読書メモのページ
 
「薄田泣菫詩集」
薄田泣菫 著
角川文庫

3月23日

「あくがれまどう」…という言葉こそこの詩集に相応しい…。

日本近代詩人の一人として有名な薄田泣菫の詩集。
非常にロマンティックで、情感に富んでいる…と感じるのは、文体が古語で、定型的な詩だからなのだろうか、テーマも去っていった恋人を思い、世を儚み(短歌的なテーマと感じてしまう)、自然を歌い、というものが多い。

どうしても古語なので、没頭して読むことができなかったのは、読む方の非力故だが、旧字を含めて、知らなかった言葉が多々あるので、語彙を増やすこともできて良い。

氷雨の海の海神(わだつみ)は、
椰子の実熟るる
常夏かげの國戀ひて、
胸さわぐらし。

海のほとりにて
「M・R・ジェイムズ怪談全集」
M・R・ジェイムズ 著
創元推理文庫

3月23日

イギリス古典怪談作家の一人として挙げられる、M・R・ジェイムズの怪談全集。
著者は古典に通暁した学者で、この怪談集でも、彼方此方に、古書を通じて、怪奇な世界へ落ちこんでしまう人々の姿が描かれている。
時代の影響もあってか、ストーリー自体は、非常にモラリスティックだとは思うのだが(「猟奇のいましめ」など、タイトルからしてそうではないか?)、それでも魔物の世界へいつの間にか踏みこんでしまうこともあるのだ、ということが自然に描かれている。
本人自体は、怪奇現象をあまり信じている訳ではない、というのも健康的で良い。(自分自身が信じている人のものはちょっと…)
反対に、あまり怖くないと言う欠点もあるかもしれないが。

三原じゅん「はみだしっ子」に出てくるので、長年探していた物であるが、この翻訳は、昨年度新たに全訳されたものである。全2巻。
「洞窟の骨」
アーロン・エルキンズ 著
ハヤカワ・ミステリ・エクスプレス

3月20日

スケルトン探偵シリーズ。
洞窟で発見された殺人したいと思われる骨の調査を頼まれるギデオン・オリヴァー。
執筆中の本のために、ネアンデルタールは人類か否かについて争う研究者たちにインタヴューをしているうちに、事件との関連性を感じ出す。

ネアンデールタルについての薀蓄、互いの学説について言い争う学者たちの姿を描いた部分などが面白い。
楽しく骨について、考古学の一部についてお勉強できるミステリのシリーズ、と言った所か。
クリス・ノーグレンのシリーズでもそうだが、旅行先のフランスの描写、特に食べ物のシーンが何だかいつも印象に残る。美味しそうだなあ。
「星降る夜のクリスマス」
長野まゆみ 著
河出書房新社

3月17日

クリスマスを舞台にしたある少年の一日の物語。フランス/パリ風の雰囲気を取り入れた設定の小品。話自体は、まあまあ、というところ。
本人のイラスト付きで、ポストカードに切りとってみるのも面白いかもしれない。
「海に霧 寺山修司短歌俳句集」
寺山修司 著
集英文庫

3月16日

寺山修司の歌集。「身を捨つるほどの祖国はありや」など有名な歌も収められている。ボルシェヴィキ思想の書物などの影響の見られる短歌もあって面白い。
どれを取っても鮮烈。
「天球儀文庫@ 月の輪船」
長野まゆみ 著
作品社

3月15日

久しぶりに読む長野まゆみ。以前に買っておいて読まずにいたものを発掘。
今更ながらに、長野まゆみの構築する独特な世界に魅了される。少年、近未来的でありながらレトロな不思議な学校空間、夏休み。
やはり先駆者だけはある、読んでいて面白い。
「続折々の歌」
大岡信編 著
岩波文庫

3月15日

朝日新聞に連載されていた「折々の歌」をまとめたもの。
自分好みの歌人を探す手がかりに。
「時計館の殺人」
綾辻行人 著
講談社文庫

3月14日

これは面白かった。トリックも良いし、追い詰められて行く密室殺人の描き方、意外な犯人(それほど意外でもないか?)、楽しめる。
「眼球綺譚」
綾辻行人 著
集英文庫

3月13日

綾辻行人の本は今まで三冊しか読んだことがないが、いつも読むと、「この人は本当はきっと普通の性格の良い人なのに、何故こんな幻想とかに拘るんだろう(無理しなくてもいいのに)」とか言うような感想を持ってしまうのだった。
しかし、この短編集は、予想より面白かった。それほど面白くないものもあるが、表題作「眼球綺譚」と「特別料理」は良かった。
何と言うか、綾辻行人の本を読んでいると、人物が機械みたいなので(論理によって性格のピースが組み合されているだけ、という感じがするのだ)、それもちょっと詰まらないところなのだが、特別料理の主人公の感情の推移は理解できるような気がして面白い。「特別料理」への興味が、放りっぱなしのカレーを本を読みながら食べている時…から始まるというのに、リアリティを感じる。

「咲谷由衣」という人物がキーパーソンとして、また主人公として、繰り返し現れるが、同一人物ではない。パラレルワールドというのでもないと思う。一つの女性のイメージを繰り返し語っているというような感じだろうか。
「ひとりで歩く女」
ヘレン・マクロイ 著
創元推理文庫

3月12日

1948年の作品。洋上で起きる殺人事件。一つの手記からそれは始まる…。

西インド諸島、という言葉だけで買った本だったが、期待以上に面白かった。構成もきっちりとしていて、最後まで読ませるし、予め手がかりは、全て書かれているので、謎解きをするのも楽しい。
時代感は多少あるが、現代に読んでも遜色なく楽しめる一冊だと思う。
back
アラブ小説紹介 ナイアドプレス作品紹介 読書メモ リンク
こちらは詩集・ミステリを中心とした読書メモのページです。気が向いたら随時更新。
アラブ小説・ナイアドプレス出版作品については、別ページでまとめています。

Copyright (C) 2002- ROSARIUM