うず http://www.enpitu.ne.jp/usr10/106608/ ナツノ 　 停滞を 引き裂くよう オナガの声が　冬空にひびく それで良かったのか？ と。 後悔は　いつもそこにある 後悔が　頭の内側に張り付いて ぐるぐる まぶたの裏を　めぐってる 戻れないのに リターンスイッチ　探してる 巻き戻し機能　探してる ジャーっと　うずを巻き 排水溝に流れ 消えてゆける　夢を見ている 後悔を流し去る 洗剤は　ない うずに　誘われるように 洗濯機をのぞきこむと ぐるぐるまわる 洗濯たちは とても楽しそうで 汚れた水流の中に どこまでも続く 冬の灰色を　見ている 思い描く　永遠の安心は 蒸したての あんまんみたいに ほわほわ白くて いいニオイがしてる 不安は消えない 安心をいくつ手にしても 安心と不安は いつもココロに同居してる

底の砂 宮前のん 　 洗濯機の底にたまる砂は 息子たちの元気の証拠だ 両くつしたの襞の間に 折り返したズボンの裾の中に こっそり忍んでやってくる 昔はせいぜい近い所で 小さな砂場や学校だった それが今ではどこの砂で 誰と何をしてることやら いつか彼らは所帯を持って そこで洗濯するだろう 波にさらわれる浜辺のように 砂はいつしか消えてゆく 今日も愛しい底の砂は 両くつしたの襞の間に 折り返したズボンの裾の中に こっそり忍んでやってくる

煤けた日々のむこうに 赤月るい 　 洗い流せない思い出と いくつかのさよならの中で 真綿は、赤く引きちぎられようと 時はまっすぐに 残酷に進むだけで 枯れ葉散る、丘で 彼の前髪をあげて、太く濃い眉毛 長いまつげ見つめ 私は白い頬 程よくつやめかせて 湿り気帯びただけで 赤い、小さな唇から あいしてるよと つぶやき、彼にきこえるよう そっとそばで耳元ささやくように 星をちりばめて あなた、あなたに 目の前の ぼく、に わからせてあげなければ その瞳の 澄んで、とがって、丸く大きく すねて、信じて 研ぎ澄まされそうな 縮こまるのを恐れているような 開いた まなざしで 白く、乾かした洗濯物に うずもれて 彼は キイキイ、と鳴く 時々忌々しい子どものよう なんだか さわいで 流れるようにあふれてしまう この、想いは 性交となり　明日となり 変化となり、成長となり、あなたを私を 破壊し、新しいものへと導く 信じている道が 険しくとも 愛という名から派生するすべてを 包み込んで抱きしめて 切り裂いた罠を お互い あなた、のを埋めよう 愛そうとしている とても静かな公園の荒くたい砂場のよう おんぶ 抱っこ 叫び、求め 穏やかに蹴飛ばしあい 囲いあい愛し合う か弱い子羊 いつのまにか分かり合ってる、距離 いとしさの温度 日々の意図 見抜かれて 物質に成り下がった文字と声と 憧憬と画像と、ものさし 襲い来ない春に 芽吹く 新しいしあわせは 生活は 何もない、いつもの時の中に 溶け込んでゆく

2010.2.15　発行/蘭の会

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（CGI 遠野青嵐　　編集 佐々宝砂）