中 - 漢字私註

説文解字

內也。从、上下通。
丨部
𠁧
古文中。
𠁩
籒文中。

康煕字典

部・劃數
丨部・三劃
古文
𠁧
𠁩

『唐韻』陟弓切『集韻』『韻會』『正韻』陟隆切、𠀤音忠。『書・大禹謨』允執厥中。『周禮・地官・大司徒』以五禮防民僞、而敎之中。『左傳・成十三年』劉子曰、民受天地之中以生。

又『左傳・文元年』舉正於中、民則不惑。《註》舉中氣也。

又司中、星名。在太微垣。『周禮・春官・大宗伯』以槱燎祀司中司命飌師雨師。

又『前漢・律歷志』春爲陽中、萬物以生。秋爲隂中、萬物以成。

又中央、四方之中也。『書・召誥』王來紹上帝、自服于土中。《註》洛爲天地之中。『張衡・東京賦』宅中圓大。

又正也。『禮・儒行』儒有衣冠中。『周禮・秋官・司刺』以此三法者求民情、斷民中、施上服下服之罪。《註》斷民罪、使輕重得中也。

又心也。『史記・韓安國傳』深中寬厚。

又內也。『易・坤卦』黃裳元吉、文在中也。又『老子・道德經』多言數窮、不如守中。

又半也。『列子・力命篇』得亦中、亡亦中。『魏志・管輅傳』鼓一中。《註》猶言鼓一半也。

又成也。『禮・禮器』因名山升中于天。《註》中、猶成也。燔柴祭天、告以諸侯之成功也。

又滿也。『前漢・百官表』制中二千石。《註》謂滿二千石也。『索隱』漢制、九卿已上、秩一歲、滿二千石。

又穿也。『周禮・冬官考工記』中其莖。《註》謂穿之也。

又盛算器。『禮・投壺』主人奉矢、司射奉中。《註》士鹿中、大夫兕中、刻木如兕鹿而伏、背上立圓圈、以盛算也。

又『禮・深衣註』衣有表者、謂之中衣。與通。

又俚語。以不可爲不中。『蕭參希通錄』引左傳成公二年、無能爲役。杜預註、不中爲之役使。

又『禮・鄕飲酒義』冬之爲言中也。中者、藏也。

又姓。漢少府卿中京。又中行、中英、中梁、中壘、中野、皆複姓。

又『廣韻』『集韻』『韻會』𠀤陟仲切、音妕。矢至的曰中。『史記・周本紀』養由基去柳葉百步、射之、百發百中。

又著其中曰中。『莊子・達生篇』中身當心則爲病、猶醫書中風、中暑是也。

又要也。『周禮・春官』凡官府鄕州及都鄙之治中、受而藏之。《註》謂治職簿書之要也。

又應也。『禮・月令』律中大簇。《註》中猶應也。

又合也。『左傳・定元年』季孫曰:子家子亟言於我、未嘗不中吾志也。

又『類篇』『正韻』𠀤直衆切。與通。『禮・月令』中呂、卽仲呂、

又讀作得。『周禮・地官』師氏掌國中失之事。《註》故書中爲得。陸德明云、中、杜音得。

又『韻補』叶陟良切、音章。師古曰、古讀中爲章。『吳志・胡綜傳・黃龍大牙賦』四靈旣布、黃龍處中。周制日月、是曰太常。

又叶諸仍切、音征。『劉貢父・詩話』關中讀中爲𤇏。『詩・大雅』泉之竭兮、不云自中。叶上頻。『班固・高祖泗水亭𥓓』天期乗祚受爵漢中。叶下秦。古東韻與庚陽通。俗讀中酒之中爲去聲。中與之中爲平聲。○按『魏志・徐邈傳』邈爲尚書郞、時禁酒。邈私飮沈醉、趙達問以曹事、曰中聖人。時謂酒淸爲聖人、濁者爲賢人。【蘇軾詩】公特未知其趣耳、臣今時復一中之。則中酒之中、亦可讀平聲。『通鑑』周宣王成中與之名、【註】當也。【杜詩】今朝漢社稷、新數中與年。則中與之中亦可讀去聲。

