読書メモのページ
 
「知識人とは何か」
エドワード・W・サイード 著
平凡社

1月2日

サイードが言う、知識人の使命とは、常に時代の権力に異議を差し挟み、大衆に語り掛けるということである。迎合する知識人ではない。
サイードは、現代には、「知識人」が溢れていると言う。その大半は、「専門家」「エキスパート」として、公的にアドヴァイスを行う存在である。しかし、その専門化・プロフェッショナリズムが、また、迎合を生んでいるのではないかと言うのである。
アマチュアリズム、自分の内なる情熱に基づいた関心から行われる止むに止まれぬ発言、こそが、知識人のなすべきことであるのだ。
湾岸戦争後に行われたこの講演の記録では、「アメリカ対イスラム」と言う作られた構図を批判し、また、同時に「何ものをも神聖化してはならない」と語る。
現代のこの状況において(アメリカ同時多発テロ後のこの現時点において)、意味のある本の一つであると思う。
「先生のレズビアン宣言 つながるためのカムアウト」
池田久美子 著
かもがわ出版

12月31日

タイトルの通り、高校の生物教師である著者が、同性愛者であることを徐々に周りにカムアウトしていく過程を書いた本。
自分自身のプライベートを隠して他人と付き合うことに、違和感を感じていても、しかし、恐怖感からクローゼットに隠れざるを得ない同性愛者の気持ちがよく分かる。
とは言っても、内容は割とスタンダードに進むので、この本ならでは、の特色と言えば、やはり、著者が生物の教員であることであろうか。それも女子高と言うことで、色々なプレッシャーもあったのではと思ったが、意外に、受け入れられているようで、少し安心した。
非常に分かりやすく、若い人に読んで欲しい本。(大人もだが)
この本で、生物学的にセックス=生殖目的とされることが多いが、それだけではない、という部分が一番面白いと思った。
「マリア様がみてる ロサ・カニーナ」
今野緒雪 著
コバルト文庫

12月31日

やはり、当初ほどの面白さが薄れてきている。コミカル?ということになるのだろうが、そういう場面の描写が多くて回りくどい印象。
でも、最後の方は、それなりにテンポも上がって、面白かった。
ロサ・カニーナが「蟹名」嬢からついた、というところなどはわざとらしいのだが、それはまあ、こうした少女小説には付き物なのでいいとして。
淡い恋心の告白のシーンなどは、もう王道。そういう話を現代を舞台に書けるところが凄いと思う。
「審判」
パトリシア・コーンウェル 著
講談社文庫

12月30日

前回の「警告」の続き。
前回に引き続いて、「狼男」を巡るストーリー。官僚社会で四面楚歌の立場に追い込まれていくケイ・スカーペッタは、どう戦うのか?
更に犯罪場面よりも心理描写、スカーペッタの内面を巡る本になっている。やはり、「異常犯罪」を描く時代は終わったのかなと思わせる。
話自体は、真犯人も元々分かりやすい形で登場しているし、単純と言えば単純。それなりに楽しめるが、もうこのシリーズも一区切り、という感じがした。
今まで、ケイ・スカーペッタ自身のことがあまり描かれてこなかっただけに、急にそちらに移られてもあまり興味が持てないからかもしれない。それより、ルーシーの方が複雑で滅茶苦茶で面白い。このシリーズを買おうと思う原動力の半分はルーシーの存在の描かれ方が良かったからなので、今度はルーシーを主人公にシリーズ希望!
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