韋 - 漢字私註

説文解字

韋
相背也。从聲。獸皮之韋、可以束枉戾相韋背、故借以爲皮韋。凡韋之屬皆从韋。宇非切。
韋部
𣍄
古文韋。

説文解字注

韋
相背也。故从舛。今字違行而韋之本義廢矣。『〔書〕酒誥』薄韋辳父。馬云、韋、違行也。據羣經音辨、則古文『尙書』當如是。从舛囗聲。宇非切。十五部。獸皮之韋。此韋當作。謂繞也。可㠯束物枉戾相韋背。物字依『韵會』補。生革爲縷圍束物、可以矯枉戾而背其故也。故借㠯爲皮韋。其始用爲革縷束物之字。其後凡革皆偁韋。此與西〔註1〕五字下文法略同。皆言假借之恉也。假借專行而本義廢矣。凡韋之屬皆从韋。
𣍄
古文韋。

康煕字典

部・劃數
部首
古文
𣍄
𡙝
𡚈

『唐韻』宇非切『集韻』『韻會』于非切、𠀤音幃。『說文』相背也。从舛口聲。獸皮之韋、可以束枉戾相韋背、故借以爲皮韋。『廣韻』柔皮。『左傳・僖三十三年』以乗韋先。《疏》乗韋、四韋也。『周禮・春官・司服』凡兵事、韋弁服。『儀禮・聘禮』君使卿韋弁。《註》韋弁、韎韋之弁。『史記・孔子世家』讀易、韋編三絕。『楚辭・卜居』將突梯滑稽、如脂如韋、以挈盈乎。

又『前漢・郊祀歌』依韋響昭。《註》師古曰:依韋諧和、不相乖離也。

又國名。『詩・商頌』韋顧旣伐。《箋》韋、豕韋、彭姓也。『左傳・襄二十四年』在商爲豕韋氏。《註》豕韋、國名。『一統志』直隷大名府滑縣、古豕韋氏之國。

又豨韋氏、古帝王號。『莊子・外物篇』以豨韋氏之流觀今之世。

又不韋、縣名、屬益州郡、見『前漢・地理志』。

又姓。『姓苑』出自顓頊大彭之後、夏封于豕韋、以國爲氏。

又通。『前漢・成帝紀』大風拔甘泉畤中、大木十韋以上。《註》師古曰、韋、與圍同。

又『集韻』胡隈切、音徊。本作。詳囗部回字註。

部・劃數
曰部十劃

『玉篇』古文字。註詳部首。

部・劃數
大部・十劃

『韻會』古文字。註詳部首。

部・劃數
大部十三劃

『字彙補』古文字。註詳部首。

異體字

簡体字。

音訓

ヰ(漢、呉) 〈『廣韻・上平聲・微・幃』雨非切〉[wéi]{wai4}
なめしがは。そむく。

解字

城邑を表す方形を、二で圍む形。

白川

字に二系統あるとする。

象形字

卜文、古文の字形に、獸皮を木に張り、卷き附けて鞣す形を示すものがあり、韋皮に象る。

【補註】 落合は白川の擧げる甲骨文を𣐺とする。

會意字

の會意。囗は城邑。その上下に、左行、右行する趾の形であるを加へる。左右違ふの意。

の初文。圍は韋に更に囗を加へて、包圍、圍繞の意を示す。

守るときには衞といふ。

綜括

『説文解字』に相ひ背くなり。舛に從ひ、囗聲。獸皮の韋、以て束ねて枉戾し、相ひ韋背すべし。故に借りて以て皮韋と爲す。とし、圍束、違戾の二義を導かうとしてゐるが、卜文の韋皮の字は囗に從はず、周圍の字と韋束の字とは、もと別の字。

韋皮の字は鞣し革を張り附けて鞣す形、違背の字は囗(城邑)の上下に、左行、右行の止を加へてめぐる形であるから、まもるもまた韋に從ふ。圍む、左右違ふの意となる。

藤堂

と、𫝀と𡕒(巡り步く左右の足)の會意。口は中心となる場所を示す。もと、ロータリーをぐるりと巡つて步くこと。

また、左右の足が行き違ふことを表し、違の原字でもある。

韋は身體にぐるりと卷き附ける鞣し革を表す。

落合

會意。甲骨文は(四角形)と𫝀や𡕒(橫向きの足の形; を90°廻轉した形)から成り、都市の周圍を巡つて守備する樣子を表す。

甲骨文では地名またはその長を表す。第一期(武丁代)には貞人名(賓組)として多く見える。また殷金文の圖象記號にも類似形が見える。《合補》2425丁未卜貞、令韋弋享廾牛。

後代には借りて鞣し革の意に使はれた。

を加へたは金文に初出。圍にも守るの意がある。

漢字多功能字庫

甲骨文、金文はと、二乃至四つのに從ふ。囗は城邑を表し、衆人が城を圍む形に象る。の初文。後に借りて皮革を表し、現在は多く姓氏に用ゐる。

李孝定は、城を守る側からは韋は衞の初文、城を攻める側からは韋は圍の初文であるといふ。

城を守る者から言ふと、多くの足が城を圍んで衞る意、韋は守衞、護衞の衞の初文、城を攻める者から言ふと、韋は圍の初文であるといふ。韋字は後に借りて皮韋を表し、圍字を造つて包圍の本義を表す。《睡虎地秦簡・日書甲種》40正韋(圍)城がまさに韋につくり、證となつてゐる。

甲骨文では地名や人名に用ゐられる。金文では人名のほか、皮韋、皮革を表す。匍鴨盉麀𠦪韋は模樣のある母鹿の鞣し革を表す。『正字通』韋、柔皮。熟曰韋、生曰革。

屬性

U+97CB
JIS: 1-80-74
𣍄
U+23344
𡙝
U+2165D
𡚈
U+21688
U+97E6

関聯字

韋に從ふ字を漢字私註部別一覽・囗部・韋枝に蒐める。