時の神に捧げものを。

それは夏至の日でした。その国を治める次の王を選ぶためのお祭りがありました。前の王様もその前の王様も、そのまた前の前の随分と以前から王様には二人同時に御子が生まれるので、どちらか一人を王様に選ぶために神様に捧げ物をしたのですよ。
時の神に捧げものを。
森の中に設けられた神殿の前には、神官がずらりと立ち並んでいました。長く裾を引く赤と黄と紫の衣を身にまといまして、あるものは鋭い剣、あるものは甘い香りの果物、豪奢な縫い取りのある長い布、大きな水盤に満たした水、きらきら輝く銅鑼、笛、などをそれぞれ手にし、静かに立っておりました。
銅鑼を持った神官が銅鑼を一つ打ち鳴らすと、輿に乗せられた二人の御子が運ばれてきました。長い袖の衣装を着けて真っ黒な髪の毛を二つに結い、二人とも同じように墨で目を隈取り、白い粉を頬に叩いて唇には鮮やかな紅を差していました。
神官がもう一つ銅鑼を打ち鳴らすと他の神官が扉を開けました。二人の御子は輿に乗せられたまま神殿に運ばれました。
もう一つの銅鑼でお子達は輿から神殿の中央に向かい合わせに置かれた椅子に座らされました。
そして銅鑼が鳴るたびに神殿の入り口に神様のための敷物が引かれて、果物が置かれ、そして一人の神官は、水に浸した榊を振ってあたりを清めて回りました。
その間中、二人の御子は静かに小さな手を膝において、向かい合ったまま身動き一つもせず座っておりましたのです。
最後に銅鑼が一つなると、神官たちは神殿を出ました。そして笛を持った神官をしんがりにして森の道へと帰りはじめました。
最後に残った笛を持った神官は神様を呼ぶ音楽を吹きました。そのうちに森の奥から、ずうしりと重い重い這いずる音が聞え始めたのです。神様の姿を目にしないうちにと笛を持った神官も音楽を止めて急ぎ森の道を戻っていきました。

◇ ◆ ◇


次の朝、また神官たちは一つのお輿を担いで森の神殿への道を登って来ました。神殿の扉は締められておりました。
また銅鑼打ちの神官が銅鑼を鳴らしますと、孔雀の羽を手にした神官が舞い、他の神官たちが扉を開きました。
と、どうしたことでしょうか、そこには二人の御子が共に、ゆうべ残されたままに、今は互いの腕を投げかけあって床の上ですやすやと眠っておったのでした。
神様が現れた証拠には、神殿の周りにはくっきりと長い引きずった跡とぬめぬめ光るものがついておりましたが。
神官たちは黙って二人の御子をそのまま輿に乗せました。神様がどちらの御子も御召しにならなかったので、二人の御子を共に王様に御命じになったものと考えたのです。 御子たちは手を取り合って一つのお輿に乗りました。山道を下って王宮に戻ると、神官たちは輝く長い袖の衣装を二人にまとわせ、新しい王を迎えました。二人の王は共に冠を頂くと、王宮の手すりに身を顕わして、民衆に小さな手を振りました。
その日以来、王国は栄えに栄え富みに富み、田には毎年黄金の稲穂が食べきれぬほどに実り、樹木の花は咲き誇って果実は枝が折れるほど、豚も人も数多くの子を成して、絶えて飢えるもののない有様でした。
二人の王は昼は共に政を行い、夜は共に同じ寝台で眠り、離れることはありませんでした。けれども、王位につかれた御二人共に、決して子をお産みになることはなかったのです。
王家はお二人が亡くなられたその日に途絶え、そして王国も滅んだのですよ。 

 
 
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無花果の間
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