招じ入れると、小柄な人影が、蝋燭の明かりの中に浮かんだ。薪は暖炉で静かに燻っている。
薄暗い部屋で無言で二つの人影は向かい合った。迎え入れた女を見ると、来訪者は微かにほうという音を立てた。
乞われもせぬままに、手を上げると、外套のフードを払い、口元を覆う毛織布を解いた。
幾らか浅黒いオリーヴのような滑らかな肌と燃えるような黒い瞳は明らかに異国のものだった。手にした丸みを帯びたシタールのような楽器と、外套の蒼と黒の文様が、それを吟遊詩人と物語っていた。だが、繊細な口元が露になった時、今度は、歓待者が僅かな息を吐いた。黒い巻き毛は短く刈り上げられていたが、確かにそれは女であった。 |
「お持て成しに感謝する」吟遊詩人の女は何とも深い声で、仕来たりどおり三度挨拶を行う。
「我が家へ光をもたらされたことに感謝する」同じく三度挨拶を返す。
生憎と、夜は既に更けており、大きな歓待することは出来なかった。そこで、乾燥肉に、刺すような芳香の香草をふんだんに加えた、熱いステュウを作った。果物に蜜と花精水を加えた菓子を器に盛った。
竈の裏に貼り付けてあったパンを添えて、客に差し出す。来訪者は食事中一言も言わなかったが、かなり飢え、また冷えていたらしく、このステュウとパンを喜んで食べているのが見て取れた。そして、甘い果物の鉢に指を入れた。
「ありがたい」ようやく腹を満たして一言言った。
「お前はどこから来て、どこへ行くのだ」
詩人は微笑して応える。
「私の国は遠い。前にはジャバル・ダルハムにいた。お前のところへ来るために来た」 |
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