読書メモのページ
 
「BENEDICTION」
DIANE SALVATORE 著
Naiad Press

10月30日

詳細はこちら
「19本の薔薇」
ミルチャ・エリアーデ 著
作品社

10月18日

ADPと呼ばれている、ルーマニアで最も有名な作家の元に、自分は彼の息子であると主張する若者がやってきた時から、全てが変わっていく。

ミルチャ・エリアーデの幻想小説で、ある種の管理主義社会、文明社会への批判となっているように思われる。
社会主義体勢下のルーマニアを舞台にしているが、それだけではなく全ての管理社会からの「絶対的自由」を得る為に、フォークロア、舞踊、歌などによる秘儀が必要であると登場人物の一人イェロニムが語る。
後書きによれば、ルーマニアは長らく多民族の配下にあり、独立運動を進める際には、やはり自民族の一体化を求めるため、民話・民謡の収集を行ったと言う。
この小説にはそうしたルーマニアの歴史的な事件も関わっているのであろう。

謎めいた女優ニクリナはオリエンタルな雰囲気のある舞踊を踊り、ADPを引きこんで行く。
東洋と西洋の融合、自文化の伝説の再発見などは、資本主義社会においても充分な批判となったのではないかと思う。
しかし、そう言った批判の意図があったかどうかは別として、幻想小説としてだけ読んでも面白いかと思う。
「ボリース・パステルナーク詩集」
ボリース・パステルナーク 著
未知谷

10月17日

二月だ インクをとって泣け! という惹句に惹かれて買った本。装丁も艶のある黒色を主体としていて綺麗。

前に読んでいたトラークルと比較すると、もっと比喩や言葉の使い方が鋭い感じで、理解しにくい部分もある。
ロシアの自然、季節などから生まれてくるその世界は、ロシアを知っていればもっと読んでいて楽しめそうな気がする、と思う。
トラークル詩集

「トラークル詩集」
瀧田夏樹編・訳 著
小沢書店

10月8日

双書・20世紀の詩人の中の一冊。現在は非常に残念ながら絶版のようである。
一読して、夢中になった。陰鬱なもの思い、その独特な色彩に満ちた言葉づかい…。パウル・ツェランに似ていると思ったが、実は、パウル・ツェランがトーラクルに影響を受けていた部分があると知った。何故今まで読んだことがなかったのか不思議なくらい好きな詩人。

トラークルについては、ここに詳しい。「ゲオルク・トラークルと表現主義
オーストリアの表現主義の一人として分類されているようである。

黒い部屋べやの中に 深まってゆく 狂気、
年寄りたちの人影が 開いた扉の下に、
と ヘーリアンの魂が 薔薇色の鏡にわが身を映している
すると彼の額からは雪と癩が沈む。

四方の壁からは星たちが消えた
そして光の白い群像が。
壁掛けから高地のむくろが立ち上がる、
丘辺に 朽ちた十字架の沈黙、深紅色の夜風に漂う薫香の甘やかさ。

ああ 黒い口たちの中の打ち砕かれた目たちよ、
と 孫は柔らかな発狂の中にあって
孤独に より暗い終わりに想いをひそめ、
その彼の上に もの言わぬ神が 青いまぶたを落としている。

ヘーリアン
「CHAIN LETTER」
CLAIR McNab 著
Naiad Press

10月1日

詳細はこちら
Stupeur et tremblement

「Stupeur et tremblement」
AMELIE NOTHOMB 著
Albin Michel

9月28日

「畏れ慄いて」というタイトルで邦訳されているアメリー・ノートンの小説。外交官の娘として、日本にも長く滞在していた著者自身が、日本企業で働いた経験を元に書かれている。

あまり時間がなく、きちんと辞書を引いて読んでいなかったので、後で邦訳で補完しながらの読了。
正直テーマが興味が持てなかったのと、まだまだ語学力の不足のため、楽しめない本だった。
現実にこうしたことがありうるのは分かるが、それほどヨーロッパと日本と違いはないのではないかとも思いもした。実際、こういう大企業での勤務経験がないので良く分からないという感じだ。
時代のせいもあるかもしれない。確かに、例えば森吹雪のような大企業で働くが故に男性的な価値観を内面化し、抑圧された(としか思えん)タイプの女性はいるものであるが、これまた日本特有のことでもないし(シガニー・ウィーバーが「9時から5時まで」で似たような女性を演じているではないか)。

異文化との軋轢から生じる著者の感情の流れには理解できるものがあるのだが、どうも、東洋対西洋という構図そのものがとにかくくどい。(まあ、登場する日本人がその構図を内面化して行る部分にもかなり違和感があるが。)
小説としても邦訳を読んでも文章も今一つ好みではなかった。
「思考機械の事件簿III」
ジャック・フットレル 著
創元推理文庫

9月21日

シャーロック・ホームズのブームの中で生まれた本というから、どうしても、ホームズと比べてしまうのも仕方がない。「思考機械」と渾名されるヴァン・ドゥーゼン教授がまた、何と言うか、ホームズの雰囲気をそのまま受け継いでいるので、新味がない。
古典として読むには面白いが、謎解きを楽しむ向きにはどうかと思う…。本文中に出てこない登場人物が犯人とか…。
「阿片と鞭」
マムリ 著
河出書房新社

9月18日

やっと読むことが出来た。アラブ小説全集の中の一巻。
詳細はこちら
「砂漠の千里眼」
フリードリッヒ・グラウザー 著
作品社

9月15日

警察刑事シュトゥーダーものであり、「アルジェリア」の外人部隊にいた千里眼伍長が予言する殺人の物語であると言えば、思わず読みたくなるのも無理はない…。
が、案に相違して期待ほどの面白さではなかった…。

何といってもアルジェリアが出てくるのが後半三分の一程度である。前半は殆どベルンでの事件とその調査であり、後は少しフランスで、それからようやくアルジェリアに辿りつく…といった様子で、そこからして期待外れであった(元々そういう期待をするほうが間違っていると言えば間違っているのかもしれないが)。
シュトゥーダーの外人部隊へのロマンというか憧れを語るところなどは面白い。

「狂気の王国」を読んだのは昔のことなので思い出せないが、この文章がまた癖がある。脈絡なくいきなりシーンが飛ぶところがあるので、それに慣れるまでが大変だ。慣れれば反対に気持ちが良い。
「シュトゥーダーもののシリーズ」というところに力点を置けば、中々面白いとは思う。
グラウザーは自身も外人部隊に参加しており、その話は別の小説にあるようなので、いつかそれを読んでみたいものだ…。
「老人たちの生活と推理」
コリン・ホルト・ソーヤー 著
創元推理文庫

9月7日

どこかでこの本を評して「やっとかめ探偵団」と言っていたのを見た記憶があるが、確かに、登場人物の一人は名古屋弁のようなイメージが…。
高級老人ホームで暮らす有閑な老婦人たちが、殺人事件の捜査を行うというユーモア・ミステリー。老人特有の考え方・行動のパターンなどの観察が面白い。
サスペンス感などはないが、年を取ると言うことをユーモアを込めて描いていて楽しく読めた。
back
アラブ小説紹介 ナイアドプレス作品紹介 読書メモ リンク
こちらは詩集・ミステリを中心とした読書メモのページです。気が向いたら随時更新。
アラブ小説・ナイアドプレス出版作品については、別ページでまとめています。

Copyright (C) 2002- ROSARIUM