説文解字私註 可部

可部

説文解字
𦘫也。从、丂亦聲。凡可之屬皆从可。 段注は从口𠀀。口气舒。𠀀亦聲。とする。
康煕字典
口部
よし。ゆるす。きく。べし。ばかり。
解字(白川)
會意。に從ふ。口は祝禱を收める器の形。外側は木の枝で、後の柯に當たる。柯を以て祝禱の器を毆ち、神に呵してその祝禱の承認を認める意で、神が許可する意となる。
解字(藤堂)
屈曲した鉤型との會意。訶や呵の原字で、喉を屈曲させ聲をかすらせること。屈曲を經てやつと聲を出す意から、轉じて、樣々の屈曲を經てどうにか認める意に用ゐる。
解字(落合)
形聲。に從ひ、荷(何)の略體を聲符とする。
解字(漢字多功能字庫)
甲骨文、金文は、に從ふ。構形初義に定論は未だない。丂は、枝を象るが、一説に曲柄斧の柄を象るともいふ。後に假借して可以(できる。してよい。)の意。
一説に、可は歌の古字といひ、金文では歌を訶につくり、『集韻』に歌、古作可。、『釋名・釋樂器』人聲曰歌。歌、柯也。とある。この外、口と丂に從ひ、号と同義。訶の古文に當たり、大言すなはち怒なりと訓じ、腹を立てて大聲を出す意と解く。按ずるに金文に歌に用ゐる可は見えない。
甲骨文では可否の可に用ゐ、可以を表し、また地名に用ゐる。
金文では可以を表す。また可能を表す。また人名に用ゐ、また苛、何などと通用する。
秦簡では借用して何となす。《睡虎地秦簡・封診式》可(何)謂『州告』其論可(何)也
當用漢字・常用漢字

説文解字
異也。一曰不耦。从大从
康煕字典
大部五劃
『廣韻』『集韻』『韻會』渠羈切『正韻』渠宜切、𠀤音琦。異也。『莊子・北遊篇』萬物一也。臭腐化爲神奇、神奇復化爲臭腐。『仙經』人有三奇、精、氣、神也。
祕也。『史記・𨻰平傳』平凡六出奇計、其奇祕世莫得聞。
姓。
天神名。『淮南子・地形訓』窮奇廣莫、風之所生也。又四凶之一。『史記・五帝紀』少皡氏有不才子、天下謂之窮奇。《註》窮奇、卽共工氏。
獸名。『司馬相如・上林賦』窮奇𧰼犀。《註》狀如牛、蝟毛、音如嘷狗、食人。
江神謂之奇相。『江記』帝女也。卒爲江神。
通。
『廣韻』『集韻』『韻會』𠀤居宜切、音羈。一者、奇也。陽奇而隂偶。『易・繫辭』陽卦奇、亦零數也。『又』歸奇于扐以𧰼閏。
隻也。『禮・投壷』一算爲奇。
餘夫也。『韓非子・十過篇』遺有奇人者、使治城郭。
數奇、不偶也。『史記・李廣傳』大將軍隂受上誡、以爲李廣老數奇、毋令獨當單于。
奇𢷎、一拜也。『周禮・春官』大祝辨九𢷎、七曰奇𢷎。
奇車、奇邪不正之車。『禮・曲禮』國君不乗奇車。
奇衺、詭異也。『周禮・地官』比長有辠、奇衺則相及。
『集韻』『韻會』『正韻』𠀤隱綺切。與倚通。依倚也。『前漢・鄒陽傳』輪囷離奇。
『字彙補』倚蠏切。同矮、短人也。『後漢・五行志』童謠、見一奇人、言欲上天。
叶古禾切、音戈。『宋玉・招魂』娭光眇視、目曾波些。被文服纖、麗而不奇些。
『說文』从大从可。別作[大司]。俗作、非。
くし。めずらしい。あやしい。
解字(白川)
會意。把手のある大きな曲刀の形と、祝詞を收める器の形のに從ふ。字の立意はに近く、可は柯枝を以て祝禱を呵してその成就を求める意。神の承認を求めることを可といひ、奇はその系列の語。大とは關係がなく、剞劂(彫刻刀)の形に從ふ。曲刀で不安定な形であるから奇邪の意となり、それより奇異、奇偉の意となる。
解字(藤堂)
大との會意、可は亦た音符。可の原字は鉤型で、くつきりと屈曲したさま。大は大の字に立つた人。人の身體が屈曲して角張り、平均を缺いて目立つさま。また偏る意を含み、踦の原字。
解字(漢字多功能字庫)
大に從ひ聲。本義は、獨特、特殊。『楚辭・九章・涉江』余幼好此奇服兮,年既老而不衰。王逸注奇、異也。『淮南子・主術』夫聲色五味、遠國珍怪、瓌異奇物、足以變易心志、搖蕩精神、感動血氣者、不可勝計也。」高誘注「「非常為奇。
轉じて豫想外のこと、意表を突くことを表す。『老子・第五十七章』以正治國、以奇用兵、以無事取天下。『孫子・勢』凡戰者、以正合、以奇勝。故善出奇者、無窮如天地、不竭如江河。
評價すること、重く見ることを表す。『史記・袁盎鼂錯列傳』(鼂錯)書數十上、孝文不聽、然奇其材、遷為中大夫。『後漢書・虞傅蓋臧列傳第』(袁)紹見(臧)洪、甚奇之、與結友好、以洪領青州刺史。
驚き不思議がること、ただならぬと感ずることを表す。『史記・淮陰侯列傳』滕公奇其言、壯其貌、釋而不斬。『水經注・濁漳水』嘯父、冀州人、在縣市補履數十年、人奇其不老、求其術而不能得也。
奇數を表し、耦、偶に相對す。
運が良くないこと、巡り合はせが惡いことを比喩する。『史記・李將軍列傳』大將軍青亦陰受上誡、以為李廣老、數奇、毋令當單于、恐不得所欲。」唐代・劉禹錫『贈尹果毅』「「問我何自苦、可憐真數奇。
餘り、端數を表す。『正字通・大部』に數之零餘曰奇。とある。『管子・禁藏』果蓏素食當十石、糠粃六畜當十石、則人有五十石、布帛麻絲、旁入奇利、未在其中也。尹知章注奇、餘、言不在五十石之中也。『漢書・食貨志』而罷大小錢、改作貨布、長二寸五分、廣一寸、首長八分有餘。顏師古注奇音居宜反、謂有餘也。
常規を外れること、不正規なることを表す。『史記・平準書』浮食奇民欲擅管山海之貨、以致富羡、役利細民。其沮事之議、不可勝聽。司馬貞索隱諸侯也、非農工之儔、故言奇也。『漢書・刑法志』今大辟之刑千有餘條、律令煩多、百有餘萬言、奇請它比、日以益滋。顏師古注奇請、謂常文之外、主者別有所請以定罪也。
程度の副詞として、相當甚だ、非常の意。唐代・段成式『酉陽雜俎・語資』劼問少遐曰、今歲奇寒、江淮之間不乃冰凍。清代・西周生『醒世姻緣・第90回』夏麥不收、秋禾絕望、富者十室九空、貧者挨門忍飢、典當衣裳、出賣兒女。看得成了個奇荒極歉的年歲。
助詞として、元、明の雜劇中に見え、實義はない。元代・王實甫『西廂記』第一本第二摺我得時節手掌兒裏奇擎、心坎兒裏溫存、眼皮兒上供養。王季思校注奇擎、奇字僅以助音、不助其義。明代・湯顯祖『紫釵記・曉窗圓夢』別後無書知不美、沒來由折了身奇、陪了家計、博得那一聲將息。
當用漢字・常用漢字

