王女の夢は夜の夢。生れ落ちてからこの方塔の中、ずっと閉じ込められていた。庭は緑に輝き、部屋は美しい文様で埋め尽くされ、何一つ得られないものはない。
けれども王女は夢に見る。異国へ私を連れて行って。
塔の窓の格子から、儚い人影を目にする。そうよ、ここよ、私はここにいるわ。あなたは迎えに来てくれたのね。
降りようとして、王女は不意に動けなくなる。こんなに高い塔の上。足がすくんで動けない。
王女は辺りを見回して、躊躇い、とまどい、凍りつく。懐かしい部屋と庭。ここから離れて行けるのかしら。
窓の下から優しい声、王女を呼ぶ声がしているのに。王女は躊躇う。あの人の囁きが聞こえるのに…

いいえ? いいえ、いいえ、違う。あれは塔の中から聞こえる囀り。

追憶が夜の闇の中忍ぶ。