貝 - 漢字私註

説文解字

貝
海介蟲也。居陸名猋、在水名蜬。象形。古者貨貝而寶龜、周而有泉、至秦廢貝行錢。凡貝之屬皆从貝。
貝部

康煕字典

部・劃數
部首

『唐韻』『集韻』『韻會』𠀤博蓋切、音䟺。『埤雅』貝以其背用、故謂之貝。『說文』海介蟲也。古者貨貝而寶龜、周而有泉、至秦廢貝行錢。『爾雅・釋魚』貝居陸贆、在水者蜬、大者魧、小者𧐐。《註》大貝如車渠、細貝亦有紫色者。『又』餘貾黃白文。《註》黃爲質、白文爲點。『又』餘泉白黃文。《註》白爲質、黃爲文點、今紫貝也。『又』蚆博而頯。《註》頯者、中央廣兩頭銳。『又』蜠大而險。《註》險者、謂汙薄。《疏》此辨貝居陸、居水、大小文采不同之名也。『相貝經』朱仲受之於琴高、以遺會稽大守嚴助、其略曰、貝盈尺、狀如赤電黑雲曰紫貝、赤質紅章曰珠貝、靑地綠文曰綬貝、黑文黃畫曰霞貝。下此有浮貝、濯貝、皭貝、慧貝。又『山海經』隂山漁水中多文貝、邽山濛水多黃貝。『易・震卦』億喪貝。《註》貝、資貨糧用之屬也。『書・盤庚』具乃貝玉。《疏》貝者、水蟲。古人取其甲以爲貨、如今之用錢然。又『顧命』大貝。《傳》大貝如車渠。『史記・平準書』農工商交易之路通、而龜貝金錢刀布之幣興焉。《註》『食貸志』有十朋五貝、皆用爲貨、各有多少、兩貝爲朋、故直二百一十六。

又錦名。『書・禹貢』厥篚織貝。《疏》貝、錦名。『詩・小雅』萋兮斐兮、成是貝錦。

又樂器。『正字通』梵貝、大可容數斗、乃蠡之大者、南蠻吹以節樂。

又飾也。『詩・魯頌』貝胄朱綅。《傳》貝胄、貝飾也。《疏》貝甲有文章、故以爲飾。

又州名。『廣韻』周置貝州、以貝丘爲名。

又姓。『玉篇』貝氏、出淸河貝丘。【姓苑】古有賢者貝獨坐、唐有貝韜。

又『正韻』邦妹切、音背。義同。

又『集韻』古作貝。註詳攴部七畫。

音訓・用義

バイ(慣)
ハイ(呉、漢) 〈『廣韻・去聲・泰・貝』博蓋切〉
かひ

解字

白川

象形。子安貝の形。子安貝は古くは呪器とされ、また寶貝とされた。

金文の賜與に「貝三十朋」、「貝五十朋」のやうにいひ、『詩・ 小雅 ・菁菁者莪』に錫我百朋(我に百朋を錫ふ)の句がある。朋は前後兩系に貝を綴ぢたもので、金文にはこれを荷ふ圖象の銘識がある。またその十數朋を以て彝器の費用に充てることを記す銘文もあり、當時は甚だ貴重なものであつた。子安貝の原産地は沖繩であつたと考へられ、これを入手することはかなり困難であつたらしく、殷周期の裝飾品には、玉石を以てその形に模した物が多い。

のち財寶關係の字は、多く貝に從ふ。

藤堂

象形。割れ目のある子安貝、または二枚貝を描いたもの。

古代には貝を交易の貨幣に用ゐたので、貨、財、費などの字に貝印を含む。

落合

子安貝の貝殼の象形。

殷代には貝が貴重品とされたため、甲骨文では貝殼に關する字のほか、財貨に關する字の要素としても使はれてゐる。殷代に通貨の概念はなく、あくまで貴重品としての賜與、流通がされてゐた。

甲骨文での用義は次のとほり。

  1. 貝。子安貝などの貝殼。
  2. 祭祀名。貝を捧げる儀禮か。
貝朋
穴を開けた子安貝に紐を通して束にしたもの。當時の墓葬から出土してゐる。

漢字多功能字庫

甲骨文は貝殼の形を象る。古人は貝を以て貨幣となし、これにより、貝に從ふ字は財貨や賣買に關係がある。甲骨文は海貝の一種を象り、西周金文は下に二本短い縱劃を引き、字形の上方の角狀の部分が戰國期に段々と線になり、橫一劃となつた。按ずるに、郭沫若は古人は最初貝殼を頸飾に用ゐ、後に變化して貨幣となつたとする。

甲骨文での用義は次のとほり。

  1. 海貝を指し、あるいは祭品に用ゐる。
    • 《合集》5648[隹示又]貝于帚(婦)。は、海貝をある種の祭祀を行ふ婦人に交附することをいふ。
    • また賞賜物に用ゐる。《合集》40073易(賜)貝二朋。
  2. 字を地名に用ゐると疑はれる。《合集》40071正勿陟貝

金文での用義は次のとほり。

  1. 多く貝幣を指し、賞賜物に用ゐる。何尊易(賜)貝卅朋。古く貝を紐に通したもの一對を一朋とする。
  2. 「貝胄」の語があり、貝殼の裝飾をした頭盔といふ(白川靜)。小盂鼎貝冑一。

戰國文字では本義に用ゐ、海貝を指す。《上博竹書四・逸詩・交交嗚烏》簡4豈俤(弟)君子、若珠若貝。は、君子は眞珠や海貝のやうである、といふ。

甲骨文の貝との二字は形が近い。金文の貝とも容易に混じる。

屬性

U+8C9D
JIS: 1-19-13
當用漢字・常用漢字

関聯字

貝に從ふ字

説文解字・貝部のほか、以下の字など。

貝聲の字