振 - 漢字私註

説文解字

振
舉救也。从聲。一曰奮也。
十二手部

説文解字注

振
舉救之也。之字依『韵會』補。諸史籍所云振給、振貣、是其義也。凡振濟當作此字。俗作賑、非也。匡謬正俗言之詳矣。从手辰聲。章刃切。十三部。一曰奮也。此義則與震略同。『〔詩・小雅〕采𦬊・傳』曰、入曰振旅。『〔同・周頌〕振鷺・傳』曰、振振、羣飛皃。『〔同・豳風〕七月・傳』曰、沙雞羽成而振訊之。皆此義。『〔同・周南〕麟止』『〔同・召南〕殷其雷』傳曰、振振、信厚也。則此義之引申。葢未有不信厚而能奮者。

康煕字典

部・劃數
手部・七劃

『唐韻』章刃切『集韻』『韻會』『正韻』之刃切、𠀤音震。『說文』舉救也。『增韻』拯也。『易・蠱象』君子以振民育德。《註》濟民養德也。『禮・月令』振乏絕。『前漢・元帝紀』振業貧民。《註》振起之、令有作業。

又『說文』一曰奮也。『廣韻』裂也、又動也。『易・恆卦』振恆。『禮・月令』孟春蟄蟲始振。『周禮・春官・大祝』辨九祭、五曰振祭。《註》至祭之末、但擩肝鹽中振之、謂將食者旣擩、必振乃祭也。『爾雅・釋言』振、訊也。《註》當作迅。謂奮迅。

又同震。『戰國策』燕王振怖大王之威。『史記・五帝紀』振驚朕衆。

又整也。『禮・曲禮』振書端、書於君前。《疏》振、拂去塵也、臣不豫愼、將文書簿領於君前、臨時乃拂整也。

又發也。『左傳・文十六年』振廩同食。『莊子・田子方』是必有以振我也。

又收也。『禮・中庸』振河海而不洩。『孟子』金聲而玉振之也。『周禮・夏官・大司馬』中春敎振旅。《註》兵入收衆專於農也。○按書傳云、振旅言整衆。

又止也。『詩・小雅』振旅闐闐。《箋》戰止將歸。又振旅伐鼓。振、猶止也。

又『爾雅・釋言』振、古也。『詩・周頌』振古如兹。《箋》振亦古也。

又鳥羣飛貌。『詩・周頌』振鷺于飛。

又州名。『寰宇記』瓊州府有崖州、唐武德五年改振州。

又『唐韻』『集韻』『類篇』『韻會』𠀤之人切、音眞。厚也。『詩・周南』宜爾子孫振振兮。《傳》仁厚也。『又』振振公子。《傳》信厚也。

又盛貌。『左傳・僖五年』均服振振。

又上聲。『集韻』『正韻』𠀤止忍切、音軫。與袗通。襌也。『禮・玉藻』振絺綌、不入公門。

又叶諸延切、音旃。『𨻰琳・柳賦』救斯民之絕命、擠山岳之隕顚。匪神武之勤恪、幾踣斃之不振。

音訓・用義

(1) シン(漢、呉) 〈『廣韻・去聲・震・震』章刃切〉[zhèn]{zan3}
(2) シン(漢、呉) 〈『廣韻・上平聲・眞・眞』側鄰切〉[zhēn]{zan1}
(1) ふるふ。ふる。すくふ。

振振は音(2)に讀み、仁厚のさま、また盛んなさまをいふ。

解字

白川

形聲。聲符は。辰は蜃の初文。その蜃肉、蜃器は呪器、祭器として祭儀に用ゐることがあつた。

『説文解字』に擧げて之れを救ふなり(段注本)と振救の意とする。

禮記・月令振乏絕(乏絕をすくふ)は賑給の意で、賑と通用する。

『説文解字』にまた一に曰く、奮ふなりとあり、これは鼓舞する意。軍が出行のとき奉ずる脤肉と關係があらう。振は辰を持つ意の字。脤には魂振りとしての意味があつたのであらう。歸還して廟に告げる禮を歸脤の禮といふ。『詩・小雅・采芑』振旅闐闐(旅(軍)ををさむること闐闐たり)、また『左傳・隱五年』三年而治兵、入而振旅(三年にして兵を治め、入りて振旅す)とは、その禮をいふ。

藤堂

と音符の會意兼形聲。辰は、蜃(はまぐり)の原字で、貝が開いてぴらぴらと振るふ舌の出たさまを描いた象形字。振は、貝の舌のやうに、小刻みに震へ動くこと。

漢字多功能字庫

金文はに從ひ聲。廾は兩手の形に象る。辰は耨に相當する農具の一種で、除草に用ゐる。字は兩手で農具を持つさまに象り、疑ふらくは田地を整へることを表す。引伸して整頓の意を有す。

金文では整頓を表す。中觶王大省公族于庚、振旅。王易(賜)中馬。「振旅」は軍隊を整頓すること。『左傳・隱公五年』入而振旅杜預注振、整也。

屬性

U+632F
JIS: 1-31-22
當用漢字・常用漢字