旣 - 漢字私註

説文解字

旣
小食也。从聲。『論語』曰、不使勝食旣。
初句の段注に此與口部音義皆同。『〔禮記〕玉藻』、『〔同〕少儀』作禨。假借字也。引伸之義爲盡也、已也。如『春秋』曰有食之旣。『〔史記〕周本紀』東西周皆入於秦。周旣不祀。正與小食相反。此如亂訓治、徂訓存。旣者、終也。終則有始。小食則必盡。盡則復生。といふ。
皀部

康煕字典

部・劃數
无部七劃

『唐韻』居豙切『集韻』『韻會』居氣切、𠀤音曁。『說文』小食也。从皀㒫聲、論語曰、不使勝食旣。○按今『論語』作

又『玉篇』已也。『易・小畜』旣雨旣處。『詩・召南』亦旣見止、亦旣覯止。

又『博雅』盡也。『易・旣濟疏』旣者、皆盡之稱。『書・舜典』旣月。『左傳・桓元年』日有食之旣。

又『博雅』旣、失也。

又與漑同。『史記・五帝紀』帝嚳旣執中而徧天下。《註》徐廣曰、古旣字作水旁。

又『集韻』几利切、音冀。義同。

又許旣切、音欷。或作旣。饋客芻米也。『禮・中庸』旣廩稱事。《註》旣讀爲餼。餼廩、稍食也。

部・劃數
无部七劃

『正字通』俗字。

異體字

いはゆる新字体。

音訓

キ(漢) 〈『廣韻・去聲・未・旣』居豙切〉
すでに。つきる。をはる。

解字

白川

の會意。皀は𣪘(簋)の初文。盛食の器。旡は食に飽いて、後ろに向かつて口を開く形。食することすでに終はり、嘅氣を催すさまを示す。

説文解字に小食なりといふのは、段注にいふやうにの聲義を以て解するもので、旣字の本義ではない。

藤堂

御馳走と音符の會意兼形聲。旡は、腹一杯になつて、おくびの出るさま。旣は、御馳走を食べて腹一杯になること。限度までいつてしまふ意から、「すでに」といふ意味を派生する。

落合

會意。甲骨文はに食物を盛つた形のまたはその略體と、人が顏を背けた形のに從ひ、旡亦聲。既に食事を終へたことを表す。異體字にを用ゐて身體全體を後ろに向けたものや、旡を二つ用ゐたものもある。

甲骨文での用義は次のとほり。

  1. すでに。過去、または過去完了を示す語。副詞としても時間を表す語としても用ゐられる。
    • 《殷墟花園莊東地甲骨》244丁卯卜、旣雨、子其往于田、諾。御。
    • 《英國所藏甲骨集》849貞、王勿狩爻、旣陷麋、歸。九月。
  2. 祭祀名。《合集》14534辛巳卜貞、吿旣燎于河。
旣食
時間を表す語。朝食後の時間帶であらう。《殷墟花園莊東地甲骨》35壬申卜、旣食、子其往田。用。

漢字多功能字庫

甲骨文、金文はに從ひ、旡はまた聲を標す。皀は食器を象り、旡は人の口が食器から背を向けるさまを象り、全字で人が食器の前に坐り、滿腹になつた後、振り向いて食器を見ざる意。本義は食事を終へること、轉じて完成、已にの意。

旣と卽はいづれも人が食器の前に坐るさまを象る。兩者の區別は、旣が口を食器から背け、食事を終へるの意を有し、卽は口が食器に向かふ形で、人が食事をしようとしてゐることを表す。

戰國竹簡では旡をや次に改めた字があり、口の形が食器に背く形ではない。《上博竹書二.民之父母》簡7などの字形を參見すべし。

甲骨文での用義は次のとほり。

金文での用義は次のとほり。

戰國楚簡での用義は次のとほり。

屬性

U+65E3
U+FA42 (CJK互換漢字)
JIS: 1-85-11
既︀
U+65E2 U+FE00
CJK COMPATIBILITY IDEOGRAPH-FA42
既󠄀
U+65E2 U+E0100
CID+13334
既󠄁
U+65E2 U+E0101
CID+1591
既󠄂
U+65E2 U+E0102
MJ013146
既󠄃
U+65E2 U+E0103
MJ013147
既󠄄
U+65E2 U+E0104
MJ030263
U+65E2
JIS: 1-20-91
當用漢字・常用漢字

関聯字

旣聲の字