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黄昏えれじー  
まぁるい祈り  
近藤さん  
せかいはまるい  
Kick-off  
水滴  































黄昏えれじー

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九鬼ゑ女
 

戯けすぎた道化師は       /ふざけ
転がり続ける何処までも
地球というちっぽけな玉の上

えっ、なんだって?
「おまえには似合わないよ、その口紅は」
そういうあんたはどうなのさ
強請ったまんまさらり身を躱して   /こわばった /かわして 
「セックスよりも…愛」だって?
ふん!嗤せないでよ         /わらわせ

おふざけはもうオシマイ
いくら堕ちてもあたしはあたし
イジケタ吐息を
ひとつふたつと数えるその唇を
葬るためにあたしが塗りたくるのは
…それは、あんたの影

いつだって影は
転がり堕ちるあたしを引きずる
濡れた睫毛にあっけらかんと
不仕合せという色を巻き込みやがる

甚振るように黄昏もあたしを蓋う   /いたぶる
赤っ恥を濃くした長ぁい影で
「ほらっ!ざまあみろ」
嘲笑りながらあたしを…       /あざけり
玉ごと蓋い隠す



















まぁるい祈り

イオ
 



まぁるいほほえみを浮かべながら

まぁるくなってきたお腹にやさしく耳をあてた


     まだ胎動はわからないよ
   
     もうすぐだと思うけど


耳をはなすと今度はやさしくやさしくまるみを撫でて

     
     早く会いたいけど

     今はしっかり大きくなるんだよ     と。


ふたりでほほえみながら

一日一日いとおしく

まぁるい祈りを捧げている



















近藤さん

ふをひなせ
 

近藤さんの手はまるい
おだんごに握るとぽちょぽちょして
ちょっとかぷりつきたくなる

近藤さんは
お顔もまるい
体もまるい
声もころころしている

近藤さんは大人だけど
とても可愛い
時々おしゃまなことを言って
笑わせてくれる

近藤さんがいると
なんだか気持ちが
まるくなる



















せかいはまるい

宮前のん
 

さよならさんかく
またきてしかく

しかくはとうふ
とうふはくさる
くさるはしたい
したいはうめる
うめるはおかね
おかねはうばう
うばうはこころ
こころはくらい
くらいはよぞら
よぞらはつきよ
つきよはひかる
ひかるはでんき
でんきはきえる
きえるはいのち
いのちはもろい
もろいはあかご
あかごはまるい
まるいはだいち
まるいはせかい

まるいは



 



















Kick-off

佐々宝砂
 

鏡像のフィールドに投げ込まれるボールは
一つではないマルチボール形式だからボールボーイたちに
厳しく言っておかねばならない明日から
ブラジルへの旅がはじまるのだから船便に
預けたまま忘れた荷物をすべてボールボーイたちに
返却してもらおう可愛いボールボーイたちは
いつだって記憶力に欠けているし注意力も
あまりないらしいでも
夜があけるとき呼び出さなくちゃならないのは
監督でも選手でも審判でもサポーターでもないボールボーイたち
さあ試合がはじまるもしかしたら再開するのかも
どっちかしれないがそんなことはどっちでもいい
さあフィールドにボールを投げ込めたくさんの
愛以外のなんやかやをこめて投げ込め今すぐに
ブラジルに向けて船が出発するのだから
監督でも選手でも審判でもサポーターでもないボールボーイたち
キックオフに必要なのは君たち



















水滴

伊藤透雪
 

ひと目で気に入って買ったドレスは
全体にベージュのドット柄
体にそうタイトなワインレッドのワンピース
出ている肩や腕の白さが際立って見える
胸は大きく開いてフリルに縁取られている

どうかしら?と見せても夫は
地味じゃないか とぼそりと言うだけで
よく見もしない
わたしはそうは思わないわ
女を強く強調している服だもの 充分よ

−−あなたのために買ったわけじゃない−−

平日の昼間に会いに来る男なんて
大抵ろくでもない
退屈を破り捨てるには丁度いいだけ
そんな男たちの望んでいるもの、
欲しいと手を伸ばしたくなるもの、知ってるわ
わたしは引き替えに苦痛から逃れられるの
いきなり手を握られても平気

髪を軽くアップにしていくの
ファスナーはもちろん背中よ
それから 雫の形のピアスをして
耳の後ろに軽いムスクを隠し味に
胸には赤い薔薇のネックレス

でもこうして何度飾って行ったかしら
手鏡の中でわたしが見ているのは
今のわたしじゃない気がする
ぽとり、と鏡に落ちた水滴が丸い歪みを作った
虹色のそのしるしは何を映しているんだろう

夫の瞳に映っているのはわたしじゃない
と確信してからの
背中に張り付いた退屈

−−あなたのせいだと言えたらいいのに−−

妬いて欲しいわけでもない
ただ 女として立っていたいと思ってる
まだ 女として生きていると信じたいの

−−わたし、泣いてるの・・・?


















2010.10.15 発行/蘭の会

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(CGI 遠野青嵐  編集 佐々宝砂)