婚礼には花持て集え、歌と踊りを捧げよう。薔薇の顔(かんばせ)、黒曜石の瞳、銀の泉に裸足を浸せ、ガゼル、ガゼル、ガゼル。
婚礼の歌

 
求めるものには求めるものを与えよ。しかして、彼の求むるものを誰知るや。


「私は長い間旅をした。郷に帰ろうと思ったことはない」
「ジャバル・ダルハムに婚礼があった。私は歌いに行った。娘が花を髪に刺して飾っていた。姉に良く似ていた」
「姉は、戻るなと云った。だが、私は、姉の婚礼には歌いに行くと約束した。姉は蒼い花を髪に刺していた。馬に乗って出た時、姉は踊っていた」
「私は何を求めてここに来たのか」
薬草園の女は言う。
「お前の求めるものはお前が知っている」
吟遊詩人は呟いた。
「姉は死んだのだろうな。父は厳しかった。馬を盗むのは大罪だ。私の郷は貧しかったからな」
そして、吟遊詩人は、もう語ろうとはしなかった。ただ、草園の月光の中に佇み花を見ているだけだった。

 
 
 
無花果の間
正門