞人名としても見える。
丁人
後代と同じく青年男性の意か。合文で表記されることもある。
丁門
殷都にある門の一つ。正確な位置は不明。
丁宗
宗廟の一つ。位置や祭祀對象は不明。
伊丁
伊尹の別名。

字の要素としては城壁の意味で用ゐられることが多い。その他、部屋の象形や抽象的な物體などの用法もある。

篆文で釘の側面形のやうな形になつたため、それを字源とする説が多いが、甲骨文、金文の字形に合致しない。

漢字多功能字庫

甲骨文、金文は、中空あるいは塗り潰された方形に從ひ、城邑の形を象る。丁、、いづれもの初文(何琳儀)。本義は城邑。楊樹達は、方形は東南西北四方の形を象り、四方あるいは方國のの本字とする。饒宗頤もまた近い見方をする。姚孝遂は方圓の方の本字とする。

過去の學者の丁字の構形に對する説は紛々としてゐる。劉心源、林義光、吳其昌は釘を象るとする。高鴻縉は頭頂を象るとする。郭沫若は瞳孔を象るとする。唐蘭は金鉼(延べ金)を象るとする。みな確證がない。

甲骨文、金文での用義は次のとほり。

屬性

U+4E01
JIS: 1-35-90
當用漢字・常用漢字
𠆤
U+201A4

関聯字

丁に從ふ字を漢字私註部別一覽・囗部・丁枝に蒐める。