部・劃數
丨部六劃

『玉篇』古文字。註詳三畫。

部・劃數
丨部七劃

『玉篇』古文字。註詳三畫。

音訓

チウ(漢、呉)
なか。うち。こころ。ただしい。たひらか。なる。あたる(命中、的中)。あふ。

解字

白川

象形。旗竿の形に象る。

卜文、金文には、上下に吹き流しを加へたものがあり、中軍の將を示す旗の形。

『説文解字』に而なり、《繫傳》に和なりとするが、宋本に內なりとするものがあり、而は內の誤字であらう。

卜辭では中を中軍の意に用ゐる。「中にのぞまんか」とは、中軍の將たる元帥として、その軍にのぞむ意であらう。元帥とする者を謀る意であらうと思はれる。

すべて中央にあつて中心となり、中正妥當を得ることをいふ。

『説文解字』に收める字形はすべてに從ふが、それはの從ふところで、旗竿の象ではない。旗竿には偃游(吹き流し)のほかに、旗印をつけた。

藤堂

象形。元の字は、旗竿を枠の眞ん中に突き通した姿を描いたもので、眞ん中の意を表す。また、眞ん中を突き通すの意をも含む。

落合

象形。甲骨文はに形が近く、旗の一種と推定されてゐるが、どのやうな旗かについては諸説ある。甲骨文に、後にいふ「中軍」に當たる用法があり、恐らく軍隊の中央に立てた旗であらう。轉じて中央や中間を表す字となつた。

甲骨文での用義は次のとほり。

  1. 軍隊の中央に立てる旗。原義での用法。《合集》7369丙子、其立中、亡風。八月。
  2. 中央。中心。王朝の中心である商は中商と呼ばれてゐる。《合集》20650戊申卜王貞、受中商年。…月。
  3. 部隊編成の呼稱。後に言ふ「中軍」に當たる。《合集》33006丁酉貞、王作三師右中左。
  4. 地名またはその長。第二期(祖庚祖甲代)には貞人としても見える。また殷金文の圖象記號にも見える。《合集》34458…丑。茲用。在中。
  5. 祭祀名。《東京大學東洋文化研究所藏甲骨文字・圖版篇》270己未、宜得義京羌三、卯十牛、中。
中丁
殷の先王。系譜上で中位に當たる。《合集補編》3992勿告于中丁。
中己
祖先名。殷王ではない。《合集補編》8721戊子卜、其侑、歳于中己、王賓。
中子
二番目以下の男子。大子と小子の間。この意味としては、周代以降に見える同源字のが近い。《天理大學附屬天理參考館 甲骨文字》48用中子羊…。
中土
神名。首都である商の周邊を神格化したものであり、と同意と推定されてゐる。《合集》21090…于中土燎…。
中日
正午頃の時間帶。日中ともいふ。《合集》30197中日、大啓。
中母
祭祀對象。父の側室か。《甲骨綴合集》479…中母豭。
中宗
殷王祖乙の別稱。中宗祖乙ともいふ。《合集》26933其侑中宗祖乙、侑羌。
中室
施設名。《合集》27884丁巳卜、叀小臣剌以汒于中室。
中婦
側室であらう。《天理大學附屬天理參考館 甲骨文字》484叀中婦作[⿱𫝀它]。

漢字多功能字庫

甲骨文は、長い竿の上下あるいは上中下に斿(飄帶;吹き流し)のあるさまに象り、古代の風を測る道具の象形字。風を觀測するときは、竿を立てた觀測點が中心となるので、中心、中間の義を派生する。

甲骨文にまた一本の直線の中間に圈形の指示符號を加へた字形があり、中央、中點などのやうな意義を表す指示字。字の本義を見るに、この指示字の中と、先述の測風の道具の中の二字が本來あつた。測風の道具の字形は後に圈形を加へ、これはもとの字形に指示字の中を聲符に加へたものである。

早期金文に象形の測風の道具の中があり、後に指示字の中を聲符に加へた字形を多用する。中の竿上の斿が段々と直筆に變はり、あるいは省略される。戰國秦系文字の中では斿の部分は完全に省略され、小篆や隸書の字形では中間の圈形が方形へ變はり、現在の楷書の中となつた。

卜辭での用義は次のとほり。

金文での用義は次のとほり。

文獻では、内、裡を表す。

また中等、高くも低くもない意。

中は目標を射中てることを表す。

中は合ひ適ふことを表す。『論語・子路』刑罰不中、則民無所錯手足。

また符合を表す。『荀子・賦篇』員者中規、方者中矩。

中はまた半ば、一半を表す。

また中傷を表す。『史記・秦始皇本紀』或言鹿、高因陰中諸言鹿者以法。陰中とは暗中で中傷すること。

不幸、災難に遭ふことを表す。『後漢書・馬援列傳』會暑甚、士卒多疫死、援亦中病。

屬性

U+4E2D
JIS: 1-35-70
當用漢字・常用漢字
𠁧
U+20067
𠁩
U+20069

関聯字

中に從ふ字

中聲の字