吟遊詩人の酔うに従って、広域共用語が、その生まれの言葉に置き換わって行った。もとより、限られた言葉しか持たない広域共用語では語り難いものだ。
「私は…何と言うのだ、西の方で生まれたのだ。郷では羊と馬を持った。共用語では何と言うのか知らん。私は昔から色んな声を出すことが出来たんだ。男みたいにも話せる」
にやりと笑った。そして、何事か言った。
「そのお陰で、どこに行っても食えた。旅は面白い」酒を啜る。「お前は旅をしたことがあるか」
「ある。知恵を求めるには旅が必要だ」
「そうだ。知恵か。とにかく面白いんだ。だからこうして歩き回る。それに歌える」
「それでいてお前はお前が何を求めているのかを未だ知らないのだな」
ラナアは驚いて見せる。「何のことだ」
「お前は何を求めてここに来たのだ」
「蒼い花」
「その花をどこで見た。何故そこへ帰らない。何故求めるのか知らずに、七日もかけてここまで来るのか。魔女と呼ばれているのに」
「だからいいのさ。きっとここにあるだろう」 |
「私は魔女ではない。お前はお前の求めるものを知らなければならない。それを知っているのはお前だ。お前は恐れているだけだ」
「私は恐れてなどない」
「答えはお前の中にあるのだ。知らないものは探しても見つからぬ。お前には足りないものがある」
蝋燭の灯が途切れ、部屋は暗闇に落ちた。 |
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