庚 - 漢字私註

説文解字

庚
位西方、象秋時萬物庚庚有實也。庚承己、象人𪗇。凡庚之屬皆从庚。古行切。
十四庚部

説文解字注

庚
位西方。『律書』曰、庚者、言陰氣更萬物。『律曆志』斂更於庚。『月令・注』曰、庚之言更也。萬物皆肅然更改。秀實新成。象秋時萬物庚庚有實也。庚庚、成實皃。服䖍『漢書』注曰、庚庚、横皃也。字象形。古行切。古音在十部。讀如岡。庚承己、象人䐡。冡大一經。按小徐駁李陽冰說。从𠬞象人兩手把干立。不可從。今各本篆皆從陽冰。非也。中庚者、象人䐡。

康煕字典

部・劃數
广部・五劃

『唐韻』古行切『集韻』『韻會』居行切『正韻』古衡切、𠀤音賡。『集韻』庚、十干名也。『說文』庚位西方、象秋時萬物庚庚有實也。『爾雅・釋天』太歲在庚曰上章。『又』月在庚曰窒。『釋名』庚、剛也、堅强貌也。

又『玉篇』庚猶更也。『易・巽卦』先庚三日、後庚三日吉。『本義』庚、更也。事之變也。先庚三日、丁也。後庚三日、癸也。丁所以丁寧於其變之前、癸所以揆度於其變之後。

又長庚、星名。『詩・小雅』東有啓明、西有長庚。《傳》日出、明星爲啓明。日旣入、謂明星爲長庚。庚、續也。『詩緝』夾漈鄭氏曰、啓明金星、長庚水星。金在日西、故日將出、則東見。水在日東、故日將沒、則西見。實二星也。『後漢・馬融傳』曳長庚之飛髾。《註》長庚、卽太白星。

又『左傳・哀十三年』若登首山以呼曰庚癸乎、則諾。《註》軍中不得出糧、故爲私隱。庚、西方、主穀。癸、北方、主水。

又年齒亦曰庚。『墨客揮犀』文彥博居洛日、年七十八、與和昫司馬旦席、汝言爲同庚會、各賦詩一首。又『癸辛雜識』張神鑒瞽而慧、每談一命、則旁引同庚者數十、皆歷歷可聽。

又『前漢・文帝紀』大橫庚庚。《註》師古曰、庚庚、橫貌也。

又『集韻』道也。『詩序』由庚萬物得由其道也。『左傳・成十八年』塞夷庚。《註》吳晉往來之要道。

又『廣韻』償也。『禮・檀弓』季子臯葬其妻犯人之禾、申詳以告曰、請庚之。

又『隋書・律曆志』夷則一部二十七律。一曰和庚。

又姓。『唐韻』唐有太常博士庚季良。又庚桑、複姓。『莊子・庚桑楚註』楚名。庚桑、姓也。

又六庚、天獸名。『太公・隂謀』六庚爲白獸、在上爲客星、在下爲害氣。

又倉庚、鳥名。『爾雅・釋鳥』倉庚、商庚。《註》卽鵹鳥也。『詩・豳風』倉庚于飛、熠燿其羽。

又盜庚、草名。『爾雅・釋草』蕧、盜庚。《註》旋蕧似菊。『本草』旋蕧一名盜庚。夏開黃花、盜竊金氣也。

音訓

カウ(漢) 〈『廣韻・下平聲』古行切〉[gēng]{gang1}
かのえ。よはひ。

解字

白川

𠬞の會意。兩手で杵を持ちうすつく形。

『説文解字』の釋は、當時の五行説によるものであるが、字の形義を得難い。

脱穀、精白して生ずるものは、庚に粉末の形を加へた康で、糠、穅の初文。故に庚は脱穀することをいふ字と見られる。

金文の圖象に、臺座の上に庚形の樂器を樹てた形のものがあり、あるいは康樂(補註: やすんじ樂しむ、たのしみ遊ぶ)の意であらう。

藤堂

象形。Y型に立てた強い心棒を描いたもの。

落合

柄をつけて持つ樂器の鉦の形とする説、吊り下げる鐘の象形とする説がある。甲骨文にはいづれの樂器か確定できる記述はないが、鉦は上に開いた樂器なので、下が開いた鐘の象形とするのが妥當であらう。

甲骨文での用義は次のとほり。

  1. 十干の七番目。かのえ。《天理大學附屬天理參考館 甲骨文字》323己酉卜行貞、翌庚戌、翌日于大庚、亡[⿱𫝀它]。
  2. 人名。第一期(武丁代)。《合集》21863乙卯卜、翌日丁巳、令庚步。
庚庸
祭祀名。樂器の演奏であらう。《合集》31016叀庚庸、用。

字形は篆文で誤つてのやうな形から成る字體に變へられ、隸書から楷書でそれらが融合、變形した。

漢字多功能字庫

構形不明。郭沫若は、搖れる耳がある樂器を象り、鉦に當たるとする。假借して十干の名となす。甲骨文、金文では、多く十干の第七位(かのえ)に用ゐ、日を紀するために用ゐる。

また商代の先王の廟號に用ゐられる。

また人名に用ゐる。庚季鼎庚季拜𩒨首、對揚王休、用乍(作)寶鼎、其萬年子子孫孫永用。

簡帛材料での用義は次のとほり。

傳世文獻ではまた道路を表す。

また償還を表す。

また持續を表す。

後に年齡を指すのに用ゐる。

屬性

U+5E9A
JIS: 1-25-14
人名用漢字

關聯字

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