川 - 漢字私註

説文解字

: 貫穿通流水也。『虞書』曰、濬𡿨巜、距川。言深𡿨巜之水會爲川也。凡川之屬皆从川。; 十一・川部

康煕字典

部・劃數: 巛部(零劃)

『唐韻』『集韻』『韻會』『正韻』𠀤昌緣切、音穿。『釋名』穿也。穿地而流也。『周禮・冬官考工記』凡天下之地埶、兩山之閒、必有川焉。『爾雅・釋水』湀闢流川。《註》通流。《疏》湀闢者、通流大川之別名也。『又』過辨回川。《註》旋流。《疏》言川中之水有回旋而流者。『蔡邕・月令章句』衆流注海曰川。『書・益稷』予決九川、距四海。《傳》決九州名川、通之至海。又『禹貢』奠高山大川。《傳》大川四瀆。《疏》川之大者、莫大於瀆。四瀆、謂江、河、淮、漢也。『呂氏春秋』何謂六川、河水、赤水、遼水、黑水、江水、淮水。『潘岳・關中記』涇、渭、灞、滻、鄷、鎬、潦、潏、凡八川。『司馬相如・上林賦』蕩蕩乎八川。

又三川、郡名。『史記・秦始皇紀』滅二周、置三川郡。『前漢・高祖紀』斬三川守李由。《註》應劭曰、今河南郡也。韋昭曰、有河洛伊、故曰三川也。

又四川、省名。『韻會』今成都府、潼州、利州、夔州四路、取氓江、沱江、黑水、白水四大川以立名也。

又口川。『周語』防民之口、甚於防川。『朱子詩』口川失自防。

又川衡、官名。『周禮・地官』川衡掌巡川澤之禁令。

又竅也。『山海經』倫山有獸如麋、其川在尾上。《註》川、竅也。

又叶樞倫切、音春。『詩・大雅』旱旣大甚、滌滌山川。早魃爲虐、如惔如焚。『前漢・敘傳』昔在上聖、昭事百神。類帝禋宗、望秩山川。

部・劃數: 部首

『唐韻』川本字。『說文』巛、貫穿通流水也。虞書曰、濬𡿨巜距巛。言深𡿨巜之水會爲巛也○按『書・舜典』今文𡿨巜作畎澮、巛作川。文異義同。

又『字彙補』古文鬊字。註詳髟部九畫。

音訓

音: セン(漢)(呉) 〈『廣韻・下平聲・仙・穿』昌縁切〉[chuān]{cyun1}
訓: かは

解字

白川

象形。水の流れる形に象る。

『説文解字』に穿の音を以て説く。『詩・大雅・雲漢』に、焚、熏、聞、遯と韻してをり、それが古音であらう。

假名の「つ」「ツ」の字源と考へられてゐる字。

藤堂

象形。異體字巛は古い字體。𡿨印は地の間を縫つて流れる川の象形。川は三筋の𡿨印で川の流れを描いたもの。

落合

水と同源。水の或體(巛の形)から金文で分化した。

漢字多功能字庫

河川の形に象る。甲骨文はもと水流のさまに作り、後に中間の水を象る部分を簡化して一條の線と成す。

甲骨文での用義は次のとほり。(補註: 水字條の落合説も倂せて參照。)

川と水の用法は非常に相似してをり、卜辭の「不水」「其水」は、「不川」「其川」とも説かれる。この場合はいづれも水災と解き、「不川」は「大水が起こらない」の意。
河神を表す。《合集》28180即川燎、又(有)雨は、燎の祭法を河神の祭祀に向けて用ゐ雨を祈ることをいふ。古文獻にも同樣の用法が殘つてゐる。『論語・雍也』犁牛之子騂且角、雖欲勿用、山川其舍諸。朱熹注山川、山川之神也。
地名に用ゐる。《合集》21661丁歸才(在)川人は、川の地に在つた人が歸つてくることをいふ。また甲骨文には「川浥」の地名が見える。

金文での用義は次のとほり。

水流を表す。傳世古籍でも屢々見える用法。『論語・子罕』子在川上曰、逝者如斯夫、不舍晝夜。
用ゐて甽となし、讀んで畎となし、借りて低く平らで水を得て肥沃な地を指す。宜侯夨簋易(賜)土、厥川二百□。『集韻・迥韻』云畎、田畝也。
- 後に田地の義に借用することがあり、そこから轉じて田地の單位詞となつた。五杞衛鼎縈二川は、二川の土地を巡るの意(黃盛璋)。

戰國簡帛での用義は次のとほり。

順の通假字となす。《成之聞之》君子治人侖(倫)以川天德。
坤の通假字となす。馬王堆帛書《六十四卦》に「川」卦があり、傳世『易』では「坤」につくる。王引之『經異述聞』に乾坤字正當作坤、其作巛者、乃是借用川字。と云ふ。(補註: 『康煕字典』𡿦字條參照。)
穿の通假字となす。長沙子彈庫《楚帛書》丙篇不可以川□、大不訓(順)の川を穿と讀み、壁を穿ち、地を穿つことを指す(李學勤)。

屬性

川: U+5DDD; JIS: 1-32-78; 當用漢字・常用漢字
巛: U+5DDB; JIS: 1-54-63