説文解字
可也。从加聲。『詩〔小雅・正月〕』曰、哿矣富人。
康煕字典
口部七劃
『唐韻』古我切『集韻』『韻會』賈我切『正韻』嘉我切、𠀤音舸。『說文』可也。从可加聲。『詩・小雅』哿矣富人、哀此惸獨。『又』哿矣能言。
『玉篇』嘉也。
『韻補』叶居何切、音哥。『揚子・太玄經』瞢首時䰈䰈、不獲其嘉、男子折笄、婦人易哿。《註》珈假借作哿、婦人首飾也。嘉亦居何切。
よい
解字(白川)
聲符は加。『詩・小雅・正月』かな、富める人の下句に哀し、此の惸獨(身よりのない人)とあり、哿と哀と對文。と聲義の通ずる字である。
解字(藤堂)
會意、(まあよい)は亦た音符。

説文解字
聲也。从二。古文以爲謌字。
康煕字典
口部七劃
『唐韻』古俄切『集韻』『韻會』『正韻』居何切、𠀤音牁。『說文』聲也。从二可、古文以爲謌字。『廣韻』古歌字。『前漢・藝文志』哥永言。『唐書・劉禹錫傳』屈原作九哥。
『廣韻』今呼爲兄。『韻會』潁川語、小曰哥、今人以配姐字、爲兄弟之稱。
哥舒、複姓。
うた。うたふ。こゑ。あに。
解字(白川)
を上下に重ねた形の會意字。可は祝禱を收めた器を柯枝で毆ち、その成就を求めて呵責を加へる意。そのとき發する聲を呵といひ、その聲調を哥、謌といふ。謌は歌の初文。
解字(藤堂)
を二つ重ねた會意字、可は亦た音符。可は鉤型に曲がる意を含む。喉をしめ、息を屈曲させて聲を出すこと。歌の原字。

新附

説文解字
不可也。从反
康煕字典
口部二劃
『廣韻』『集韻』『韻會』『正韻』𠀤普火切、音頗。『說文』不可也。从反可。『後漢・呂布傳』大耳兒最叵信。
『正字通』叵耐、不可耐也。
遂也。『後漢・隗囂傳』帝知其終不爲用、叵欲討之。《註》叵、猶遂也。又『班超傳』超欲因此叵平諸國。
叵羅、酒巵。『北史・祖珽傳』神武宴僚屬、于坐失金叵羅、竇太令飮酒者皆脫帽、于珽髻上得之。
かたい。ない。つひに。
解字(藤堂)
指示。字を左右逆に書いて不可の意を表したもの。不可が約まつて一音節となつた言葉。