十 - 漢字私註

説文解字

十
數之具也。爲東西、爲南北、則四方中央備矣。凡十之屬皆从十。
十部

康煕字典

部・劃數
部首

『唐韻』『韻會』是執切『集韻』寔入切『正韻』寔執切、𠀤音拾。『說文』十、數之具也。一爲東西、丨爲南北、則四方中央具矣。易、數生于一、成于十。『易・繫辭』天九地十。『前漢・韓安國傳』利不十者、不易業。

又通作。『孟子』或相什百。『前漢・谷永傳』天所不饗、什倍於前。『枚乗傳』此其與秦地相什、而功相百。

又『韻會』令官文書借作拾。

又『陸游老學菴筆記』轉平聲、可讀爲諶。【白樂天詩】綠浪東西南北路、紅欄三百九十橋。【宋文安公宮詞】三十六所春宮館、一一香風送管絃。【鼂以道詩】煩君一日殷勤意、示我十年感遇詩。

音訓

ジフ(呉) シフ(漢) 〈『廣韻・入聲・緝・十』是執切〉[shí]{sap6}
とを。とたび。すべて。

解字

白川

指示。算木に用ゐる縱の木の形。

卜文、金文の形は、横劃によつて一、縱劃によつて十、㐅によつて五を表す。金文ではのち、縱劃の下方に肥點を加へ、十の字となつた。

藤堂

指示。全部を一本に集めて一單位とすることを丨印で示すもの。その中央が丸く膨れ、のち十の字體となつた。

多くのものを寄せ集めて纏める意を含む。

落合

針や算木など直線狀の物體の象形とする説もあるが、甲骨文ではそれ自體を組み合はせて大きな數を表示してゐるので、純粹な指示記號から成る字と考へるのが妥當。

甲骨文では、二十から四十までの數字は縱線の數を增やして廿として表記してゐる。五十以上の數は、數字(五、六、七、八、九)と十を組み合はせて表してゐる。

甲骨文での用義は次のとほり。

  1. 數の十。10。《合補》24貞、燎十牛。
  2. 十番目。《合補》4貞、師不其獲羌。十月。
卅邑
殷都周辺の小都市の概數であらう。殷虛遺蹟周邊の發掘狀況とおほよそ一致する。《合集》707呼從臣、沚有𣌧卅邑。
[⿰冎兄]十終
意義不明の語。第五期(文武丁乃至帝辛代)に見える。

字形は金文で中央に點が加へられ、古文で點を橫線に變へた字形が出現した。

漢字多功能字庫

甲骨文、早期金文は丨につくる。構形については諸説入り亂れてゐる。一説に、針の初文で、針の象形符號で數字の十を記錄したといふ(裘錫圭)。于省吾は、數が十に至つて位を進め、復た返りて一となり、一と混淆するのを免れるために丨と書くといふ。朱芳圃は、十は杖の形に象るといふ。郭沫若、張秉權は、合はせて豎てた二掌の形、二掌の手指の數は十で、合掌を豎てると、少し膨らんだ一條の直線に見えるため、といふ。馬敍倫は、繩を結んだ形に象るといひ、上古には繩を結んで數を記したといふ。

西周中期金文に縱劃の中間に圓點を加へるものがあり、圓點を中空につくるものもある。春秋以後、圓點は伸びて短い横劃となり、七の字形に近くなる。羅振玉は、横劃の短いのが十、長いのが七であると指摘する。

甲骨文では數詞に用ゐる。序數にも基數にも用ゐる。

金文でも數詞に用ゐる。

戰國竹簡でも數詞に用ゐる。《清華簡二・繫年》簡3十又四年、厲王生宣王、宣王即立(位)。

屬性

U+5341
JIS: 1-29-29
當用漢字・常用漢字

関聯字

十に從ふ字

十聲の字

其の他

拾を十の大字に用ゐる。