ある夜彼女が蒼い硝子壜(ふらすこ)を抱えてやって来る、その重たく実った不透明の抱えきれないほどの丸みを抱えながら、彼女は追われているので匿ってくれと云うのだ、それなのに後を振り向くこともしない。ドラマーの娘は黙って受け入れ二人は話し合わないし、彼女はそのまま住みついていて、いつになるのか分からないその時を待っているようにさえ見えないので、いつやってくるのか、何がやってくるのか、振り向いているのは、匿うものの役割となるのだ。
彼女は黒のヴェロアのミニのワンピース、黒いピンヒールのブーツ、高々と結い上げまとめた髪、小枝のような手足、蒼いふらすこだけが季節を告げている。
何かが必要だと言うが、彼女は彼女を一人で外に出したくはないので、二人は手を繋いでデパートへ向かい、騒がしさの最中を彼女は小さなバッグに蒼い硝子壜を隠しながら群集の中を二人は歩き、誰とも眼差しは行き交うことはなく、平行であるのに、誰かが追ってくるのではないかとドラマーの娘は気がかりを抱え、彼女はふらすこを捧げ、だがそれが誰かも知らない。
二人はゆっくりと買物を続ける。
ドラマーの娘がドラムを叩くと、ふらすこは響きに揺れるが落ちはしない、まだ、まだだ、その時ではない。ドラマーの娘が振り上げるそれが空中で導きの合図を取ろうとして振り下ろせないでいる。

 
 
 
 
正門
目録