㫃 - 漢字私註

説文解字

㫃

旌旗之游、㫃蹇之皃。从、曲而下垂、㫃相出入也。讀若偃。古人名㫃、字子游。凡㫃人之屬皆从㫃。於幰切。

㫃部
㫃

古文㫃字。象形。及象旌旗之游。

説文解字注

㫃

旌旗之游㫃蹇之皃。旌旗者、旗之通偁。旌有羽者。其未有羽者。各舉其一該九旗也。王逸『〔楚辭〕九歌』注云、偃蹇、舞皃。『大人賦』說旌旗曰、掉拮撟以偃蹇。張揖曰、偃蹇、高皃。

从屮、曲而𡍮下、㫃相出入也。此十一字當作「从屮、曲而下𡍮者游、从入、游相出入也」十五字。从屮者、與𧯛𡴊𠨲同意。謂杠首之上見者。曲而下垂者象游。游相出入者、謂从風往復如一出一入然。故从入。大徐云、此字从屮下垂、當只作⿱屮𠃌。相承多一畫。玉裁謂、从屮謂竿首、下垂謂游也。鼎臣殊誤會。

讀若偃。於幰切。十四部。

古人名㫃字子遊。晉有籍偃、荀偃。鄭有公子偃、駟偃。孔子弟子有言偃。皆字游。今之經傳皆變作。偃行而㫃廢矣。

凡㫃人之屬皆从㫃。

㫃

古文㫃字。象旌旗之游及㫃之形。此小徐本也。大徐作「象形及象旌旗之游」。皆不可通。其篆形各本古文與上小篆文皆不可分別。惟小徐本牽連其上端略異。與古文四聲韵及汗𥳑合。此等不能強爲之說。或曰當是「㫃古文以爲偃字」七字之誤。

康煕字典

部・劃數
方部・二劃

『玉篇』『唐韻』『廣韻』『韻會』於幰切『集韻』『類篇』隱幰切、𠀤音匽。音1同。『說文』旌旗之遊、㫃蹇之貌。从屮、曲而下垂、㫃相出入也。

又人名。字子游。『玉篇』舞歌。今作偃。

又『廣韻』『集韻』𠀤於蹇切、音鼴。音2義同。

異體字

『集韻』(欽定四庫全書本)所載の古文。

或體。『集韻』古文をこの形に作るとする情報もあるが不詳。

音訓義

エン(漢) オン(呉)⦅一⦆
エン(漢)(呉)⦅二⦆
官話
yǎn⦅一⦆
yǎn⦅二⦆

⦅一⦆

反切
廣韻・上聲・阮・偃』於幰切
『集韻・上上・阮・匽』隱幰切
『五音集韻・上聲卷第八・阮第七・影三偃』於㦥切
聲母
影(喉音・全清)
開合
等呼
推定中古音
ʔɪʌn
官話
yǎn
日本語音
エン(漢)
オン(呉)
旗、吹き流しの類。
『廣韻』: 旗旌之旒。
『集韻』: 『說文』「旌旗之游、㫃蹇之皃。从屮曲而下、垂㫃相出入也。」古人名㫃字子游。古作
『康煕字典』上揭

⦅二⦆

反切
廣韻・上聲』於蹇切
集韻・上聲下𤣗第二十八』於蹇切
『五音集韻・上聲卷第八・獮第十一・影三㫃』於蹇切
聲母
影(喉音・全清)
開合
等呼
重紐三
推定中古音
ʔɪɛn
官話
yǎn
日本語音
エン(漢)(呉)
⦅一⦆に同じ。
藤堂は本音に對する義を旗がゆらゆら搖れるさまの形容とする。
『廣韻』: 旌旗之皃。於蹇切。三。
『集韻』: 於蹇切。旌旗兒。文四。
『康煕字典』上揭

解字

旗の類の象形。とは關係ない。

白川

象形。旗竿とそれに著けた吹き流しの形。

『說文』に旌旗の游(吹き流し)㫃蹇たるの皃なり。屮に從ひ、曲りて垂下す。して相ひ出入するなり。と見える。

藤堂

象形。旗の搖らめくさまを描いたもの。旗指物を表すのに用ゐられる。

落合

軍旗の象形。甲骨文の左側に柄の部分があり、上部に吹き流しが風に靡く樣子が表現されてゐる。

甲骨文での用義は次のとほり。

  1. 旗。軍旗。《合補》5121辛丑卜㱿貞、王夢㫃、惟祐。
  2. 動詞。旗を立てる儀禮か。《合集》31023勿㫃。
  3. 地名またはその長。《合集》36775辛巳卜在陴貞、王步于旗…災。
游㫃
祭祀名か。

甲骨文の要素としては具體的に軍旗を用ゐた行爲のほか、軍隊の象徵としても用ゐられる。

漢字多功能字庫

甲骨文、金文は、旗が竿上ではためく形に象り、旂、旗の初文。

甲骨文での用義は次のとほり。

金文での用義は次のとほり。

季旭昇

釋義

旌旗。

釋形

甲骨文の㫃字を、羅振玉は旗竿と竿頭の飾りと游(吹き流し)の形に象るとする(『增考』p.45)。例示の金文「斿」の從ふ㫃は唯妙唯肖(本物そつくり、寫實的)である。戰國以後、旗竿の形が段々と譌變し、竿頭もまた譌して止の形となつた。

劉釗は、㫃は旂、つまりは旗字の初文で、もと旗の形に象り、『說文』が㫃の聲はに近いと謂ふのは、聲音における錯誤であるとする(『古文字構形研究』p.131)。ただ證據は無いと思はれる。

徐超

旂字條に、裘錫圭は、青銅器銘文はあるいは㫃を以て旂となし、㫃は旂の初文と思しく、後に聲符としてを加へ、yǎnの音は後起のものであるとする、と曰ふ。

屬性

U+3AC3

関聯字

㫃に從ふ字を漢字私註部別一覽・㫃部に蒐める。