執 - 漢字私註

説文解字

執
捕罪人也。从、㚔亦聲。之入切。
㚔部

説文解字注

執
捕辠人也。辠各本作罪。今依『廣韵』。《手部》曰、捕者、取也。引申之爲凡持守之偁。从丮㚔。會意。㚔亦聲。之入切。七部。今隷作執。

文中の㚔字は嚴密には一橫劃を缺く形に作る。

康煕字典

部・劃數
土部・八劃

『唐韻』『集韻』『韻會』之入切『正韻』質入切、𠀤音汁。守也、持也。『書・大禹謨』允執厥中。

又處也。『禮・樂記』師乙曰、請誦其所聞、吾子自執焉。

又塞也。『左傳・僖二十八年』子玉使伯棼請戰曰、非敢必有功也、願以聞執讒慝之口。

又父之友曰執友。『禮・曲禮』見父之執、不問不敢對。『後漢・馬援傳』援爲梁松父執、松貴拜援牀下、援不之答。

又捕也。『禮・檀弓』肆諸市朝、而妻妾執。『孟子』執之而已。

又姓。又執失代、三字姓。

又與慹同。『前漢・朱博傳』豪强執服。《註》謂畏威懾服也。

本作𡘺、省作執。亦作瓡。

部・劃數
大部八劃

異體字

或體。

簡体字。

音訓

シフ(漢、呉) 〈『廣韻・入聲・緝・執』之入切〉{zap1}
シツ(慣)
とる。とらへる。もつ。まもる。はからふ。むすぶ。

解字

白川

幸との會意。幸は手械てかせの形。手に械を加へて罪人を拘執することをいふ。

『説文解字』に辠人を捕らふるなり(段注本)とし、字をの亦聲とするが、卜文、金文の字形は兩手に倂せて械を加へる形。

拘執の意より執持の意となり、執事、執行、また執禮のやうに用ゐる。

藤堂

手械の形と(人が兩手を出して跪いた姿)の會意。坐つた人の兩手に手械を嵌め、確りと捕まへたさまを示す。

落合

手枷の象形であるの會意で、初文は𡙕に作り、捕はれた捕虜を表してゐる。甲骨文の異體字には、㚔だけのものや、㚔とそれに拘束された兩手の形のに從ふものなどがある。

甲骨文での用義は次のとほり。

  1. 捕虜。祭祀の犧牲としても用ゐられる。《殷墟甲骨輯佚》563+566甲辰卜、來執、其用、王受祐。
  2. とる。とらへる。敵や獲物を捕らへること。《甲骨拼合集》222己巳貞、執井方。
  3. 占卜用語。物事がうまくゆくことを示す。執[⿰欠攵]や印執[⿰欠攵]とも言ふ。《合集》21708丁酉余卜、執[⿰欠攵]。
  4. 第一期(武丁代)〜一二間期(祖己代)の人名。殷金文の圖象記號にも見える。《合集》1022丁卯卜、勿令執以人田于豩。

秦代〜隸書で㚔を幸に、丮を丸に替へ、執の字形になつた。

𡙕にを加へた形は報に當たり、後に罪に服させる意として分化し、更に「むくいる」の意となつた。

漢字多功能字庫

甲骨文、金文は、に從ひ、㚔亦聲。丮は跪坐する人が兩手を伸ばすさまに象り、㚔は刑具の手枷に象る。執は人の兩手に手枷を掛ける形に象る。刑具で俘虜あるいは囚犯を拘執する(捕らへる)意と解き、本義は捕らへること。後に執行、執掌の意を派生する。

後に金文は丮と㚔が分離した。早期金文の丮の下部にはあるいはを加へ(執父乙爵: この器の丮の頭部は口を開く形に作り、と形が近い)、後期には止が變形しての形となつた(多友鼎)。

甲骨文では、拘執を表し、また人名や氏族名に用ゐる。

金文での用義は次のとほり。

屬性

U+57F7
JIS: 1-28-25
當用漢字・常用漢字
𡘺
U+2163A
𡙕
U+21655
U+6267

関聯字

執に從ふ字を漢字私註部別一覽・㚔部・執枝に蒐める。