第弐號報告書
ヌメロ ドゥ
第弐號報告書


共通様式1  
年月日
            
調査官番号
F09377501
氏名
ギデオン・ハーディー
派遣惑星
ドゥガ
出身県
ギザール区第9県
身分措置


 第2號(赴任六ヶ月目)の報告書を別添のとおり提出します。
 
  

署名
             
1.惑星調査官報告書
2.添付資料(有) 録音音声
 
 

 

 

共通様式2

惑星調査官報告書






第2號(赴任六ヶ月目)として、以下の項目について報告します。

1)赴任六ヶ月で観察された住民の生活・特徴

この惑星の住人の文化的特徴は「騒がしさ」にある。この騒がしさは筆舌に尽くしがたい。
昼間の往来においても、まずは、警笛での合図が欠かせない。運転手はそれだけではなく、車両の窓を開け放ち、罵声を上げながら往来する。
窓を開け放つのは、恐らく、車両の空気清浄装置に欠陥があるものが多い為とも思われるが、戸外の空気に対する一種の信仰に似たもの    野外の空気は新鮮で健康に良い、など    があるせいかとも考えられる。
車両に騒音防止シールドは施されておらず、また、稀に見かけるシールドの施された車種は、故意に破壊されていることが多い。
また、歩行者も叫ぶ、罵る、歌う、のいづれかを行いつつ通行するので、往来の音量レヴェルは大変なものである。その為、赴任当初は外を歩いた後は耳に圧迫感、痛み、などの異常を覚え、数時間回復しなかったが、徐々に慣れつつある。

恐らく、幼児期よりのこの騒音のせいか、住民の多くは難聴気味なのではないかと思われる。ほぼ全員が、かなりの大声で喋ることからもそう推察される。互いの話を互いに聞いていないことは良く見かける光景である。この聴覚の低下もその原因の一つではあると思う。
しかし、それだけではなく、文化的に、まず喋りきったものが論争の勝者となるという考えがあるようである。ある種の力の論理である。
相手を遮って、自分の話を続行するための技術、言いまわし、呼び掛けなどが非常に豊富で洗練されているとさえ言える。言語学的にこの観点からの研究が行われると面白い成果が得られるかも知れぬ。
しかしながら、これは調査官として仕事を行う上での難点ともなる。必要とあらば、打ち合わせなどの場には小型拡声装置を携行せざるを得ない。
若者の特徴。
思春期には、一種の気狂い的症状に陥る。これは、多くの惑星で共通してみとめられる過渡的な異状であるが、この惑星ドゥガでは、この期間が非常に長い。短くても、7〜8年、悪くすると、15年にも渡って症状が継続する。
また、症状もこの惑星の文化に特徴的である。それは、「奇声」の一言に尽きる。
他人を見かけると、決まって異様な大声を上げる。また、この「奇声」は主として高音である。低音域では、聴力が低下している為、知覚が難しいせいではないかと思われる。また、高音であればあるほど、脳に対する影響が大きく、自涜的快感があるとも考えられる。それは、発生者に浮かぶ奇妙な恍惚とした表情から推察される。
奇声の内容は、未言語状態である。何らかの法則に従っているとも考えられるのだが、奇声を上げる当人すら理解していないので、言語と呼ぶには難がある。
この異状時の、脳の電流派測定を行う為の被験者を探すも、奇声を上げたものへの接触を試みると、即座に脱兎の如く逃走するため困難である。
また、たとえ逃走はしなくても、該当者へ奇声状態の質問を試みると、数秒前のことであるにも関わらず、全く記憶になく、判で押したように「何もしていません」と答える。これも脳波の異状による、瞬発的なアムネジア(忘却状態)ではないかと思われるが、状態の再現が難しいため、確定した調査が行えない。
現在までのこれらの考察は曖昧なままにとどめ置かれている状況である。
この奇声状態は、人間の音声が引き金となって、狂騒状態にまで陥ることがある。「奇声」に対して、応答の声を発すると、更に興奮し、奇声を上げ、自らの奇声に更に興奮するという悪循環を引き起こすからである。
奇声状態にある若者は、決まって集団行動を行うため、若者同士に伝播し、耐え難い猥雑な事態に陥る。
このことからも、決して「奇声者」に応答してはならない。単独で行動している場合は街路では一切発声しないこと。絶対の沈黙が強いられる。
猶、この「奇声」は、見慣れない者への恐怖感から生じているとも考えられる。見慣れた者に対しては発生されることがないからである。つまり、家族同士、兄弟同士での奇声の応酬は見うけられない。また、外部者への順応程度の高い者ではほとんど異状は認められない。このことから、近親者による適切な共同行動が行われれば、「奇声」行為は徐々に解消されるのではないかとも思われる。
古文献に拠れば、過去「惑星間移民期」に、本星の狂人をまとめて送還・移民させた星があるという。
惑星ドゥガにおける、特徴的・遺伝的な異状狂躁は、この惑星がかつての狂人送還地であったのではないか、というような会話が当の惑星の住民間で交わされるのを耳にしたこともある。住民自身もこの狂騒状態が特異であると感じている証左である。
しかしながら、このような送還そのものが論理的に無意味であるから(狂騒は必ずしも遺伝の問題ではないことは、同時より既に明らかであったわけなので)、根拠のない説と思われる。
以上

 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
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