娠 - 漢字私註

説文解字

娠
女妊身動也。从聲。『春秋傳』曰、后緡方娠。一曰宮婢女隸謂之娠。
十二女部

説文解字注

娠
女妊身動也。凡从辰之字皆有動意。是也。妊而身動曰娠。別䛐也。渾言之則妊娠不別。『詩〔大雅・大明〕』大任有身、生此文王。《傳》曰、身、重也。葢妊而後重。重而後動。動而後生。从女辰聲。失人切。十三部。『春秋傳』曰、后緍方娠。哀元年・左傳』曰、后緍方娠、逃出自竇、歸于有仍、生少康焉。方娠者、方身動去產不遠也。其字亦叚震爲之。『昭元年・左傳』邑姜方震大叔、是也。若生民載震載肅。《傳》曰、震、動也。《箋》云、遂有身。則以妊解之。一曰官婢女隷謂之娠。方言〔三〕』曰、燕齊之閒養馬者謂之娠。官婢女廝謂之娠。《郭注》娠音振。女廝、婦人給使者。

康煕字典

部・劃數
女部・七劃

『廣韻』失人切『集韻』『韻會』『正韻』升人切、𠀤音申。『說文』女妊身動也。『左傳・哀元年』后緡方娠。

又『集韻』之刃切、音震。義同。通作

又『正韻』之人切、音眞。『揚子・方言』燕齊之閒、養馬者及官婢女厮通謂之娠、亦曰侲。

音訓・用義

シン(漢、呉) 〈『廣韻・上平聲・眞・申』失人切〉[shēn]{san1}
はらむ

解字

白川

形聲。聲符は。辰は蜃。辰に動くものの意がある。

『説文解字』にはらみて身動くなりとする。

また一に曰く、女隸、之れを娠と謂ふ。と見えるが、その義の字は侲。『説文解字』新附に侲は僮子なりとあつて、僕僮をいふ字。『方言・三』に官婢女廝(召し使ひ)を娠といふと見える。

藤堂

と音符の會意兼形聲。辰は、貝のべらべらと振れる舌を描いた象形字。娠は、胎兒がびくびくと振動すること。

と同系の言葉。また(身籠もつて腹が膨れた姿)と同系と考へてもよい。

落合

甲骨文にに從ふ字があるが亡失字。辰を聲符とする形聲字であらう。第一期(武丁代)に女性の名に用ゐる。《合集》14070…娠…其嘉。

篆文で妊娠を意味して同形の形聲字が作られた。辰が胎兒の振動も意味する亦聲字とする説もある。

漢字多功能字庫

甲骨文はに從ひ、疑ふらくは女性の名に用ゐる。小篆は女に從ひ辰聲。本義は懷孕。

甲骨文辭殘に疑ふらくは女性の名に用ゐる《合集》14070……娠其嘉。古人は男を生むを「嘉」とし、女を生むを「不嘉」とした。

『説文解字』娠、女妊身動也。(後略)《段注》凡从辰之字皆有動意、震、振、是也。妊而身動曰娠、別詞也。渾言之則妊娠不別。傳世古書では本義に用ゐ、懷孕を指す。『左傳・哀公元年』后緍方娠、逃出自竇、歸于有仍、生少康焉。杜預注娠、懷身也。

また『説文解字』に別の義を收める。娠を宮婢、奴婢と解く。この種の説は『方言』にも見える。『方言』燕齊之閒養馬者謂之娠、官婢女廝謂之娠。

屬性

U+5A20
JIS: 1-31-17
當用漢字・常用漢字