読書メモのページ
 
「ジプシー歌集」
ガルシア・ロルカ 著
平凡社ライブラリー

4月9日

情熱的で甘くそれでいて乾いた言葉。ロルカの詩ではこの本が一番好きだが、それはアンダルシアの風景を思わせるからであろうか。
緑の月、薔薇、オリーヴ、黒い牛。血。
激しいがあくまで乾いた情緒。必携したい一冊。
「斎藤史歌文集」
斎藤史 著
講談社学術文庫

4月8日

先日他界した斎藤史の短歌と随筆をまとめた文庫。
226事件との関わり、戦前・戦中・戦後を通して歌の数々は、古典的な短歌を飛び越え、変わらぬ独特のものを持っている。
随筆も何とも言えない品のあるおかしみのようなものがあってよい。
「中勘助詩集」
中勘助 著
岩波文庫

4月4日

「銀の匙」で有名な中勘助の詩文集。平明でどこかユーモラスな詩風だが、どちらかと言うとやはり随筆の部分の方が面白い…と思う…。
「サンドバーグ詩集」
カール・サンドバーグ 著
新潮文庫

4月3日

20世紀初頭のアメリカの詩人、サンドバーグの詩集。
力強く、明快で、散文的なところと短い章句の視覚的なリズムなど、読んで惹きつけられる詩人。
「赤い鶏」
シャーロット・カーター 著
ハヤカワ・ミステリプレス

3月29日

あまり期待せずに借りて見たが、中々良かった。
主人公は、ニューヨークのストリートミュージシャンでサックスを吹いている黒人の女性である。
彼女がたまたま拾った男が自分の家で殺されてしまったことから事件に巻き込まれる、というストーリー。
ジャズ音楽がこの小説には溢れている。ジャズ音楽については何も知らないが、雰囲気が自由で、格好良い。ミステリとしては…トリックなどは特にどうということもないが、話の進め方はまあまあ。
それより何より、やはり、登場人物、会話の雰囲気が気に入ったので、次のシリーズも読んで見ようと思う。
「物語の作り方」
G・ガルシア=マルケス 著
岩波書店

3月28日

ガルシア・マルケスが、映画学校で行ったシナリオ教室の模様。
数人でブレインストーミングしながら物語を作り上げていく様子が読める。
物語るとは何か、ということなど、また、実際のシナリオを作り上げる技法についても興味がある人が読めば、役立つだろうと思う。
読んだ後は、映画について何も知らないのに、画面の切り替えやショットなどを注意して見るようになってしまった。
「ブラジル蝶の謎」
有栖川有栖 著
講談社NOVELS

3月26日

前読んだロシア紅茶…より面白く読めた。
エラリー・クイーンへのオマージュを感じなくもないが、火村英生は、やはり最後は、ドルリー・レーンのようになるんだろうか。とか思ったりした。
「女ゲリラたち」
モニック・ウィティッグ 著
白水社

3月25日

以前読んで魅惑的だったので図書館から借りてきた(絶版)。
70年代に書かれた、フェミニズム的な文学作品。女性による世界の転覆を描いたアナーキーで激しく美しい散文詩群…と云いたいような小説。
文章も独特でリズム感がある。

書かれた時期が時期だけに、勿論、共産主義的革命の夢も描かれており、また、男性支配の世界への戦争の部分は単調で単純でもあるのだが、女性だけのユートピアでも描いているような前半部分は魅惑的。当時読んだら、さぞ破壊的な感じがしたであろう。

太陽が昇ってから、彼女たちはからだに油、白檀、きょうおう、くちなしを塗る。彼女たちは、片足を木の幹にかける。両手で代わるがわる脚をこする。脚の皮膚が光る。ある女たちは寝そべっている。彼女たちを他の女たちが指の先でマッサージする。裸のからだが朝の強い光線を受けて輝いている。彼女たちの脇腹の片側は金色の光で虹色にきらめく。円を描いてのぼる木の幹に朝日が斜めに光線を当てるとき、同じことが起こる。そんなふうに光の当たった円弧は光を少しを反射させて、その輪郭がぼけている。

彼女たちは言う、時間をかけて、新しい言葉を捜す新しい人間を考えること。強い風が地を払う。太陽が昇るだろう。鳥たちはまだ鳴かない。空のリラとすみれの色が明るくなる。彼女たちは言う、牢獄は開かれて夜の宿舎となる。彼女たちは、内部と外部と言う考えと絶縁したと言う。工場は、それぞれ、壁のひとつを倒したと言う。役所は屋外に、堤の上に、稲田のなかにおかれたと言う。彼女たちは言う、女であるこの私が、男たちが私たちの敵であることをやめたときに、彼らに対して乱暴に話すだろうと考えるなら、それはひどい誤解だ。


シェリ・S・テッパーの「女の国の門」を思い出したりもするが、そちらの方が現代において読むにはもっと印象的な小説であろう。(内容自体もはっきりしているし。)
「バイロン詩集」
バイロン 著
新潮文庫

3月24日

叙情的で情熱的で激しくロマンティック。時代が違うと思わなければ、読んでいて疲れてしまいそうなほど。
距離を置いて読めば、味わえないが、そのまま読むと激情の虜となってしまうでしょう…。

船よ、おまえとともにこそ、速やか衣
泡だつ海原のうえを走ってゆこう
いずこの岸辺へ運ばれるとも恐れない
ふるさとの岸でない限りは。
きたれ、きたれ、紺碧の浪よ
またやがてその浪も目から消え去れば
きたれ、砂漠よ、巌の洞よ
そしてああ、わがふるさとよ、−−さらば

チャイルド・ハロルドの告別

われは風にうち乗るもの
颶風を巻きおこすもの
わが乗りすてた疾風は
いまも、稲妻に燃えさかる
荒磯と海を越えて急迫しながら
われは嵐のうえをかすめた
わが往きあった艦隊は、めざましく帆走ったが
この夜の明けぬ間に、海底にあろう

風の精の歌
「ユリ迷宮」
二階堂黎人 著
講談社新書

3月23日

二階堂蘭子が活躍する短編集。

評判が悪いので敢えて読んでみたが、あまり面白くなかった…。
昭和45年代くらいを舞台にしているらしいが(自分が生まれた頃ですな…)、その割には、どうとでも取れるような描写に思える。
トリックがどうこう、と言うのは、ミステリを読む上であまり興味がないので、まずトリック重視の展開が退屈で、人物や雰囲気が自分に合わないので楽しめなかった。(このトリックが本当に興味深いものかどうかは私には判断できないのだが…)
中篇の「劇薬」は、コントラクトブリッジという小道具を最大限に活用していて、また、古典ミステリのオマージュとでも言えそうな造りになっているので、そういうのを楽しむことはできるかもしれない。
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