潜水者たち
レ・プロンジュウ
潜水者たち


砂浜に、頭巾のついた外套を目深に被ったものたちが、円形をつくり立っていた。頭巾の縁に縫い取られた特異な青い飾りから、「潜水者たち」とも言われる彼らはまさにその名のとおり、海を奉じるものだった。
「潜水者たち」は外套の中には、皆似たようなゆったりとした白い長衣を着こみ、布でその口元までを覆っていたため、顔の仔細を見て取ることはできず、年齢も性別すらも、全く判じ取れなかった。
白い砂浜を踏む革のサンダルの足取りだけがかろうじて覗いている。繰り返す重い波音の中に、その足音も、呼吸の音も沈んで聞き取ることが出来なかった。摺足の足取りは円を描く。「潜水者たち」はその円陣の中心の回りを無言で回っているのだった。
「潜水者たち」の旋回が止まった。人々は、ゆっくりと円陣の中心へと向かいあわせになっていった。
円陣の中心にもまた一人の「潜水者」が立っていた。
しかし、その外套と、衣は青く染めぬかれている。更にその青い外套には、渦巻き文様を模った青い縫い取りが全面に施され、僅かな濃淡を生んでいる。それが、海風と光の加減で、浮かび上がりまた沈む。顔にかかる青い石の飾りは他の衣と同じである。水の滴のようにゆらゆらと落ちかかっている。
その「潜水者」は衣の上から縛められていた。細く金色に塗られた綱が、その腕を脇に固定したまま、ぐるりと規則性を持って体に巻きつけられていた。
中央の「潜水者」と向かい合って立っている一人の影が話し始めた。それはおそらく古語の一種であろう、重々しくゆるやかな旋律をもって音楽のようにその唇から漏れてくる。だが、潮の音の中にそれは切れ切れにしか聞こえてこなかった。
参入するもの…、誓…、生まれ故郷…、永遠の生命…、秘儀…、縛めを解き放つ…、海、そして海…、
祝詞のようなその語りが止むと、その人影は、手に持った一条の杖を振り上げる。
それを合図としたかのように、四人の「潜水者」が前に進み出る。「参入者」を抱き上げて、板のようなものに横たえる。そして、四隅を担ぎ上げる。と、一群は、ゆるりと開いて二列を作り、その四人の後ろについた。
導くものが先頭に立ち、一行は砂浜を歩き始めた。奇妙な葬列のように。
砂浜を抜ける先に、一艘の船が停泊しているのが見えていた。

 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
無花果の間
正門


 
 
 
 
 
 

画像 Rose Moon
ギュスターヴ・モロー  岸壁のサッフォー