冄 - 漢字私註

説文解字

冄
毛冄冄也。象形。凡冄之屬皆从冄。而𤥎切。
冄部

説文解字注

冄
毛冄冄也。冄冄者、柔弱下垂之皃。《須部》之𩒹、取下垂意。《女部》之㚩、取弱意。『〔楚辭〕離騷』老冄冄其將至。此借冄冄爲冘冘。『詩〔小雅・巧言〕〔大雅・抑〕』荏染柔木。《傳》曰、荏染、柔意也。染卽冄之假借。凡言冄、言㚩皆謂弱。象形。而𤥎切。七部。

康煕字典

部・劃數
冂部・二劃

『集韻』『韻會』𠀤而琰切、音染。『說文』毛冄冄也。《徐曰》冄、弱也。

又『廣韻』冄冄、行貌。『楚辭・九章』時亦冄冄而將至。

『韻會』又姓。

又『前漢・食貨志』元龜岠冄、長尺二寸。《註》冄、龜甲緣也。

部・劃數
冂部・三劃

『唐韻』『集韻』『正韻』𠀤而琰切、音染。『玉篇』毛冉冉也、行也、進也、侵也。亦作

音訓・用義

ゼム(漢) ネム(呉) 〈『廣韻・上聲・琰・冉』而琰切〉[rǎn]{jim5}
すすむ

冄冄とは、しなだれるさま、しなやかで柔らかいさま、また、ゆくさま、段々進むさま、時の移ろふさま。

解字

落合や漢字多功能字庫の擧げる甲骨文と、各資料の擧げる金文以降の字が、同系統のものか否か、不詳。

白川

象形。飾り紐や毛の垂れる形に象る。は衣襟のところに冄を加へてゐる形で、死喪のとき、麻の衰絰を加へる。その衰絰の形と同じ。

『説文解字』に毛の垂れる形とするが、髯にも冄といふやうに、すべて絲狀の垂れるものをいふ。

藤堂

象形。二筋の髯がしなやかに垂れた姿を描いたもの。

落合

字源については、木組み、竹籠、組紐など諸説あるが、會意字の爯や集を見るに、紐を結んだ形と考へるのが妥當。

甲骨文には單獨では欠損片にしか見えず、字義不明。

甲骨文の會意字では、紐で縛ることから轉じて「荷物」を象徵して使はれることが多い。

漢字多功能字庫

金文の構形初義は不明。疑ふらくは毛髮の下に垂れるさまを象るといふ(『説文解字』、《段注》)。後世では「漸漸」の意に用ゐる。

金文、漢帛書では人名に用ゐる。

字の本義は毛髮が柔弱に下に垂れるさま。梅堯臣〈和永叔晉祠〉晉人須識漢史美、冉冉青髯似綠蒲。

引伸して一切の事物が下に垂れるさまを指す。曹植〈美女篇〉柔條紛冉冉,葉落何翩翩。『紅樓夢』第一回定睛看時、只見烈日炎炎、芭蕉冉冉。

「冉冉」はまた漸進、漸漸を表し、時間がだんだん流れ行くことを形容する。『文選・屈原・離騷』老冉冉其將至兮、恐脩名之不立。呂向注冉冉、漸漸也。

屬性

U+5184
JIS X 0212: 18-81
U+5189
JIS: 1-49-39

関聯字

冄に從ふ字を漢字私註部別一覽・冄部に蒐める。