某 - 漢字私註

説文解字

某
酸果也。从。闕。
第三句の後の段注に此闕謂義訓酸而形從甘不得其解也。玉裁謂、甘者、酸之母也。凡食甘多易作酸味。水土合而生木之驗也。莫厚切。古音𡉈一部。といふ。
木部
槑
古文某从

康煕字典

部・劃數
木部五劃

『玉篇』古字。『說文』酸果也。从口含一。註詳七畫。

又『唐韻』『集韻』『韻會』『正韻』𠀤莫後切、謀上聲。『唐韻』詔前人之言也。『玉篇』不知名者曰某。『韻會』臣諱君曰某。『論語』某在斯。『左傳・宣十年』某氏之守臣某。

又泛言事物亦曰某。『禮・少儀』問品味、子食于某乎。問道藝、子習于某乎、子善于某乎。

又『正韻』莫補切、音姥。義同。

甘本作𤮺。當爲某、俗作某、非。

廣韻

詔前人之言也。

音訓

ボウ(漢) 〈『廣韻・上聲・厚・母』莫厚切〉
それがし。なにがし。

解字

に從ふ。

資料の字形を見るに、に從ふ形には見えない。

白川

の會意。曰は神に祝禱する祝詞を入れる器。それを木の枝に著けて神に捧げ、神意を問ひ謀る意で、謀の初文。金文にこの字を「はかる」と用ゐる例がある。

説文解字に酸果なり。木に從ひ、に從ふ。闕。とする。酸果は梅。字をの初文とするものであるが、その形義を説き得ないので「闕」といふ。

『詩・ 周頌・訪落』の序に嗣王、廟に謀るなりとあり、謀とは神意に謀ること、某がその初文。

のち何某の意に用ゐる。『儀禮』に多く見えるが、それは神靈に對していふ語で、『禮記・曲禮下』に使者自稱曰某。(使者自ら稱して某と曰ふ)とあるのは、その名殘であらう。

藤堂

(口中に含む)の會意で、の本字。

なにがしの意に用ゐるのは宛字で、明確でないとの意を含む。

漢字多功能字庫

金文はに從ひ、甘は人の口に象り、一點は口に物を含むことを指し示し、味を表す。全字で樹上に酸つぱく甘い梅の果實のあるさまを表す。徐灝『說文段注箋』某即今酸果梅字、因假借為誰某、而為借義所專、遂假梅為之。『玉篇』某、古梅字。段注此闕、謂義訓酸而形從甘、不得其解也。『說文通訓定聲』五味之美皆曰甘。説文解字は某の本義を酸果とするが字が甘に從ふことの釋を缺き、段玉裁はその解を得ず、ただ闕として釋せざる所以と説くが、その實は、朱駿聲が(『說文通訓定聲』に)示すとほり、甘字の初義は(甘味以外の)各種の味を指し、後はに專ら甘味を指すやうになつたといふことで解くことができる。

某はの初文。某人の某に借用されたため、を加へて字を作り、梅の木を表す。楳は説文解字で梅の古文とされ、後には楳はあまり用ゐず、梅を多く用ゐる。

戰國竹簡において、某を本義に用ゐ、梅を表す例が最も早く見える。

金文での用義は次のとほり。

戰國竹簡ではまた某人の某を表す。《九店楚簡》簡43含(今)日某將欲食

屬性

U+67D0
JIS: 1-43-31
當用漢字・常用漢字

關聯字

某聲の字